WoodSound~日綴記

山のこと、川のこと、森のこと、その他自然に関することをはじめ、森の音が日々の思いを綴ってみたいと思います

サクリファイス

2007-10-25 | Books
自転車ツーキニストを標榜しながら、
自転車競技というのをよく知らない。
もちろんツール・ド・フランスの名前ぐらいは知っているが、
テレビニュースの一コマでダイジェストを見たくらいである。

「サクリファイス」(近藤史恵著、新潮社)を読んだ。
ロードレーサーの自転車チームのミステリー。

レースと言うからにはどんなことをしても、
一位になったものが勝ちと言う認識しかなかったが、
この本を読んでロードレースは、
ものすごいチームプレイの上に成り立っているのだと知った。
つまりいろいろなサクリファイス(犠牲)の上に。

チームにはエースとアシストがいる。
エースを勝たすためにアシストはその犠牲となる。
例えばエースのタイヤがパンクしたとすると、
いくら好位置に付けていたとしても、
アシストは自分の乗っているバイクを降りて、
車輪を差し出さないといけない。

自転車に乗っていると分かるが、
いつも向かい風に向かって走っているような感覚に陥る。
それほど空気抵抗はものすごい。
アシストはトップを走ってエースの力を温存させる。
さすがヨーロッパで培われた競技と思ったのが、
集団で走るときは各チームのアシストたちがトップを、
代わる代わる交代せねばならないという不文律があるということだ。

主人公のチカはチーム・オッズというプロの自転車チームの一員。
チームにはエースがいて、そのエースを勝たすために、
彼はアシストとしてチームプレイに徹する。
しかしあるレースでたまたまアシストとして走っていた彼が優勝をすることになる。
そこから微妙にチームの中にギクシャクが起こって、
取り返しのつかない事故が発生する。

ロードレーサーにはスプリンターとクライマーが存在するそうだ。
前者は平地での加速に強く、後者は登りに強い。
何戦かを転戦して戦う起伏の激しいコースは、クライマーが有利である。
私のようにギアを軽くして登るのではなく、
ダッシュする時はトップギアで登るというのだからその脚力はもの凄い。

こんなレースに参加したいとは思わないが、
一度本物のレースを見てみたくなった。
私の今乗っているのはフルサスペンションでかなり重量のある
マウンテンバイクだが、
重量10キロを切るロードバイクには一度乗ってみたいと思う。
人力で走る最も早い乗り物である。
スピードは軽く30キロは出る。事故が怖い。
この本を読んでから下り坂がかなり恐怖。

本の感想を言えば、
サスペンス仕立ての構成としては若干不満が残ったが、
普段あまり縁のない自転車レースの世界を、
垣間見ることができたのは収穫である。

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