代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

群馬県の大沢知事がTPP参加は「時期尚早」

2011年10月10日 | エコロジカル・ニューディール政策
  群馬県の大沢正明知事が野田首相と会って、TPP参加問題や八ッ場ダム問題を懇談したそうである。八ッ場ダムに関して首相に何と要請したかは言わずもがなである。興味深いのは、TPP問題に関して「群馬県には製造業や1次産業などいろいろな産業があり、国民的な議論をして方向性を出す必要がある」と述べ、結論を出すのは時期尚早との考えを示した、とのことである。産経新聞の下記記事参照。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111010/fnc11101017210001-n1.htm

 八ッ場ダム問題に関して、私は大沢知事とまったく意見を異にするが、TPP問題に関する知事の見識に関しては声援を送りたい。

 大沢知事が気にしているのは群馬の一次産業・製造業のみならず、建設業界への悪影響も含めてであろう。TPPで懸念されている分野に公共事業がある。つまり公共事業の発注が国際調達になり、地方の建設業界が崩壊するのではないかという懸念である。
 
 大沢知事が論理も理性もかなぐり捨てて八ッ場ダム建設を推進するのも、選挙の際には群馬の建設業界の全面的なバックアップを受けているのだろうし、何としてもダムを造ってその恩に報いねばならないとの想いは強いのだろう。これは埼玉の上田知事や千葉の森田知事らにも言えることかも知れない。ならばダム推進と共にTPPに反対する心情も出てくるであろうことは当然である。
 
 プラザ合意以降の円高と貿易自由化と経済グローバル化が進展する中、地方の製造業と農業はとめどなく疲弊し、産業構造が空洞化していった。そうした中、地方の雇用は公共事業による建設業に依存するしかないという不幸な状況が常態化してきた。
 八ッ場ダム問題も、せんじ詰めて言えば、農業崩壊・産業空洞化による地域社会の土建依存状態の上に咲いたあだ花といえるだろう。地方経済が八方塞がりの中で、それしか打つ手がないという不幸な状況が、各地で繰り広げられるムダなダム建設という悲劇の背景をなしているのである。山口県の上関町のように、漁民の反対を押し切って原発を誘致してでも町の生き残りを計るしかないという悲劇も同根なのだろう。

 本当は他にも選択肢はあるのだが、霞が関の縦割りの弊害で予算編成が硬直化しているので、地方が国からお金を獲得しようとすればダムや原発に頼るしか打つ手がないという不幸な状況に追い込まれているのだ。霞が関の策謀で、地方独自の発想などできないように仕組まれているのだ。

 私も雇用の受け皿としての地方の建設業界を守らねばならないと思う。地方の小規模な公共事業は地方の建設業界に発注されるべきで国際調達にはなじまないと思う。故に、もちろんTPPによる公共事業自由化には大反対である。

 私の意見はこのブログを始めてから一貫している。地方の建設業界が、不要な上に波及効果がなく財政を破たんに導くダムや道路建設で生き残ろうとするのではなく、別の途を探すべきだということである。ブログを始めてから「エコロジカル・ニューディール」として訴えてきたのは、ダムや道路の代わりに、建設業界が自然エネルギーのインフラ整備や農業・林業分野に参入し、公共事業の重点をそちらに移し、そちらで雇用を創出すべきという主張であった。

 スローガンは「コンクリートから人へ」ではなく、「ダムと道路から自然エネルギー産業と農・林・漁業へ」となる。

 ブログの過去記事でも、八ッ場ダムの代わりに水田の畦畔のかさ上げで貯水容量を確保する事業や、土砂災害防止のために間伐材を木杭にして斜面に打ち込むといった治山・治水公共事業を論じてきた。そうした事業は農協や森林組合などではできず、やはり建設業界の出番なのだ。

 八ッ場ダムを中止し、TPPも拒絶して、群馬の自然環境を守り活かす形で、農・林・建設業を再生させる。

 大沢知事に何とかこの方向性を理解していただきたいものである。

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