私の図書館

主に読んだ本の感想。日常のできごと。

山本一力の深川黄表紙掛取り帖

2009年01月18日 06時30分39秒 | 歴史/時代物
今年初のヒットは"あかね雲"で直木賞をとった山本一力の江戸を舞台にした短編集。おもしろかった。今までこの作者の本は読んだことがなく、今回偶然図書館で手にしたものだってけれど、大変おもしろかった。

江戸を舞台にした歴史ものに多い捕物の話ではなく、深川に住んでいる市井の人々の話。殺人もなければ、同心も岡引もいない。

主人公の4人はそれぞれ定斎売り、絵師、文師、飾り行灯師として暮しているが、その一方で4人集まって、今でいうイベント企画会社のようなこともしている。例えば、雑穀問屋の大店丹後屋の誤って450俵も余分に大豆を仕入れてしまった。困った丹後屋はこの4人に余った大豆をどうやってさばくか考えてほしいと頼む。まーこのあといわくつきの大豆をめぐって2転3転とするのだが、深川に住む人々が好む粋な終わり方になっている。粋といえば、この後の話に出てくる紀伊国屋文左衛門をめぐる一件では、深川の人々の喜ばれるやり方で成り上がり者の紀伊国屋の鼻をあかしたりもする。

この本があまりにおもしろかったので、さらにもう1冊山本一力の"いっぽん桜"というのを借りた。

これも短編集だけれど、前作とちがいまったく関連していない。それでもやっぱりテーマはおなじで、登場人物は漁師だったり、料理屋の娘だったり、退職になった大店の番頭だったり、あさがお職人だったりする。ここでも、紀伊国屋がちらりと登場している。どれも、その人々の暮しがいきいきと書かれていて大変おもしろかった。