今年の1月「情熱大陸」で彼の作品と淡々とした日常生活が紹介された。
途中から何気なく付けた番組だったがぐいっと引きこまれた。
観終わった後、(こんなに清らかな人がいたんだ・・・)とため息がでた。
~20歳ごろから絵を描き始める。
誰にも習わず、どこにも作品を発表したことがなかった。
人と交わることが苦手で話をしなくてもすむアルバイトで何とか生活をする。
孤独の中で描きためていった作品の数々。
運命に導かれるようにひとりの画商と出会い49歳で初個展~
今年66歳になるという。
作品もさることながらその暮らしぶりのつつましさと
石井さんのまわりの穏やかな空気感に強くひかれた。
そして画集2冊を買い求めた。
静かでありながら強い祈りを感じさせる表情の「女神」の作品を
いつか直接見たいと思っていた。
10月5日。 銀座の小さなビルの屋上ギャラリーにたどりついた。
なんと、石井さんご本人がいらっしゃった。
奥の小部屋でお客さんがくると、椅子から少し腰を浮かせては、また座り・・・と、
控えめで、この場にいるのがちょっと恥ずかしい、と思っているようなご様子に見えた。
ギャラリーの店主さんに新潟から来たことを告げると石井さんと写真を撮ってくださる。
書籍にサインをしていただく。
「あの・・はい、こう書きます。平凡な名前で・・」とわたしが言うと、
石井さんは優しく微笑んで「平凡が一番です・・」と小さな声で返答してくださった。
ずうずうしくも握手までお願いしてしまった。
画家の手は驚くほど柔らかく温かかった。
帰りの新幹線の中で、(今日は本当にいい日だったなあ)
と自分のガサガサの手を見ながら思った。