身体が揺れた・・・里恵(7期生)が冷蔵庫を占領している梨を少しでも減らそうとして、「梨食べたいやろ」と中3たちに暑苦しさをいかんなく発揮、梨を剥いてはみんなに振る舞っていた。その空いたスペースにはナオミおばちゃんからの差し入れの弁当が入るはずだった。右手が壁を支えた・・・逆か。恐る恐る身体の重心を下げていく。両手と両膝が床についたのを感じ少々安堵・・・横たわる。
午後からの授業は個人的には心地よい授業だった・・・個人的にだ。まあ、えてして教える側の快感は独りよがりの快感にすぎないのだが。
「体調が悪いときには授業をする」・・・昔からこう言い放っては授業に臨んだ。昨日も前夜からのマージャン、とりあえずは沈静化した塾生のトラブル、悩める新聞記者からの依頼の件、いろんなものがないまぜのまま一日が始まった。ところが体調は悪いが授業くらいはできるだろうとの思い込み、それは思い込みでしかなかったようで、終わったあとの疲労は今までの記憶にはない質のもの。・・・これが齢を重ねるということか、真ん中の部屋で床に寝ながら落書きだらけの天井を見ながらつぶやく。
里恵がいて、娘のあい(23期生・三重大学教育学部1年)がいてくれた。里恵は去年の三重県統一の第三回の国語、あいは詢也の宿題に付きっきりだった。俺は・・・明日の授業のために今は寝よう、そう思いつつ瞼を閉じた。
なんとか起き上がったのは日付が変わる前、れい(18期生・三重大学教育学部4年)がいた。「今夜は高3が塾に泊まるって」とれい。「へえ・・・じゃあ、記念写真でも撮っといてや」と言い残して、エスティマに乗り込む。行先は『WAY』、アメを求めてだ。
百田尚樹の『海賊と呼ばれた男』を買う。百田尚樹は『永遠のゼロ』で名前を知った。偶然、玄太(津高3年)もこれで感想文を書こうとしていた。2年前の夏だ。読み進めるうちに胡散臭さが鼻についた。玄太も同様の匂いを嗅いだのか、感想文は他のものにした。現実の戦争というものがあり、その生身の戦争を脚色された人物により必要以上に日本人が美化されている・・・胡散臭さに辟易し、金輪際読まないと決めた。しかし昨日の日経新聞の広告で俺の決意は覆る・・・その程度の男だ。
「この物語に登場する男たちは実在した」・・・プロローグではこう謳っている。架空の人物を駆使し、むしろ戦争を冒とくしたとしか思えなかった『永遠のゼロ』、その反省から本書が生まれたのならそれはそれでいい・・・。今夜は俺の身体に少しだけご褒美、今から読むつもりだ。
・・・で、高3の泊まり隊の面々である。
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