代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

アメリカの回転ドア人事と利益相反

2013年04月27日 | 教育
 前回の記事で紹介した子宮頸がんワクチンの認可をめぐって厚生労働省の審議会の委員が、子宮頸がんワクチンを製造する製薬会社から寄付金をもらっていたという事例に象徴されるように、原発事故にも関わらず(いや事故の後のドサクサに紛れて?)、ますます官僚と学者と産業界のあいだの利益相反の構造は強固になっている。この問題を放置してはならず、国民的な議論が必要である。

 以下は、私が大学の講義で「利益相反(コンフリクト・オブ・インタレスト)」がなぜ問題なのかを考える際に、事例として取り上げている問題である。参考までに紹介しておく。




 以下は、アメリカのオバマ政権下でFDA(食品医薬品局)の副局長を務めるマイケル・テイラー氏の主な経歴である。アメリカ政府の人事に問題があるのかないのか、また問題があるとすればどうしてなのか考えてみよう。
 なお、モンサント社は遺伝子組換作物(GMO)種子の世界シェアの90%以上を誇る遺伝子組換種子の最大手企業である。
 また、FDA(食品医薬品局)は、食品や医薬品の安全性と有効性を保証し、国民の健康を守ることを目的とするアメリカの政府機関である。

マイケル・テイラー氏の主な経歴(下記サイト参照)
http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_R._Taylor

1980年代:モンサント社顧問弁護士
      ↓
1991年:FDA(食品医薬品局)の政策担当副局長
      ↓
1994年:アメリカ農務省(USDA)の食料安全検査担当局長
      ↓
1996年:モンサント社の公共政策(public policy)担当副社長
      ↓
2000年:民間シンクタンクの理事
      ↓
2007年:ワシントン大学教授 
      ↓
2010年:FDA(食品医薬品局)食料担当副局長

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 授業中にこの問題を出すと、学生のだいたい8割以上は「問題だ」と回答するが、中には「何の問題もない」と発言する学生もいる(反骨心旺盛なそうした学生の存在はすばらしく、大歓迎)。「問題がある」と考える学生も、なぜ問題なのか皆の前ではうまく説明できなかったりするので、討論すると結構盛り上がる。
 
 ちなみに、モンサント社とアメリカ政府の「回転ドア人事」に関して、より詳しく知りたい方は下記サイト参照。日本がTPPに参加すれば、こうした「モンサント人事」が日本にも持ち込まれることは想像に難くない。

「モンサントとFDA(食品医薬品局)&EPA(環境保護庁)のすばらしい回転ドア」
 http://rense.com/general33/fd.htm
 

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