Tonton's Miscellany

基本的に日記です。仕事のこと、家族のこと、本やニュースの感想など、ごちゃごちゃつづります。

現場納め

2007年12月22日 | 【情報保障】
2007年の情報保障現場が、多分終わった。12月に入ってからの3週間は連日結構厳しかった。

娘の小学校入学にともなう自宅軟禁状態の期間があったわりには、今年もありがたいことに随分と参加させていただきました。PC文字情報保障の潜在的可能性をひしひしと感じた1年でした。

活動を始めたころからの記録をつけたエクセルファイルを入れたUSBメモリが「物理的に壊れて」(=PCに挿した状態で横から蹴飛ばしてしまった)数百現場の記録がパー…いや、正確には「論理的に壊れているに違いない」USBメモリの方にそのうち80%近くの現場の記録は入っているはずなんだけど。

来年はいくつか実験的なこともやってみる予定。そのためにはこの冬休みに環境整備をしていかないと。一人一人のニーズに合わせて、じっくり要望を聞いて、提案すべきことは提案できるような知識と技術を身につけていきたいなーと思います。

取りあえずは納めました、ってことで。

言葉を換えられるのはちょっと辛い…

2007年09月04日 | 【情報保障】
ある講演会に出かけた。

講師はろう者で、生い立ちについての話を手話で話した。手話通訳と手書きOHP要約筆記が付いていた。手話読み取りに集中したかったので、あえて要約筆記は見ないようにした。見ると気になっちゃうし…。

質疑応答で、質問をした。

「家庭と職場でのコミュニケーションについて、少し具体的に教えていただけますか」

見るつもりはなかったのだが、大勢の前での質問で、つい緊張して目が泳いでOHP画面を見てしまった。

「家庭での注意は?」

と表出されていた。

…えっ!?

一瞬目を疑った。
いや、「注意」ではなくて…と思ったが、手話通訳の方は「コミュニケーション」となっていたので、幸い質疑に齟齬は生じなかった。

これが「意味を伝える通訳」ということなのだろうか。
「注意」ではなく「会話」なら良かったんだけど。


ザラザラとした気分が残った。

「言葉が言い換えられていると違和感を感じる」という利用者の意見を聞くことがある。多少聞こえている利用者が見ていると、特にそういう感想が多いように思う。

同じ思いを利用者に味わわせないようにしようと心に誓った。

嬉しかったこと

2007年08月31日 | 【情報保障】
あるパソコン要約筆記現場。

時々お会いする利用者さんがいらした。
終了後話しかけてきてくださった。

「今日は、安心して利用できたよ」と。

なんと嬉しい言葉だろうか。

「ありがとう」でも「ご苦労様」でもない。
「安心できた」という、とても重い言葉が心にしみ通った。

おかげで今日はよく眠れそうだ。


スライド攻略の春

2006年03月24日 | 【情報保障】
私が使っているパソコン要約筆記ソフトIPtalkには、「スライド前ロール」という機能がある。つまりは1枚1枚の画面を切り替えながら表示できる機能で、PowerPointと似たようなものだと考えれば分かりやすい。

去年まで、私はほとんどこの機能には縁がなかった。というか、意図的に避けてきたというか。まあ、いろんなもっともらしい理由をくっつけてはいたけれども、つまるところは、面倒なことはしたくないという理由で、避けてきた。

だが、この年初以来、とある事情でスライド攻略に力を入れざるをえない状況になった。そして約3ヶ月めの今日、一連のスライド作戦が一段落した。

お正月休みにIPtalkのホームページに掲載されているマニュアルと首っ引きで、一通りの機能を身につけ、実際にいくつか作りながら試行錯誤を繰り返した。
タイトルバック、呼名、歌詞のカラオケ表示は何とかマスターできたと思う。

この作業にかかる前、「慣れの問題だ」と言われた。それはその通りだと今では思っている。あの複雑怪奇な作成画面に、いかに慣れるかだ。

ともにこの作戦に関わった人たちとも何度もメールを交換し、時にははげましたり、時には一緒に悩んだりした。この道の大家に何度となく教えを乞うた。
集中的に、有無を言わさず取り組んだおかげで、今では作戦参加者のほとんどはスライド前ロールをマスターできた。

このスライド作成には、既に周囲に名人が数名いて、しかもその中には「ビジュアルの達人」と利用者に絶賛される人もいて、そういう人が居合わせた現場では、利用者はかなりステキでリッチな画面構成に出会うことができる。

そして、そういうものを一度見た人は、またそういうのをやってほしい、とリクエストをするようになる。特に子供は。

ただでさえ、無味乾燥で面白くもない機械文字情報。目が疲れるだけの文字情報。少しは目の楽しみがないと読むのも嫌になってしまうだろう、子供ならなおさらそうだろう…ということは、多少は想像できたが、あえて考えないようにしてきた。せめて文字の範囲でできることを探ってきたといってもいい。だから去年はルビと文字の色替えを徹底的にやってみた。

それはそれで概ね好評だったが、それでも残るリクエストが「画像」だった。

画像を入れてほしい---このリクエストに答えるべきか否か。
「文字通訳者」をまっすぐに考えれば、答えは限りなく「NO」に近い。いや、どう転んでも「NO」だろう。だから私はそういうリクエストを、聞いたふりをしながら、実は「そんなの無理だよ」「私たちの仕事じゃないよ」と心の中ではいい続けてきたと思う。

考えを少し変えたのは昨年末。
パソコン要約筆記の黎明期から関わっているという、非常にキャリアが長い方と現場をご一緒させていただいたとき、現場に行ってからスラスラと歌詞のスライドを作り、修正し、画像を入れて映し出しているのを目の当たりにしたからだ。

この方には、私が本当の初心者で、まだ連携もやったことがなかったぐらいのころ、ある練習会でお会いしたことがあった。バリバリに文字にこだわっている人かと思ったら、それだけではなかったので正直びっくりしたのだ。こんな大先輩がやっているのだ。こういう人たちが、連携のない時代から、今のパソコン要約筆記を育ててきたのだ。私はそれに乗っかっているだけなのだ。それを思ったら、私ごとき「後から来た者」がやるべきは、まずできることは何でも試してみることしかないと思い知らされたのである。

「ニーズがある」というのは、それを実施する立派な理由になる。やってみて、ニーズを満たせなければ、その時点でやめればいい。それは時間の無駄ではない。

文字だけでは伝えきれない雰囲気、口調、なんとなくいつもとは違うワクワク、そういうものが、多少でも伝えらるならば、それもまた必要かもしれないと、少しだけ思った。それも「文字通訳」よりも大きな「情報保障」という枠の中にならば位置づけられるかもしれないと。

(このへんの構造は、まだ私の中で明確には整理できていない。われわれの役割が音声情報の保障だとするならば、音が画像や視覚効果にメディア変換するための理論が必要だから。そして、もしもわれわれの対象とする情報を音以外にも広げるとすれば、とてつもないことになってしまう)

それでも幾分迷いつつ、今回、小中学校の卒業式でいくつかのスライドを実施した。もちろん、やるからにはいい画面にしたいと、視覚効果にも多少は工夫を凝らした。

多少は、利用者のリクエストに応えられたのだろうか。
多少は、卒業式独特の「硬さ」と「ワクワク」が伝えられたのだろうか。

その答えは利用者へのアンケートが返ってきてみないと分からない。「余計なものはいらない」という利用者もいるだろう。利用者が特定できる場合には、利用者の個別ニーズは尊重すべきだ。また、スライドができても、リアルタイム情報保障がガタガタでは本末転倒であることは言うまでもない。要は使い方だ。

今年中は、利用者といっしょに、その可能性を探ってみたいと思う。

そうそう、私が理屈をこねくり回して画像を入れるべきかどうか迷っていたとき、ストンと背中を押してきたのは、私の夫だった。彼はまったくの第三者として「多分、そんなのは必要ないと言ってほしいんだろうけど、俺としては、やっぱり、絵が入っていたりすれば、気持ちがなごむと思う」と、スパッといわれてしまった。「なごむ必要があるか」と聞いたら「だって、文字だけじゃ疲れるじゃん。ちゃんと読んでほしいんでしょ。読んでもらえなきゃ意味ないんでしょ」。これには言い返せなかった。

以下、記録。

今回作ったスライド前ロール(完成品)

1.「栄光の架橋」歌詞カラオケ風色替わり、背景に空の画像。
2.「さくら」(森山直太朗)歌詞カラオケ風色替わり。背景に桜の画像。
3.式典タイトル画像多数。
4.「君が代」縦書き・行書体、歌詞カラオケ風色替わり。背景にグラデーションの和風画像。
5.各校校歌。歌詞カラオケ風色替わり。背景に校舎画像を加工して配置。
6.卒業証書。横書きと縦書き。正楷書体。
7.「明日の空へ」歌詞カラオケ風色替わり、画像なし。
8.「大地讃頌」歌詞カラオケ風色替わり、画像なし。
9.「ひとつの朝」歌詞カラオケ風色替わり、画像なし。
10.「さようなら」歌詞カラオケ風色替わり、画像なし。

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ルビ振りが実用的になった!

2006年02月05日 | 【情報保障】
パソコン要約筆記で私が使っているソフトはIPtalk(アイピートーク)という。
開発者の絶え間ない研究のおかげで、頻繁にいろいろな機能が追加されているが、今回は待ち望んでいた機能…ルビをつけ、行の分割を行ったときに、「、」「。」を禁則にできる、というもの。これを待っていた。
今日、さっそくその実験を、某所の練習会でやってみた。

詳しい話は思い切り省くとして、小学生、特に学年がばらばらの小学生への情報保障を行うとき、漢字のレベルは毎回大きな悩みになる。
これまでもIPtalkにはルビ振り機能があったが、いろいろ弊害があったり、操作が煩雑だったりして、使うには、ちょいとした勇気が必要だった。
そこで、漢字のレベルをある学年に統一したり、漢字の後ろに( )でつけたりと、いろいろ試行錯誤をしていたが、当然、漢字の上にルビが付くのが、一番読みやすいことは容易に想像できる。

私たちが出す文字情報を子どもは「読めている」か?…それが常に私は気がかりだ。読むのが嫌になるような読みにくい表示は出したくない。そのためにもルビ振りは是非取り入れたい機能だ。

しかし、これまでのルビ振り機能の弊害として、私が一番気になっていたのは、「、」「。」などの禁則処理がきかなくなってしまうことだった。
昨年、いわば実験的に使ってみたとき、リアルタイム入力中に次のような画面が出てしまった。

 --------文-------
 。
 --------文-------
 。
 --------文-------
 。

画面は6行表示。つまり、1行の文が出ては、次の行の頭に「。」
改行して1行文が出て、次の行の頭に「。」
同様にもう1行。それで画面が埋まった。
たまたま1行の文字数ぴったりの文が3つ続いたわけであるが、同時性を重視するリアルタイムの場面で、いちいち文字数を数えて打ってはいられない。こういう偶然もあるのだ。
さすがに恥ずかしくて、さっさと画面をスクロールしてしまいたいのに、次の話が始まらない。この間の数秒は非常に居心地が悪かった。

禁則処理が効くようになれば、上の表示は

 --------文-------。
 --------文-------。
 --------文-------。

こうなるはず。

今回のバージョンアップでは括弧の禁則処理まではカバーされていないが、「。」が行頭に並ばなくなっただけでも大きな前進だと思う。
ルビのつけ方も比較的簡単になったし、小学生への情報保障にはかなり使いやすくなったと思う。

「子どもには絶対にルビをつけてほしい」

と、ある成人利用者に言われた。
足踏みする要因は、ほとんどなくなった。今年は積極的に使えるだろう。
開発者に感謝したい。

拍手を一緒にできるには?

2005年12月21日 | 【情報保障】
情報保障をしていて、どうしても解決が難しい問題がある。
それは「拍手」と「質問」と「挙手」。
以前、ある練習会でテーマになってから、
現場のたびに気にかけているが、
なかなか満足の行くタイミングで出せない。

タイピングの速さだけの問題ではなさそうだ。

例えば
「それでは皆様、もう一度、盛大な拍手をお願いします。」
と、話者が話したとする。
この一文をしゃべるのに、約3~4秒。
その後、拍手が始まったとして、拍手の持続時間は、
アンコールででもない限り、せいぜい3~5秒。

すっごい雑駁な計算をすれば、
「発話+拍手」の時間を足しても6~10秒。

一方、この言葉を打つとすると、ひらがな約30文字。
300文字/分打てる人がいたとして、
単純計算で発話開始から6秒かかって表出。
200文字/分ならば発話開始から10秒後に表出。
(この辺の算出法については、いつかもっと厳密にしないと
いけないと思っている)

つまり、数字の上ではどんなに速くタイピングしようと、
「それでは皆様、もう一度、盛大な拍手をお願いします」と
入力し終わってから表出しようとする限り、
拍手が終わろうとするころにようやく
「拍手をお願いします」という部分が表出されることになる。

以前の練習会では、私が尊敬する超ベテランの人が
「8割の力で打ち、ペアのどちらかは何が起こっても
すぐに対処できるように」ということを言っておられたのが
印象的だった。

ペアになって打たせていただくとよく分かるのだが、
この人のように同時性を体現できる人は、そうそういない。
「拍手」「質問」「挙手」を、遅くても2秒遅れ程度で
出すことができる、並外れた技術の持ち主だ。

タイピングは、もちろん、めちゃくちゃ速いが、
それだけではない。

同時性が特に要求される場面がきたと思ったら、
まず打つ文字の量を極力減らし、「拍手」という言葉が
一番速く表出される道をとっさに選ぶ。
場合によっては、ペアの入力を止めてでも、
必要な情報の表出を優先させることができる。

この臨機応変さがすごいと思う。


送る文字が多くなるということは、それだけ、
肝心な情報が利用者に認識されるまでの
時間がかかるということなのだ。

そして、打ちながら自分では
「追いついている」と思っていても
それを入力部に溜め込んでいて、
スクリーンに表出していなければ
利用者にとっては「情報ゼロ」と同じことなのだ。
数行にわたってドカッと表示されたときの読みにくさは、
常々利用者から指摘されている。


毎回心がけているのだけれども、
なかなかとっさにできない。

先日も、会場の拍手のピークが過ぎたころに、
スクリーンに表出された「拍手」の文字を見て、
あわてて拍手をしている利用者の姿があった。

打っている方からすれば、よどみない表出であっても、
「拍手」という文字に利用者の目が行き着くには
時間がかかったということだ。

そういう姿を見るのが、一番堪える。


ログ検証の落とし穴

2005年06月27日 | 【情報保障】
練習会の後、さらに考え続けている。考えても解決できるわけではないが、考えなくては始まらない。

私はPC要約筆記現場のログを見て反省するのが好きだ。…というと、何かマゾ的趣味のようだし、所属している派遣先によっては、ログは終了後削除ということになっているから、毎回やっているわけではないが、利用者から何か問題点を指摘されたりすると、必ずログを何度も読む。そして何が悪かったのか、どの文をどうすればよかったのか、その時の記憶を引っ張り出して、コメントを書き込みながら考えることにしている。

しかしログ検証には、大きな落とし穴がある。ログはどうしても「文章」として読んでしまう。さらに、私はその内容を既に聞いており、既に知っている。そういう状態で読むと、耳に残っている話者の言葉と重なり合って、文章として読んだ場合のわかりやすさの方に目がいく。その結果、表記の統一、助詞、内容の整合性の欠点が目につきやすくなる。

これらの欠点を直すことは確かに大事なことだと思う。誤字だらけの文なんて読まされるほうはたまらないだろう。ある利用者が「目玉が転ぶ」と表現していたが、言い得て妙。目を転ばせてはいけない。

しかし、ログからはリアルタイム性は絶対に伝わってこない。「よく要約してあるじゃない」「分かりやすいじゃない」「ほとんど落としてないじゃない」という観点だけでは、利用者が本当に参加できたかどうかが分からない。

ログ検証は、やらないよりはやったほうがいいが、やったからといって、そこで気づいたことを直せば済むというわけでもないということを痛感する。

表記や文末処理など、比較的取っつきやすい方法論にばかり私は目をむけてきたようだ。本当に必要なのは、「今この瞬間」に表出できるかということ。「ご質問はありますか?」という言葉を聞いて即座に入力中の文章をうまーく丸めて「ご質問はありますか?」と出せるか、ということなのだろう。

難しい。いよいよもって難しい。


PC要約筆記練習会

2005年06月25日 | 【情報保障】
某所でPC要約筆記の練習会に参加。

勉強になりました。やっぱり練習会っていうのは大事だと痛感しました。現場で打つことは確かにすごい勉強になりますし、私もそうやって勉強させていただいてきたのですが、それを検証する機会はなかなかありません。

現場によっては、利用者の生の批評が聞ける場もありますが、遠慮なく言ってくださる利用者はそう多くはありません。自分が打てていることに満足していると、同時性とか参加とか、そういう本当に大切な部分をすっ飛ばしている可能性もあることを、時々、嫌というほど思い知らされることもあります。

そういう意味で、今日の練習会では、入力者以外には音声が聞こえない状況下、利用者の立場に立って表出の検証ができ、「本当にこの表出で参加できるのか」ということを自らに問い直す絶好の機会でした。

ただひたすら打つことに心を奪われるあまり、もっとも肝心な「同時性」ということをおろそかにしてはいなかったか、

利用者の評価よりも、聴者の評価を聞いてはいなかったか。聞こえている人の評価は、どうしても文章の完成度に向かいがちで、「参加」という根本的な視点が抜け落ちる可能性があるのではないか。利用者の評価を一つ一つ真剣に聞いてきているか。自分の入力を「これを読みなさい」と利用者に押しつけてはこなかったか。

私たちが利用者の声を表出に反映できなければ、利用者は言うことをあきらめてしまうかもしれません。利用者の声は、時にとても辛辣で、ズドーンと落ち込むことがあります。でもそれを一つ一つ素直に聞き、まっすぐ、真剣に対応できる心を持ち続けたいと思います。

しばらく行っていなかった三田の練習会にもできる限り参加しようと心を改めた一日でした。

新パソコン購入

2005年05月08日 | 【情報保障】
約1年悩み続けて、やっと、やっとPC要約筆記用の新しいパソコンを購入しました。

今まで使っていたのと同じdynabookSS。2004年秋モデル。ちょっと古いのですが、これまでのが、そもそも中古の骨董品だから、すっごい進歩です。やっとXP時代に入れました(笑)

最後まで東芝(慣れてる)とIBM(丈夫そう)とPanasonic(軽そう)で悩み、あっちこっちのサイトを覗いてはため息をつく日々が続き、現場に行けば人のパソコンをのぞき込み…(失礼しました)。最後はお値段で決めてしまう私はやっぱり半人前です。

…でも、これで、ヘタなのをマシンのせいにはできなくなってしまいました。

今週の現場ではまだ使えないかなあ…


現場での「共感覚」

2005年01月31日 | 【情報保障】
私はパソコン要約筆記の活動を、正直言えば「好き」で続けています。特にたいそうな理由なんてなく、ただ、現場が好きだから続けています。別にそれによって人の役に立てたとか、だれかのために、とか、そういう力の入った想いは、この活動を始めた頃こそあったものの、最近ではほとんど感じなくなってきています。

ただ、現場が好きだから続けています。

たぶん、そこに生まれる共有感のようなものがとても心地よいのだと思います。

打ち出される文字を見て、利用者がタイミングよく何らかのアクションを起こせたとき。話者の言いたいことがすーっと見えて、一体感を感じられたとき。ペアの方が打ちたいことが何となく分かって、絶妙な「あ・うん」の呼吸を感じられたとき。そして現場にいる全員が笑顔で「お疲れさま」と言えたとき。そういういろいろな「共感覚」が心地よいのです。

いい情報保障というのは、ただ映し出された情報の質が高いことだけではなくて(これは最低条件)利用者も、主催者も、利用しないけど居合わせた人も、他の支援活動で来ている人も、そして入力者自身も、「気持ちよかった」「その場を共有できた」という感覚を得られるものではないかなと思います。

同じ情報保障をするなら、気持ちよく、明るく、楽しくやりたいと思っています。

それは、その場への配慮とか、その場に居合わせた人たちみんなへの配慮とか、思いやりとか、優しさとか、そういうところから生まれてくるのだと思います。


私は、心地よい「共感覚」を求めて、この活動を続けたいと思っています。

好きな現場

2005年01月31日 | 【情報保障】
情報保障に行くのに、好みを言うのはNGでしょうが、それでもパソコン要約筆記で入力された「文字」を使い倒すくらいに利用していただくと、とても嬉しくなります。

(もちろん、これに「理解していただければ」という前提がなくては話にならないのですが、それは当然の日々の努力ということで…)

そういう楽しみな現場の1つが、盲ろう者の利用者がおられる現場です。


盲ろう者への通訳法は、その人の障害の特性によって、まったくマチマチです。指点字あり、触手話あり、耳元での復唱あり、手のひらに文字を書くのもあり、とにかく、いろいろな声が聞こえ、音が聞こえ、空気が動いているのが聞こえる、とてもにぎやかで、そして、温かい現場です。

そして、弱視を持つ盲ろう者の方の中に、パソコン要約筆記の画面を自分の手元のパソコンに映して、自分の見やすい文字の色や大きさにカスタマイズして読む方がいます。

あるいは、通訳者が難聴者である場合などに、スクリーン表示されたパソコン要約筆記の画面を見ながらそれを触手話、接近手話などを用いて伝えている場合もあります。

以前に見て感動した使い方として、パソコンの入力文字をその場で点字に変換して
手元のパソコンで読んでいる方もいました。


いずれにしても、パソコンの文字というものの広がりが感じられて、私が今、かなりパソコン要約筆記にはまりこんでいるのにも、盲ろう者の方々との出会いが強く働いています。機会がいただけたら、喜んで参加したい現場です。

【情報保障】「こう見せたい!」の親心

2004年10月09日 | 【情報保障】
ある小学校で学芸会の情報保障をしました。
利用者はそこに通う難聴のお子さま、依頼者はそのお母様。
以前にも書いた「親の会」のメンバーです。

今回は、お昼を挟む午前の部分のみ依頼を受け、
午後は、お母様自身が「前ロール」を流しました。
私は「アシスタント」です。

最近、前ロールの奥の深さを感じているのですが、
やはり、表出する「タイミング」というのは微妙に重要です。

司会原稿や「ごあいさつ」原稿など、当日のアドリブの
可能性があるものについては、その部分がある程度読まれて、
前ロールに変更がないという確信が持てるタイミングで出しています。

でも、今回は学校の演劇台本で、ほとんど変更がないであろうと思われたので、
私はあえて少し早めの表出を心がけました。セリフと字幕をほぼ同時にしたいからです。
もちろん、これにも「こうすべき」という決まりがあるわけではない…と思います。
ただ、それだと、もしもセリフに変更があると「字幕が違う」ことになります。

今回前ロール表示を経験されたお母様から、始まる前にこういう質問が出ました。
「前ロールは、言葉が聞こえてから出す、という決まりがあるのですか?」
もちろん、そんな「決まり」はありません。
そして「違ってもいいから、同時に参加できたほうがいい」というご意見をいただきました。

実際に前ロールをやっていただくと、とても初めてとは思えないほどスムーズでした。
徹底した「同時性」の重視。
そのタイミングからは、親として、自分の子にどういう情報保障をしてほしいか、という
気持ちがストレートに伝わってきました。

理屈で「同時性」と10回言われるよりも、「これが同時性なんだ」と感じさせてくださり、
私は非常にいい勉強になりました。
ありがとうございました。


【情報保障】「親の会」にもらった元気。

2004年10月06日 | 【情報保障】
この活動をしていると、すごいパワーをもらえることがあります。
そういう現場に出会ったときは、本当にシアワセです。

私が住んでいる自治体には、難聴児者をもつ親の会があります。
このたび、以前ここでもご紹介した☆Aけみ☆さんのお世話で、
この「親の会」のかたからご依頼の現場に伺うチャンスをいただきました。

この「親の会」がすごい! 本当にすごいんです。

お子さんの通う普通学校(←これは甚だ偏った言い方で、手話では「健聴者の学校」と言います)で、
情報保障を入れるというのは、そう簡単なことではありません。
そもそも学校とは閉鎖的な場所であり、行政は「前例」が全てに優先される世界。

「何それ?」に始まり、
「部外者は入れられない」と言われたり(「開かれた学校」じゃないの?)
「邪魔になる」と言われたり(難聴者には「必須」なんです!)
それはもう「まずは反対に遭う」といっても、たぶん、当たらずとも遠からずでしょう。

しかしここの「親の会」では、ここ数年で、演劇教室や卒業式などの学校行事に
パソコン要約筆記をつける実績を積み上げ、それを「前例」に、今、あちこちの
学校に散らばる難聴児のお母さんがたが協力して、それぞれの学校に情報保障を
採り入れ始めています。

もちろん、情報保障を必要とする子の親は、学校その他、あちこちとの
交渉をしなくてはなりません。当日も機材の準備や設営など、さまざまな
仕事をこなさなくてはいけません。

でも、そのときに「親の会」の仲間たちが協力しあっているんです。
事前交渉のご苦労は、間接的な話しか聞き及んでいませんが、
どこかの学校で情報保障をつける、というと、別の学校のお母さんが、
設営(朝早いんですよ)や撤収の手伝いに来てくださるんです。
ビックリです。

最近私の周りには、「要求」はしても「協力」はしない親の話ばかりが多くて、
実はかなりブルーだったんです。
まず「苦情」ありき、という姿勢。そしてそれを意地でも通そうとする。
それによって、誰かが何か大変な思いをすることになることは考えず、
そういう考えではない人もいるかもしれない、という想像もせず、
その結果に対して、自分も何らかの協力をすることも考えず、
ただ「要求」し「文句」を言うだけ。通らないのは相手が悪いから、というだけで
自分を省みることをしない。

でも、一体自分自身は何をしているのでしょうか?
何でも人任せで、育児の外注化ばかりが進んでいるみたいです。
もちろん、育児は人の助けを借りてやるものだと思います。
それは社会的に「当然」助けてもらうものではあるけれども、
だから、自分の側から何もしなくてよい、という問題ではないと思います。
できる協力をするとか、相手の立場も考えるとか、
そういう根本的な「やさしさ」のようなものが失われつつあるような感じがして、
とっても暗い気持ちになっていました。

もちろん、「親の会」の人たちは、学校とか行政に「要求」します。しなくてはコトが進みません。
でも、それを「これがとーぜんの権利でしょ!! あんたたち、何やってるのよ」
みたいに持っていっても道が開けないことは分かっていらっしゃる。
自分たちも精一杯動き、少しずつ実績を積み上げながら、次に達成できるであろう
目標を少しずつ上げながら、前に進んでいくのです。しかも明るい。

 (もちろん、明るい話ばかりではありません。
  さんざん苦労しても結局受け入れられずに
  疲れ切ってしまうお母様の話も聞きました)

「どうでもいいんです。息子は実験台だから」といいつつ、
ご自身で前ロールを表示してみたいとおっしゃるお母様。
もちろん、「どうでもいい」なんて思っているはずはありません。
すごく愛情があって、だからこそ人任せにしないで、自分たちでできることは
自分たちでやるという姿勢。

私は すごく共感しました。
そして、何か協力できるなら、ぜひやりたいと思いました。
こういう方たちにお会いできたことに感謝します。

パソコン要約筆記をやっていて、よかったです。

【情報保障】人形劇への情報保障・担当者からの報告

2004年10月05日 | 【情報保障】
既にこちらでも紹介した、人形劇での情報保障について、
当日担当された☆Aけみ☆さんから、とても詳しい報告が
アップされました。いつものことながら、大変参考になります。
 ↓コチラ

 幼稚園~小学校低学年 
 「着ぐるみ劇【あかずきん】」・「ぬいぐるみ劇【みにくいあひるのこ】」
  ~みんなで並んでノートP.C.表示/「親の会」の試み~


これまでフツーの(?)情報保障しか経験のなかったワタシですが、
今年は、この☆Aけみ☆さんのおかげもありまして、いくつかの小学校で
演劇などの情報保障に参加させていただくことになっています。
また、結婚式や卒業式など、ちょっと緊張する現場も予定に入りました。
食わず嫌いをせずに、いただいたチャンスは、大切に生かしながら、
リアルタイム入力以外の技術も身につけていきたいと思っています。

【情報保障】人形劇への情報保障・鑑賞記

2004年09月30日 | 【情報保障】
すでに報告した9月23日に観た人形劇につけられたPC情報保障を、
客席からのぞき見たテクニカルな部分の覚え書きです。
【PC要約筆記者の視点】の報告ですので、ソフトの専門用語などを使います。

1.リアルタイム入力とスライド前ロールの併用

あらかじめ読むことが決まっている台本→スライド前ロール
会場アナウンスなど→リアルタイム入力
と、使い分けていました。それぞれに専用のパソコンが必要なので、
筆記者の目の前には2台のパソコンが置いてありました。

台本はあったものの、当日のセリフは「台本通り」ではなかったようで、
ときどきリアルタイムに切り替わりました。
ただ、スライド前ロールは、1セリフがいっぺんに画面に出る
セリフ切り替わり方式なのに対し、リアルタイムは画面が流れていくので、
若干とまどいました。

【赤ずきん】【おおかみ】などの登場人物名はそれぞれ色を変えて表示され、
誰が話しているのかが一目で捉えやすくなっていました。
ワタシはまだスライド前ロールを勉強していないのですが、色の変化や
フォントの変化などを活用できるとしたら、これはやってみる必要アリと
痛感しました。

2.リアルタイム入力での「ことばの書き換え」

お子さま(特に幼稚園~を含む)ということで、アナウンスによる
「まもなく開演いたしますので、お席についてお待ちください」→「はじまるよ」
など、お子さまにも分かりやすいことばに書き換えて表示していました。
子どもの字を読む速さには限界もありますし、すべて「ひらがな表示」ですから
大人向けの言葉を長々と打ち続けたら非常に読みにくい。
こういう場でこそ「究極の要約」が求められるのだと思いました。

それと同時に、利用者の「読む力」に応じて、要約の程度を変えていく力も
必要だと感じました。そのためには「要約」そのものを科学的に分析することが
求められてくるでしょう。

「通訳者」というのは、言葉を他の言語メディアに置き換えるというだけではなく、
「コミュニケーションの仲介者」であると思います。
そう考えると、話し言葉をそのまま、なるべく多く打つことだけが「良い」
パソコン要約筆記ではないことになります。
言葉をとりまくノンヴァーバルな部分を伝え得てこそ、
本当の「コミュニケーションの仲介者」です。
それは単純に感嘆詞を文字に置き換えることだけとか、
くだけた話し言葉を、まるっきりそのままの形で文字にするとかいう
小手先の方法では実現しないのではないか?と思うんです。
一言で言えば「行間」をどう伝えるか。
生意気ですね。簡単にできれば苦労はないんですけどね。
結局はそのたびごとに、これを伝えるにはどうするか?と臨機応変に考えるしかなく、
たぶん答えは1つに決まらないのでしょうが……

このあたりについては、これからじっくりと考えていきたいと思っています。
いずれにせよ、非常に勉強になりました。