性能とデザイン いい家大研究

こちら 住まいの雑誌・Replan編集長三木奎吾です 
いい家ってなんだろう、を考え続けます

高価格土地持ち庶民・サザエさん家はシアワセか?

2015年07月04日 07時02分51秒 | Weblog
わたしは出版人ですので、毎年開催される「東京国際Bookフェア」には、
必ず見学参加しております。
同時開催される、出版関連イベントも興味があるワケです。
でもまぁ、その他に東京での家づくりの断面も感じたいと
いろいろ3日間、住宅も見学して回るのですが、その一環で、
サザエさん家をいまの時代に考えるというイベントもあったので、のぞき見。

住宅の方の「サザエさんネタ」というのは、よく使われます。
戦後の余韻の残る時代から始められた「サザエさん」は、
ホームドラマの基本形のように日本人に刷り込まれていますね。
そのサザエさん家は、高度成長とバブルを経て、
都内有数の住宅地にある敷地面積推定80坪以上なワケで、
とても「庶民の家」ではありえない。たいへんな「資産家」。
しかし、普段の暮らしではごく普通の日本人。
そこに暮らしている人たちが全員、所得が急上昇しているわけはない。
土地の値段は上がったとしても、それを所得上昇にリンクさせる方法は
一般人にはそうはない。売るしかお金にする方法はない。
売らないまま、そこに住み続けるのが一般的なスタイル。
東京都内に戸建て住宅を持っている、あるいは土地を所有している人は
おおむねこうした人々になる。
建築に携わる人間としては、そういったキャラクターのひとたちと
向き合って戸建て住宅の相談に乗っているのでしょう。
「1坪230万円の敷地をなんとか手に入れたけれど、
そこでお金は尽きてしまって、住宅には予算が1500万円しかない」
っていうような相談が、ごくふつうの相談なんだとか。
・・・ふ~む、であります。
まぁ以前、都内の住宅取材もしていたので、了解できる。
こっちでは20~30坪くらいが標準的な土地の広さなのでしょうが、
それでも土地だけで億単位前後になる。
億の土地に、1500万円の家というのは、なんともツライのですが、
住宅の設計者・施工者にとっては厳しい現実です。
展示されていた模型を訪れるみなさんに説明されていましたが、
この模型自体は、やはりそれ相当のコストを掛けた住宅プランとして、
楽しくプランニングされていました。
それ自体は面白いけれど、聞く側の反応もまた、それなり。
どうもリアリティの所在は感じにくいと思われました。

一方で、行きの飛行機でバッタリ出会った
札幌在住の建築家・照井さんに聞いたら、かれはよく東京圏の建て主の
住宅設計をしていて、きのうもその打合せだったそうです。
「こっちの建て主さんは、夏に過ごしやすい、冷房に頼らなくても涼しい家を
まるで羨望するように希望してくれる」と話してくれました。
たまたま機会があって、1軒2軒と住宅設計していって
その住宅を高断熱高気密仕様で、しかも日射制御を考えて建てたら
口コミで、友人知人にその輪が広がっていくということ。
東京で、高い土地コストの上に建てる住宅ユーザーとしても、
土地と住宅建築の費用バランスを取るのに、納得できるのは、
デザイン的な面白さよりも、むしろ住宅性能である気がします。
この土地で、暑さから自由になる生活が得られれば、
居住満足度は、しっかりと感受できるのではないか。
そんなふうに思いつつ、見学させていただいていました。
コメント
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