2004年の中越地震の時、長野県からレンタカーを借りて十日町に入った。山本に入ると町の中がすっかり変っていた。慣れ親しんだはずの町が被災地の様相を呈していた。
これが帰郷に拍車をかけた。家族のそばで暮したいという気持ちと、故郷で何か仕事をしたいという気持ち。
もう一つの理由。
体調を崩し、それまでの生活を振り返る必要が出てきた。
仕事も含めて、生き方の転換が必要になった。
仕事はやりがいもあり、そこで出会えた人たちとの別れもつらかった。しかし、思い切って、帰郷することを選んだ。
それから少しずつ自分なりに準備を始めた。
しかし、世の中不景気の真っ只中、十日町は本当に仕事が少ない。
お店を持ちたいという気持ちはあるものの、「ほんとにこの町でやっていけるのか・・・?」毎日気持ちが揺れるのだった。
そんな中、友人2人と栃木のカフェめぐりの予定をたてた。
2人とも前職で知り合った友人で、とても気があった。
せつこさんはお店に詳しくて、彼女のお勧めのカフェに行くことにしていた。
しかし、カフェめぐりの2日前、昨年の8月の朝、彼女は南アルプスで落石事故に合い、亡くなってしまった。
「ちょっくら、山に行ってきます。」というメールを残して、旅立ってしまった。
落石の直撃を受け、きっと自分が死んだこともわからずに逝ってしまったに違いない。
エネルギッシュで行動力があって、会うとこちらにも元気を分けてくれる人だった。
わたしがお店を持ちたいと相談すると、親身になって相談にのってくれた。
結局、彼女と3人で行くはずだったカフェに友人と2人で行った。
不思議な感覚にとらわれた旅だった。
2人なのに、3人でいるような気持ちでいた。
悲しいはずなのに友人と2人、笑いながら「せつこさんが、来ているような気がするね、死んだことに気づかないでここに一緒にいると思うよ・・・」
彼女が死んだ実感がないままの旅だった。
「生きているうちにやりたいことをやろう・・・」
せつこさん、ありがとう。
あなたが背中を押してくれました。
Ribbon cafeといいます。よかったらコーヒー飲みに来てください。待ってます。