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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「相対性理論から100年でわかったこと」(著:佐藤 勝彦)

2012-05-28 22:05:27 | 【書物】1点集中型
 相対性理論と量子論の復習から、その先にある素粒子論と宇宙論へ。物理学の発展

 今回気づかされた大きな点は、二大理論と称される相対性理論と量子論は、実はまだ統合されていないこと。「シュレディンガーの猫」の意味を、(私自身が)わかっているようで実は全然わかっていなかったことに気づいたこと(笑)。シュレディンガーは、猫の生きている状態と死んでいる状態が重なっているのである言ったわけではなく、そんな状態が重なるのはおかしいだろうと言うためにこの問題を提起したのだった……(相当な勢いで「何を今さら」な話。すいません)。
 ……なんだけど、量子論の核になると言われているのはやっぱりシュレディンガー方程式だったりする。だから思い込んじゃったんだよね、量子論のイメージを表しているのが「猫」なんだと……なかなか一筋縄ではいかない。(笑)

 そんな状態で第7章まで進んで「やはり素粒子論は難しいと思います」とのお言葉があった日には、「専門家から見ても相当難しいんだな、よかった~何度同じような本を読んでもきっちり理解できてないけどこれでも大丈夫なんだ~」と安心させてもらったぐらいにして(笑)。それにしても、何度この手の本を読んでもクォークの種類をちゃんと覚えられなくて悲しい。←それは、難しい以前の問題である。

 さわりしか知らなかったブレーン宇宙論のバリエーションに驚きつつ、面白いなぁと単純に思ったりしたけど、でも物理学は、科学はそれだけじゃ駄目なんだということにもあらためて気づかされた。生物がここにあるのは、宇宙が生物を持つようにデザインされたから――と、いわゆる人間原理であらゆる物理的現象の証明を完結させられるのなら、究極のところでは最初から科学研究の必要性がなくなってしまう。ぱっと見、(誤解を招く言い方かも知れないが)ちょっと宗教がかった感じもする。
 初期宇宙で「対称性の自発的な破れ」があったことで素粒子が質量をもち、相転移からやがてビッグバンを起こすに至ったという流れを知ると、読んだばかりの「マインド・イーター」の中に生命の生命たる所以を「対称ではない」というところに落とし込んでいた作品(もちろん、実際は直接関係ない可能性も高いけど)があったなぁと思い出したりもした。

 例によって、この1冊を読んだからと言って誰かに説明できるほどきっちり飲み込めては全然いない(笑)。でも巻末で佐藤先生は、「物理学者はみなさんを代表して研究している、みなさんが興味をもつことを、みなさんと連携して研究している」と言ってくださっている。これからもそのお言葉通り、自然科学や物理学の面白さと意義を啓蒙するこのような本を、私のような文系人間にも(笑)どんどん読ませていただきたいと思う。