(有)妄想心霊屋敷

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普通な非日常13 被写体、何か

2006-11-25 19:43:43 | 普通な非日常
「森口。俺が馬鹿なのはもういいから、とっとと本題だ」
「もういいって、悟……解ったよ。いくら言っても無駄っぽいし」
ああ無駄だ。言うだけ無駄、聞くだけ無駄、考えるだけ無駄。無駄無駄無駄。
だからもう馬鹿でも何でもドンと来い。
「……本題って何さ。森口くん」
と聞いてはいるが、投げやりな口調の霧原さん。まあこれも一種の不機嫌と言えるよな。
不機嫌なのはいつものことだ。いちいち気にしないでおこう。
「ほら、昨日の帰りに話してた……」
「あれか! 何か思いついたのか!?」
「やってみないと解らないけどね」
「で、どうするんだ!?」
「写真だよ。心霊写真」
「……あんなの大体インチキじゃないのか?」
「普通に見える人が居るぐらいなら本当に写ってもおかしくないでしょ?」
「それはそうかもしれんが……」
まあ、やってみればすぐに解る。俺は携帯を一志に向けて、一枚写真を撮ってみた。
「何だコレ……」
「何だ!? まさか、写ったのか!? ってうおっ! 何じゃこりゃあ!」
撮られた本人も驚く。これじゃあ仕方ないが。
「どうなったんですか?」
「こうなりました」
里美さんに携帯を見せる。
「うわ……」
そこに写っていたのは、歪んで歪んで歪みまくった人型の何か。
シルエットにすれば人に見えるだろうが、
顔のパーツは判別不能。服と肌の境目は不明瞭。手に至っては某ネコ型ロボットのそれだ。
はっきり言ってキモい。つーか怖い。夢に出てきて欲しくないモノNO1に認定する。
「うわ、これじゃ幽霊って言うより怪物だね」
横から覗いた森口が言う。
「お前にも見えるのか?」
「見えるけど、これじゃね」
「そりゃあこんなの見せて『娘さんです』なんて言えんしな」
「とりあえず、幾つか撮ってみてよ。
 もしかしたらちゃんと写る事もあるかもしれないし。里美さんもお願い」
「解った」
「はい」

それから結構な数の写真を撮ってみたが、結果は全て一緒。
見た瞬間に二度と見たくないと思ったモノを何度も見る羽目になった。
一志もいちいち妙なポーズをするな。よけいキモいんだよ。
撮影するまで画面に映っているのはごく一般的な一志なのだが、
撮った瞬間からそこに写っているのは
「一志・のっぺらぼうの成り損ないバージョン」である。
成り損ないってのがポイントだ。何事も中途半端は良くないね、やっぱり。
一方里美さんはと言うと、やっぱり駄目そうだ。溜息ついてるし。
「どうだった?」
諦めて撮影終了した俺達に森口が問い掛ける。
まあ、駄目そうだというのは解ってるだろう。俺達の表情見て。
「全部同じだ」
「こっちも駄目でした……」
「里美さんもあのぐにょぐにょだったの?」
「あれとは違うんですけど……」
そう言って俺と森口に携帯を見せる。
人型の霧とでも言うべきモノが写っていた。
薄い。幽霊を撮ると解ってなければ見逃すかもしれない薄さだ。
「全部コレなの?」
「はい」
「人によるって事なのかな……」
「お前も撮ってみろよ」
「うん。じゃあ二人は一志と霧原さんに携帯渡してきてよ」
里美さんが一志の方に向かったので、必然的に俺は霧原さんのほうへ行くことになる。
「はい、携帯」
「……」
無言で奪われる。今回の不機嫌さは相当だな。
「ねえ、悟」
森口に呼ばれる。
「何だ」
「今画面に一志入ってる?」
ああ、この段階では見えないんだなやっぱり。
まあ見えるんならこんな事する必要ないわけだが。


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