life goes on slowly

或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「動物農場」(著:ジョージ・オーウェル/訳:高畠 文夫)

2010-10-20 22:45:47 | 【書物】1点集中型

 週末の職場でたまたま読書の話になって、「一九八四年」の話になりました。そしたら「一九八四年」と「動物農場」とを昔から愛読している友人が貸してくれました。友人の説明を聞くまで知らなかったのですが、「一九八四年」につながると言ってもいい物語です。が、「寓話」という形を取っていることもあり、切り離して読んでも全然問題ないです。
 私自身、近代世界史について恥ずかしいくらい不勉強なので、どちらかといえば「一九八四年」をわかりやすくした物語という印象を受けました。解説以降がけっこう長いけど、先に読んでおくと、オーウェルの意図が少しは汲み取りやすくなると思います(という点は「一九八四年」も同様でしたが)。

 主人である人間を農場から追い出してしまい、やがて農場を経営しほかの動物たちを「指導」する立場になった豚。それまであった決めごとが、知らない間に少しずつ変わっていることに漠然と不審を抱きつつも、「人間たちが戻ってくる」という恐怖の前に、「そうだったかもしれない」と記憶を自ら塗り替えていく、労働者階級である豚以外の動物たち。
 それはあくまでも「自発的」な行為に見え、だからこそ危険を孕んでいる。「考えない」ことを(それとは知らず)強制される労働者が、そのことに疑問を持たなくなったとき迎える未来と、指導者という名の独裁者が現実をねじ曲げた先に行き着く「二本脚はもっとよい」。そして、動物たちに豚と人間の見分けがつかなくなるというラストシーン。寓話という形に潜む奇妙なリアリティが、うそ寒さを感じさせます。改めて近代世界の関係図を紐解きたくなる1冊でした。ついでに「一九八四年」も再読したくなりました。

 表題作のほか3つの短編が収録されていますが、身につまされるという感じで「象を撃つ」が印象に残りました。集団心理、支配者が被支配者から感じる圧迫。「世にも奇妙な物語」にありそうな雰囲気ですね。