代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

米国産GMトウモロコシはどんどんバイオエタノールに使った方がよいかも

2007年03月02日 | エコロジカル・ニューディール政策
 2月16日にエントリーした「食糧生産も熱帯林も脅かさないバイオエタノールの生産法」という記事に対して、みーぽんさんから次のようなコメントをもらいました。

>サトウキビはともかく、トウモロコシで人間の食料
>と競合する、というのはプロパガンダではないかと
>私は考えています。

 私も、もしかしたら、みーぽんさんの言うように本当にプロパガンダかも知れないと考え直しております。

 先の記事の中で私は、「ブッシュ政権のバイオエタノール増産計画によって、トウモロコシ相場が高騰し、世界の貧困層の食糧事情を悪化させているのです。バイオエタノールとバイオディーゼル生産を行う上で次の二つの基本原則の確立が必要になるでしょう。(1)それが森林の農地転用に帰結することを戒める。(2)それが既存の食糧生産機能を損なうことを戒める」と書いておりました。
 
 とくに「世界の貧困層の食糧事情を悪化させる」というのは、そうならないかも知れず、もしかしたら本当にプロパガンダかも、と思うところがあります。詳しくはもうちょっと調べる必要がありますが、覚書き程度に思うところを書き留めておきます。

 確かにバイオ・エタノールブームで国際的にトウモロコシ価格が高騰したのは事実です。しかし、もしかしたらそれは途上国の食糧自給率を上昇させる方向に作用し、かえって途上国の食糧事情を好転させるかも知れません。
 とくにアメリカの「輸出補助金付遺伝子組換トウモロコシ」に関しては、海外へ流れる輸出量が減った方が、環境のためにも人々の健康のためにも良いといえるでしょう。他の国は食糧自給率を上げることができますし、むしろ穀物価格の上昇は世界の貧困農家にとっては良いニュースでしょう。

 トウモロコシの原産国であるメキシコは1994年にNAFTA(北米自由貿易協定)に加盟してから、トウモロコシ生産が激減しました。古代マヤ文明の当時からトウモロコシを栽培してきた先住民族の小規模農家が、米国からの安価な「輸出補助金付遺伝子組換トウモロコシ」の輸出攻勢を受けて、農業を続けていられなくなったのです。それこそ何百万人が離農したとも言われています。(正確な統計数値はないらしい)。

 「NAFTAは先住民族にとって死を意味する」との声明を発しメキシコのチアパス州で先住民族のサパティスタ民族解放軍が蜂起したのも、米国トウモロコシの輸出攻勢が大きな原因でした。
 彼らは局所的な内乱状態をつくり出すことによって、グローバル経済の大波に飲み込まれて先住民文化が破壊されるのを回避し、マヤ文明以来の小規模なトウモロコシ生産の伝統を保守しようとしたのです。そう、彼らは過激派でも何でもありませんでした。むしろグローバル市場原理主義を掲げる過激派たちの攻勢に反逆した、伝統的な保守主義者たちだったのです(国は違いますが、井上ひさしの小説『吉里吉里人』に出てくるような人々と考えればよいかも知れません)。

 アメリカがバイオエタノールに遺伝子組換トウモロコシを回して、価格が上昇してくれた方が、メキシコの先住民族はまた伝統的なトウモロコシ農業を復活させることができるかも知れません。また、日本の食糧自給率を上げるのにも有利かも知れません。
 そういうわけで、とくに米国の遺伝子組換トウモロコシに関しては、どんどんバイオエタノールに回してくれるのが良いのかも・・・・(本当は遺伝子組換トウモロコシに関しては、作付しないでくれるのが一番よいのですが)。

 バイオエタノール・ブームに対して、食糧事情を悪化させると最初に大声で叫んだのはレスター・ブラウンだったと思います。レスター・ブラウンという米国の権威にはすぐに盲従してしまう日本のマスコミは、ブラウンの主張はすぐに信じ込んでしまいます。
 レスター・ブラウンという人は、問題の本質から人々の目を逸らす天才かも知れません。私の目から見ると、レスター・ブラウンは本当に問題の本質を覆い隠して世論をミス・リードしています。

 例えば「中国で牛肉食の慣習が広まって大量に穀物を輸入するようになって、世界の食糧事情を悪化させる」と早くから警鐘を鳴らしたのは彼でした。その主張自体は正しいのですが、まるで中国の国内政策が悪いとでも言わんばかりで、見事に問題の本質を隠蔽していたのでした。

 問題の本質は、私がこのブログで論じているように自由貿易にあります。米国が中国に対して輸入自由化圧力をかけ、いやがる中国政府に対してムリヤリ農産物関税の削減を強要したことが、中国が穀物自給への努力を放棄した最大の理由なのです。
 
 レスター・ブラウンは「中国の食糧輸入が脅威だ」とわめく前に、まず、自由貿易体制を批判し、自国政府とその取り巻き資本家(クローニー!)の市場原理主義ロビイストたち(カーギル社など)を糾弾すべきだといえるでしょう。ところが彼の著書を見ても、自由貿易を批判する記述はどこにもないのです・・・・。

 全米20州でミツバチが突然消えたというこのニュースなどを見ても、「ついに来たか」という感じがいたします。農薬による化学汚染の可能性も指摘されているようですが、私なんか「もしかしたら遺伝子組換作物の影響では?」と心配してしまいます。
 米国の石油と農薬と遺伝子組換にまみれた市場原理主義的農業(Chic Stoneさんがよく言う極悪非道農業)は、自然からの大いなるしっぺ返しで早晩に行き詰るのではないでしょうか。
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15 コメント

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Unknown (みーぽん)
2007-03-03 22:59:20
私のコメントに反応していただいて感激です。
サパティスタと米国トウモロコシの関係は知りませんでした。たいへん参考になりました。
レスター・ブラウンについても知りませんでした。確かに温暖化を喧伝すること自体を、途上国の経済成長を抑えようとする策謀だ、という見方もあるぐらいですからね。企業や自由貿易を批判するとワールドウォッチに献金が来なくなるのを心配してるとか?
今回はすでにお読みになったであろう、水関係の本についてTBさせていただきました。
バイオ燃料 (デルタ)
2007-03-12 22:58:50
中国の場合(これは、日本でも韓国でもそうでしょうけど)、結局は、国内での農作物への評価が低く、コストに見合わないほど安値で買おうとする消費者側の圧力がまず原点にあったといえませんでしょうか。中央集権的な社会をそのままにして過度に都市化していった結果、農産者と”消費者”との間で、離反が生じた……。私には、そう見えるんです。

輸出入の不均衡も、原理を糾せば、自由貿易とは名ばかりUS連邦政府が出している「輸出補助金」に非道さを感じます(「補助金」なんて、市場原理からもっとも遠くにあるものですから)。
輸送コストをかぶせてなお、外国からの輸入品が安くなる、ということ自体がオカシイですし(爆)

アメリカの消費者も、遺伝子組み換え作物への拒否感があるみたいですから、燃料用に転用するほうが、まだマトモな判断だと思いました。

それにしても、補助金づけになって原価が見えにくくなっているこの構造、原発に似ている気がしますね(苦笑)エネルギー問題って、どうしてこう不透明な部分が多いのでしょう(汗)
GM作物による遺伝子汚染による不胎化の危険性 (奇兵隊)
2007-03-13 00:48:04
以前にGM作物の輸入港近辺でGM作物の自生が確認されていたと思いますが、GM作物の種子は一世代限定でしか結実しないように操作されているので、花粉などにより遺伝子汚染が現実となれば「瓜実蝿の不胎化による駆除」の植物版になる可能性も考えられ、非常に危ういと思います。

私はGM作物については、止めるべきだと考えております。
実験などで栽培する場合は、自然環境からの完全隔離を実施し、最終的には完全に焼却すべきでしょう。
欧州環境庁(EEA)、GM作物花粉による遺伝子移転に関する報告を発表 (奇兵隊)
2007-03-13 00:56:22
農業情報研究所(WAPIC)
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/index.html

EU:欧州環境庁(EEA)、GM作物花粉による遺伝子移転に関する報告を発表
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/gmo/news/02032801.htm
質問です。 (Mドングリ)
2007-03-14 00:55:35
>とくにアメリカの「輸出補助金付遺伝子組換トウモロコシ」に関しては、海外へ流れる輸出量が減った方が、環境のためにも人々の健康のためにも良いといえるでしょう。他の国は食糧自給率を上げることができますし、むしろ穀物価格の上昇は世界の貧困農家にとっては良いニュースでしょう。


<GM作物をアメリカから外に出さないならば、他国の農業、地球環境にとって良いニュースではないでしょうか。

モンサント社とかカーギル社のGM作物を燃料用に転用し、アメリカ内に封込めて遺伝子汚染の進行を食い止めることができるなら、これがベストだと思うけど・・・・
この案は市場原理にかなっているでしょうか?
(経済学的にみて、破綻していないでしょうか?)

アメリカ人もいろいろ (msx)
2007-03-21 03:06:50
>極悪非道農業

アメリカ人もいろいろ

New Farm
http://www.newfarm.org/japan/index.shtml

カナダ・アルバータ州のオーガニック農家で農業インターンしませんか。広さ80エーカーの複合経営農家です。

80エーカー=4046.85642 m2×80
=323748.5136=32ha

日本の32倍。きっと農奴がいるんだ

テロとの戦い(油田地帯確保作戦)につきあわされなくてすむのでいいんでないかい

そのかわり、日本は自分で何とかしろということでしょう

ちなみに、わたしはピークオイル論に感染しています

GMといっても、除草剤抵抗性とBtタンパクでは話がちがうでしょう

バブルの頃にはカリフォルニアが買えるとか言う話がありましたが日本の市場原理主義者には本場で農奴制農場でも経営してもらって、お手並み拝見といきましょう
夢は大きく(苦笑) (デルタ(@日本の市場原理主義者の1))
2007-03-29 01:58:12
msxさん、こんにちは。
”東京売ったら、カリフォルニアが買える”でしたっけ?
東京を売っている間に、残った東京近郊の地価が下がってNetでは大損するでしょうけど(苦笑)、広い農地は確かに魅力ですね。
有機農業がUSで無理なくできているのも、農地が大きい(作付けの密度が低い)ことも絡んでいると思いますし。

>日本の市場原理主義者には本場で農奴制農場でも経営してもらって
例外もあるでしょうけど、市場原理主義者と名乗る人は、個人の身体的自由を尊重しますので、「農奴」を雇わないと思われます。かといって人を雇うと高くつく。無茶苦茶に機械化して経営するのでないでしょうか……
コメント遅れて申し訳ございませんでした (関)
2007-03-31 15:22:43
 皆様、諸般の都合でブログを更新できずまことに申し訳ございませんでした。
 管理者不在のあいだに沢山のコメントをいただきまことにありがとうございました。

>企業や自由貿易を批判するとワールドウォッチに献
>金が来なくなるのを心配してるとか?

 みーぽん様、この指摘多分当たっているのではないかと私も思います。レスター・ブラウンに何度かインタビューしたことのある、私の知っているジャーナリストは、本には書かないけど、個人的に話しているとブラウンは自由貿易に批判的だと言います。
 やっぱり企業献金なくして成り立たない研究所ってのは、学問の自由、主張の自由を奪われますね~。
 広告料収入に依存する、日本のマスコミもまさにその弊害でボロボロになっていると思います。
 
>「輸出補助金」に非道さを感じます

 デルタさま、本当に同感です。カーギル社なんて、よその国に穀物を輸出する際にはゴリゴリの市場原理主義者になっていたかと思えば、米国政府に対して穀物補助金を支出させる際にはゴリゴリの保護主義者に豹変するのです。このダブルスタンダードが米国の特徴ですね。ヌエのようなものだと思います。世界から信頼されるわけがないです。

>私はGM作物については、止めるべきだと考えております。

 奇兵隊さま。全く同感です。

>この案は市場原理にかなっているでしょうか?
>(経済学的にみて、破綻していないでしょうか?)

 Mドングリさま。もともと彼らは新古典派経済学の理論に帰依しているわけではなく、よその国の循環的にうまく回っている市場を壊して、押し売り行為を実行するのに新古典派の理論が都合がよいから、自社利益に貢献する範囲で方便として使っているだけだと思います。ですので自社に被害が及びそうになると途端に保護主義者に平気で豹変いたします。
 バイオエタノールも、経済理論に反しようが何だろうが、それを口実に連邦政府から補助金を引き出して、穀物メジャーの利益になればそれでよいのでしょう。

msxさま
 
>日本の32倍。きっと農奴がいるんだ

 msxさま。アメリカで32haなんて小規模農家ですよ。私の知人の米国人が「私の小規模で豊かでない農家の出身で・・・」と身の上を語ってくれたので、経営面積を聞いたら「30ヘクタール」といわれズッコケたことがあります。それだけあれば、日本じゃ最大規模の大農園になりますから。
 その「30ヘクタール」の小規模零細農家が競争に負けて経営を続けていられなくなり、数百ヘクタールの企業農園に駆逐されているのが今の米国農業の実態です。
 日本でも財界は、企業の農業経営を自由化するように主張し、バカなマスコミはそれを応援していますが、そんなことをしたら日本社会の原点である村の共同体文化が最終的に破壊され、日本は日本でなくなり、人も社会も滅びさるでしょう。
 
デルタさま
 米国のアグリビジネスは、中南米などでは平気で児童労働を強要してきました。農奴とは違いますが、市場原理主義がもたらす労働の過酷さは、農奴制に勝るとも劣らぬものだと思います。
最大の山場…… (デルタ)
2007-04-01 23:20:53

>中南米などでは平気で児童労働を強要してきました

この種の例が頭から抜けていました。安易に考えすぎてました……。
子供の場合
 ・経済的に扶養者からの独立が不可能
 ・判断能力が未成熟
という面があって、単純な「自由意志に基づく雇用契約」の前提が成り立つ余地がない。だから、酷使されてしまう。

市場原理主義を理論構成する上で最も大きな山場と認識しています。
この問題への考察は、一度私のBLOGに引き取らせてください。
GM作物 滅茶苦茶危険 (奇兵隊)
2007-06-19 00:16:30
関様
拓殖大学の助教授就任おめでとうございます。

ネットサーフィンで見つけたblogの記事を紹介します。
GM作物、滅茶苦茶危険です。

4つの目で世の中を考える
http://310inkyo.jugem.jp/

遺伝子組み換え食品 1
http://310inkyo.jugem.jp/?eid=350

遺伝子組み換え食品 2
http://310inkyo.jugem.jp/?eid=351

遺伝子組み換え食品 3
http://310inkyo.jugem.jp/?eid=352

遺伝子組み換えトウモロコシ、成長や腎臓機能に悪影響が明らかに!
http://310inkyo.jugem.jp/?day=20070618

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