(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子34 自分は他人を気にするか

2007-01-06 23:07:45 | 欲たすご縁は女の子   三日目
「あっ! 線路ですよ!」
線路脇の道に差し掛かると、後ろのセンがはしゃぎだした。
「駅ももうじき見えるぞ」
その線路を辿った先に、目的の駅が現れる。
「おお~」
その立派な佇まいに、感嘆の声を漏らす。
実際は大して大きくもない普通の駅だが、住宅地の中にある駅なんてこんなもんだろう。
さて、自転車は見知らぬ先輩方にならって駅の傍に止めておくとして、周りを見てみる。
……さすがに駅の周辺となると人通りが多いな。
「どうしたんですか?」
多少挙動不審気味な俺を見て、センが尋ねてくる。
「お前にはタダで電車に乗ってもらう。その為には人目につかない場所を探さんとな」
「つまり、消えればいいんですね?」
「その通り。
 ……おっと、一駅代くらいでケチ臭いとか言うなよ。これでも主夫やってんだからな」
理由になってない気もするが、
余った生活費がそのまま小遣いになるというシステム故仕方がないのだ。
……やっぱ俺がケチなだけかな。
「ケチ臭いだなんてそんな滅相もない。節約するのはいいことですよ」
解っていただけるか。
「それより他人の目ですが、そんなに気にすることないと思います」
「なんでだ?」
「他人は自分が思ってるほど自分のこと見てませんからね。
 『自分を見て欲しい』とか、
 『自分を見て欲しくない』とかいった欲は稀にありますが、
 それらも含めて、ほとんどの欲に出てくるのはその本人だけなんです。
 もちろん欲の対象が別の人なんて場合もありますが、
 それが赤の他人なんてことはまずないです」
えーと……
「つまりは?」
「『人は他人に興味がない』ってことです」
「なるほど」
「まあ、学校ではさすがに隠れましたけどね。
 狭い世界だし、変な噂とかになったら迷惑でしょうから」
学校を世界とはまた大層な言い回しだな。お気遣い、感謝します。
「じゃあ今から消えますけど、明さんの後ろについて行きますんでご心配なく」
「解った」
「では」
……ホントに一切隠れずに消えやがった。
周りを見てみるが、異常はない。意外とこんなもんか。

駅に入り、切符を買う。大人一枚百五十円也。
改札に切符を通し、椅子に座って電車を待つ。あと十分ほどで来るようだ。
「一番線を 電車が 通過致します。危険ですから 白線の内側へ お下がり下さい」
アナウンスが流れ、急行が通り過ぎる。
隣の駅で止まるので、スピードはやや抑え目だ。
「もうすぐ電車来るからな」
近くにいるであろうセンに言う。もちろん返事はない。一応だ一応。

向かいの二番ホームに電車が止まる。こっちもそろそろ来るだろう。
「一番線に 電車が 参ります。危険ですから 白線の内側で お待ち下さい」
来た。ちょうど席も空いているようだ。一駅だから別にどっちでもいいけど。
「乗るぞ」
返事なし。

まあ一駅なんてあっという間で、三分ほどで到着した。
「降りるぞ」
返事なし。
急行が停車する駅だけあって、さっきの駅よりもかなり大きめ。
ホームが駅の二階部分なので、
眼下にあのド田舎と一駅しか離れていないとは思えないような街並が広がっている。
ホームの階段を下り、改札を通る。見た目には俺一人でも実際二人なんだがな。
さて、消えるのはよくても出てくるのは目立つ気がするので隅のほうへ移動だ。
「出てきていいぞ」
と隅っこでつぶやくと、問題のもう一人はすぐに現れた。が、なんだかお疲れのご様子。
「はあ、はあ……」
「どうした?」
「すいません、ちょっと取り乱してました」

またか。相変わらずちょっとではなさそうだな。


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