代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

【速報】国交省が飽和雨量48㎜の虚構をついに認める

2010年10月12日 | 治水と緑のダム
 本日の衆議院予算委員会で自民党の河野太郎議員が質問に立ち、馬淵国交相に、過去に利根川で発生した四洪水(S33年、S34年、S57年、H10年)における飽和雨量の値を質問しました。これまでの国交省は、飽和雨量48㎜モデルで、これらの四洪水を再現計算できたかのように主張してきました。その上で、飽和雨量48㎜モデルで計算して22,000立米/秒という基本高水が正当であると訴えてきました。本日、同省は、その立場を劇的に転換しました。これは利根川のみならず、全国の河川のダム見直しに波及する大ニュースです。河野太郎議員、この問題を質問して下さって、本当にありがとうございました。深く感謝を申し上げます。河野議員は日本の治水計画の歴史を変えたと言っても過言ではありません。

 私どもの計算結果は「森林が荒れていた時期は飽和雨量は48㎜であっても、森林が生長した今日では100㎜以上にしないと当てはまらない」というものでした。それに対し国交省の立場は「48㎜で計算して22000立米。これは近年の森林状況でも妥当である」というものでした。


森林保水力の増大は明らか
 
 本日の衆院予算委員会での河野太郎議員の質問に対する馬渕国土交通大臣の答弁は次のとおりでした。

***馬淵大臣が答弁であげた数値を引用*******

          飽和雨量(mm)
S33(1958)年    31.77
S34(1959)年    65
S57(1982)年    115
H10(1998)年    125

***引用終わり*******************

 ついに国交省は、戦後から時間が経過した後年ほど、飽和雨量が増大している事実を認めたわけです。いままでは「この流出計算モデルは、規定計画策定以降、近年の森林状況による実績の洪水流量においても再現性がある」という主張でした(この記事)。これは誰が読んでも、規定計画(飽和雨量48㎜)の流出計算モデルが、そのパラメータのままで、現在の森林状況にも当てはまっているという主張としか解釈できません。

 国交省は「今までの主張がウソでした」とは認めませんでしたが、「流出計算モデル」のパラメータを、各洪水の再現計算ごとに入れ換えていたことを認めてしまったわけです。しかも森林の生長に合わせて確かに飽和雨量は増大していたのです。これでは「規定計画のモデルが、現在の森林状況でも再現性がある」とは言えません。森林の生長によって飽和雨量が増加しているということは、規定計画時よりも洪水流量は相対的に低減していることを意味するからです。つまり昭和30年代の洪水から計画されたモデルは、現在の森林状態においては「再現性はない」のです。

 「これでも再現性があると言えるのだ」と主張するのであれば、彼らは小学校に入りなおして国語の勉強をし直さねばならないことになります。

 しかしながら、これは大きな前進です。ウソを繰り返して捏造で訴えられるよりは、素直に飽和雨量を変えて再現計算を行っていた事実を認めてしまった方が被害が少ないと考えたのでしょう。私は、この国交省の英断に拍手を送りたいと思います。
 この大転換はじつに大きな意義を持ちます。国交省はルビコン川を渡ってしまったのです。もう引き返せません。
 
 この大転換により、同省は、全国の一級河川で、基本高水の見直し作業を実施せねばならなくなるのです。なぜならば、多くの河川の基本高水は、拡大造林などで森林が荒れていた時期の洪水から決められたパラメータで算出されているからです。 
 もっとも、同省はいまだ、飽和雨量の増大が森林の生長によるものだという因果関係までは認めていません。ここで同省は最後の抵抗を試みようとするでしょう。しかし、ここまでくればそれも認めざるを得なくなるでしょう。

 同省は既に半ばまで、私どもの主張の正しさを認めてしまったことになります。いずれ「48mmモデルで計算して22000立米」という主張も続けられなくなります。少なくとも飽和雨量は125㎜以上で再計算して、基本高水を改訂せねばならないことになるからです。

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