門の中には広い庭があって、その向こうに屋根に十字架のついた高い建物が見えていました。
こんにゃくさんは門の中に入ってみたかったのですけど、見つかると叱られそうな気がして、門の前をうろうろしていました。そのうちにふと思いついて、教会全体を囲んでいる生け垣に沿ってぐるっと一周してみることにしました、生け垣の切れ目からは、中の様子がちょっぴり見えるのです。
ところが、こんにゃくさんとチビがちょうど教会の裏手のあたりにきた時、横の道から大きな犬が出てきて、ものすごい声でほえかかりました。チビなんかよりずっと大きくておっかない顔をしている犬です。
こんにゃくさんはびっくり仰天して、チビのリードを引っぱると後ろも見ずに逃げて走りました。
「ああ、こわかった。びっくりしたあ」
初めに来た門のところまで戻って、こんにゃくさんがやっと立ち止まると、チビもそこに座りこみました。
あんまり走ったので暑くてたまりません。チビも息をきらしています。
その時でした。
こんにゃくさんがなにげなく目を上げると、門のすぐそばに小さな看板があって、なにか書いてあるのに気がつきました。
近づいてよく見ると、ミサや日曜学校の始まる時間と一緒に、聖書からの言葉らしいものが書いてあるのでした。
『神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された、
独り子を信じる者が一人も滅びないで永遠の命を得るためである
ーヨハネ福音書三章十六節ー』
こんにゃくさんはドキッとしました。どこかで見たような、聞いたような気がしたからです。
そのうちにこんにゃくさんは、あっ、と思いました。
(お風呂ダヌキさんの宿題・・・宿題のヒントだって言ってた・・・)
タヌキは、宿題のヒントは永遠の命とかなんとか言っていました。だけど、それと教会や聖書と、どのような関係があるのでしょう。
「なんだかちっともわかんない。なんのことなのかなあ」
こんにゃくさんがぶつぶつ言っていると、チビは何もわからないのに尾っぽを振ってお手をしました。
「わかった、わかったよもう。おなかすいたんだね。チビ、わかったから帰ろうね」
帰りの道は来た時よりずっと遠いような気がしました。だって、のどはからから、おなかもぺこぺこでしたから。
こんにゃくさんが、次にその教会に行ったのはそれからずいぶんたって、もう秋も終わり近くなった頃でした。
けれども、チビは一緒ではありません。チビは死んでしまったのです。
つづく
こんにゃくさんは門の中に入ってみたかったのですけど、見つかると叱られそうな気がして、門の前をうろうろしていました。そのうちにふと思いついて、教会全体を囲んでいる生け垣に沿ってぐるっと一周してみることにしました、生け垣の切れ目からは、中の様子がちょっぴり見えるのです。
ところが、こんにゃくさんとチビがちょうど教会の裏手のあたりにきた時、横の道から大きな犬が出てきて、ものすごい声でほえかかりました。チビなんかよりずっと大きくておっかない顔をしている犬です。
こんにゃくさんはびっくり仰天して、チビのリードを引っぱると後ろも見ずに逃げて走りました。
「ああ、こわかった。びっくりしたあ」
初めに来た門のところまで戻って、こんにゃくさんがやっと立ち止まると、チビもそこに座りこみました。
あんまり走ったので暑くてたまりません。チビも息をきらしています。
その時でした。
こんにゃくさんがなにげなく目を上げると、門のすぐそばに小さな看板があって、なにか書いてあるのに気がつきました。
近づいてよく見ると、ミサや日曜学校の始まる時間と一緒に、聖書からの言葉らしいものが書いてあるのでした。
『神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された、
独り子を信じる者が一人も滅びないで永遠の命を得るためである
ーヨハネ福音書三章十六節ー』
こんにゃくさんはドキッとしました。どこかで見たような、聞いたような気がしたからです。
そのうちにこんにゃくさんは、あっ、と思いました。
(お風呂ダヌキさんの宿題・・・宿題のヒントだって言ってた・・・)
タヌキは、宿題のヒントは永遠の命とかなんとか言っていました。だけど、それと教会や聖書と、どのような関係があるのでしょう。
「なんだかちっともわかんない。なんのことなのかなあ」
こんにゃくさんがぶつぶつ言っていると、チビは何もわからないのに尾っぽを振ってお手をしました。
「わかった、わかったよもう。おなかすいたんだね。チビ、わかったから帰ろうね」
帰りの道は来た時よりずっと遠いような気がしました。だって、のどはからから、おなかもぺこぺこでしたから。
こんにゃくさんが、次にその教会に行ったのはそれからずいぶんたって、もう秋も終わり近くなった頃でした。
けれども、チビは一緒ではありません。チビは死んでしまったのです。
つづく