昨日、午後2時過ぎに家にいる母親から電話がありました。
飼ってる犬(ケンタっていう名前のミニチュアダックスなんですけど)が死んだとのことでした。
朝からもう危ないなとは思っていたんですけど、とうとう逝ってしましました。
15歳でした。
先週の火曜だったでしょうか。
会社から帰って家で風呂に入っていると、急に今まで聞いたことのない鳴き声がしたんです。
最初は母親がちょっと買い物にでも出かけて、それに対して鳴いているのかと思いました。
そういうことは今までによくありましたから。
でもあまりにも妙だったので急いでお風呂からあがると、母親がケンタの横で必死に声を掛けていました。
話によるとどうも発作を起こしたらしく、痙攣に近いものも出ていたそうです。
僕が見た時にはだいぶ治まっていて、5分もしないうちに元に戻りました。
ケンタ自身も何が起きたか分からないみたいな表情でした。
ただそれまでは特に普通に呼吸をしていたんですけど、
発作を起こしてからは息が上がるというか呼吸が荒いというか、ずっと短い呼吸を繰り返すようになりました。
それまでよく食べていた食事もあまりしなくなり、土曜あたりからは何も食べなくなりました。
去年の11月あたりに、急に食事をしなくなった時期があったんです。
息切れはしていませんでしたが。
それは2,3日で元に戻り、それまで以上によく食べるようになりました。
そんなことがあったので、今回も同じかなとは思ったんですけどね、もっと重病だったようです。
前々から心臓肥大があるので、心臓に負担がかかるようなことは出来ませんでした。
心臓肥大というのは、心臓弁膜症という病気に併発して起こるそうです。
良く分からないので調べてみました。
心臓弁膜症というのは心臓の弁の働きが弱り、血液循環が悪くなる病気です。
その為、働きが弱くなった弁の上流の心房・心室が大きくなり、多くの血液を送り出そうをするようです。
その代償機構が正常に働いている間、本人にとっては特に問題なく生活できるそうですが、
その機構が限界に達した時にうっ血性心不全を合併し、肺にうっ血をおこすと、
呼吸困難や息切れなどの症状が現われるそうです。
ケンタに現れた症状はまさにこれです。
発作が起きた時が代償機構の限界点で、それ以降は息切れを起こしています。
昨日の朝、5時前くらいに母親に起こされました。
「ケンタが死んじゃいそうなの」
ちょっと前にまた発作を起こしたようで、駈け付けると横になっているケンタがいました。
父もいました。
僕にはその場にしゃがんで体を撫でてあげることくらいしか出来ませんでした。
その後、すぐ近くで別に暮らしている兄を電話で呼び出しました。
すぐ行く、とのことでした。
しばらくケンタを見ていると、だんだん呼吸が弱くなっていくのが分かりました。
そしてあれほど息切れしていた呼吸が止まりました。
え。
そう思って名前を呼びながら体を撫でました。
するとまた、息切れはしていますが、呼吸が戻りました。
頭を上げ、体を起こして立ち上がり、近くに置いておいた水を飲みました。
腰を下ろして呼吸をしています。
すごい生命力だと思いました。
戻ってくるのが分かったのでしょうか、少しの間をあけて兄が帰ってきました。
とりあえずこれで家族全員の顔を見られたことになります。
それはとてもよかったと今では思います。
ただもう少ししたら仕事に行かなければいけません。
母も月曜は仕事があるのですが、6時過ぎくらいに勤め先に電話を入れてお休みを頂いていました。
僕は今のところそんなに忙しくないので休もうと思えば休めたんですけど、
母が家にいるということで出勤しました。
便りがないのが良い知らせ、といつまでも連絡が来なければいいのにと思って仕事していました。
といってもあまり仕事が手に付いてるわけではありません。
もうケンタのことが気になって仕方ないんです。
でも時間は過ぎていき、午前は特に何もなく過ぎていきました。
しかし午後2時過ぎ、今、一番かけてきて欲しくない母親から電話がかかってきました。
結果は分かっていました。
ダメだったんだろうと。
案の定、死んでしまったということでした。
特に苦しまずに、眠るように亡くなったそうです。
分かった、と言って電話を切りました。
トイレでしばらく泣きました。
いつまでもそうしている訳にはいかないので、気持ちを抑えて残りの仕事をこなしました。
定時前くらいにふと思い付き、家に電話しました。
葬儀、ではないですけど、いつお見送りするかと思ったわけです。
できればその日は会社も休みたいですし。
訊いてみたら水曜になるということなので、上司には休みたい旨を簡単に説明しました。
親族が亡くなった訳でもないのに、快く承諾してくれたのがとても嬉しかったです。
水曜までに仕上げないといけない仕事があったので、
それを火曜中に仕上げられるようにすこし残業してから帰りました。
家に辿り着くと、ケンタはいつも寝ていた自分のベッドに寝かされていました。
首元まで布団代わりのタオルを掛けられ、頭だけ見えていました。
ぱっと見た感じでは本当に寝てるとしか思えません。
とても安らかな顔をしています。
頭を撫でると、いつもは温かかった頭はひんやりとしていました。
死んじゃったんだなぁ、とその時実感しました。
タオルをめくって体や脚も撫でました。
やっぱりひんやりとしていました。
ケンタを見ているうちに、今までの思い出が蘇ってきました。
飼い始めたのは僕が小学校6年になったばかりの時だったと思います。
生後まだ3ヶ月も経っていないケンタがやってきました。
その頃は本当に小さくて、うっかりしたら潰してしまいそうでした。
僕が中学に入る頃には見違えるように大きくなり、そしてやんちゃっ子でした。
家の近くに多摩川が流れているので、そこの河原によく散歩に行きました。
サイクリングコースを一緒に走ったこともありました。
ボール遊びもしました。
悪いことをして怒ったこともありましたけど、次の日には何もなかったように顔を舐めてくれました。
出かけようと玄関に向かう時に靴下を噛んで、行くな、っていう態度をよくしていました。
僕が家にたどり着く直前に、足音を聞きつけて玄関まで出迎えてくれたこともありました。
最近は耳も悪くなり、話し掛けても聞こえていないようでしたが。
僕の部屋からベランダに出られるんですけど、ケンタはそこでトイレをします。
夜中にトイレに行きたくなったケンタは、僕の部屋の扉をガリガリ引っ掻いて僕を起こします。
僕も部屋の扉とベランダの窓を開けてあげるんですけど、寝惚けてるからそのまま眠ったりもしました。
風邪を引きそうになったこともしばしばでした。
そして高校、専門と上がり、今では僕も社会人になって数年です。
僕もケンタも一緒に歳を重ねてきました。
そして15年。
思い返せば僕は人生の半分以上をケンタと一緒に暮らしてきたわけです。
僕の中でケンタの存在は大きくなっていきました。
いろいろと楽しいこともありました。
嫌なこともありました。
怒ったこともあれば、笑ったこともありました。
3,4日前、僕が夜中にトイレに行こうと部屋を出ると、そこにケンタがちょこんと座っていました。
その時から、ケンタには何か思うところがあったのかもしれません。
ずっとこっちを見ているので部屋に誘うとトコトコと歩いてきました。
その晩はベッドにあげて一緒に寝ました。
今となってはその一切合切がいい思い出です。
ただ、最期の1週間、ケンタにとっては辛かったと思います。
とても息苦しかったと思います。
それがやっと開放されて楽になったのかと思うと、これでよかったのかなと思ったりもします。
僕にとって悲しいことには変わりないですけど。
でも悲しんでばかりいたら、また靴下を噛まれそうなのでこのくらいにしようと思います。
ケンタ。
15年間、お疲れ様。
明日でお別れだけど、それまでは家でゆっくり休んでね。
そして、今まで本当にどうもありがとう。