村上龍の「半島を出よ(上下巻)」を読みました。
実は村上龍の作品は、「限りなく透明に近いブルー」以来読んだことがなく、というのも、高校生の頃に読んだその小説が私はどうも苦手で、全くその世界観がつかめず、読んでも読んでも頭に入らない上、心にも響かず、ただ文字の羅列を追うがごとくで正直内容も覚えていない。
それ以来村上龍の作品を読むことはなく、強い苦手意識を持っていたのだけれど、旦那が所有していたことと、北朝鮮がらみの内容で、舞台が福岡だと聞いて読んでみることにした。
しかし上巻は読むのがやや辛かった。
やはり独特の村上龍節に苦戦した。
いわゆる世間の常識からはみだした人々の醸し出す独特の雰囲気になじめず、登場人物が多いのに、その誰の気持ちにも立って読むことができなかった。
北朝鮮の軍人の気持ちは理解できても、感情移入はできないし、夫の転勤で九州にやってきた私は、九州弁まるだしの福岡生まれ福岡育ちの人の立場にもなれないし、その福岡を外から見てるほかの日本人の立場にもなれないから…。
北朝鮮が福岡を占拠するという展開をいかにもあり得る設定にするため、日本をどこまでもアホっぽく、そして北朝鮮を意外にデキル奴らとして描いている。
正直この辺の日本のくだりを読んでいると、納得させられる部分と、「そこまでアホじゃないだろう」と作者をどつきたくなる気持ちが混ざって、自分の中にある愛国心を感じたりもする。
そして意外とデキル北朝鮮に関しては、うーん確かにそうかもとうなずいてしまう。
近年の日本の報道では、北朝鮮の飢餓の問題や金正日の健康問題など、北朝鮮の金正日体制にかげりがあるかのごとく報道されることが多いので、国力が弱っているかのごとく扱われているが、実際のところどうであろうか?
なんだかんだと核問題をうまく利用し、中国をバックにすえてうまいこと立ち回っているのではないだろうか。
日本では全然取り上げられていない北朝鮮の特殊部隊の存在(たぶんいると思う)。
思い浮かぶのは映画「シュリ」の特殊部隊たちの訓練と戦いに望む姿。
ここのところ北朝鮮といえば「飢え」などのイメージが強いが、そうした一般国民だけでなく、こういう部隊の存在がある国だということも私達は果たして分かっているだろうか。
テポドンだけではないんである。
あれだけ見れば、正確性も乏しいし、あまり怖いとは思えないんだけど、もし肉弾戦のようなことになれば、厳しい環境でも生き抜いてきた北朝鮮とぬるま湯に浸かっている我々日本とでは、どちらが負けるのか?
答えは明らかに日本だ。
というよりも、日本は戦うことすらも放棄するであろう。
それは憲法のせいもあるけれど、日本が積極的に自国を守ることについての意識が低いからだ。
米国を金で買った用心棒とでも思っている感のところが我々はあるような気がしてならない。
上巻はテンポもややスローで分かりにくい所もあり、この作品読了に不安を抱く。
それでも読み進められたのは、ところどころに出てくる村上龍の鋭い目線だ。
それが今まで私がときどき抱いていた日本という国に対する危機感と全く同じで、
そういうくだりが出てくる度にドキリとした。