「昨日、撮り直ししなくてよかったですねぇ」
可愛いと言われたのが余程嬉しいらしく、
上機嫌なセンは傘で地面を一定のリズムでカンカン叩きだした。
神社の前辺りまで行くと道が舗装されてないからまた違う音がするんだろうけど。
「これ、昨日撮ったんか？ デパートにおった時？」
センの言葉に、携帯の写真をもう一度覗き込む明日香。
「ああ。ちなみに笑ってるのは演技じゃなくてマジだ。撮る時にセンが……」
「も、もう明さん！ いいじゃないですかそんなことは～！」
声質と表情は上機嫌なままで怒られた。怒ってると言うよりは照れ隠しに近いか？
「昨日なぁ…………ふふっ」
今日香がそうつぶやき、誰も何も言ってないのに下を向いて嬉しそうに微笑んだ。
まず間違いなく昨日の寛とのデートを思い出してるな。なんと幸せそうなことよ。
「今日香さん？ どうしたの急に」
その隣の岩白は、今日香の突然の笑みに困惑した様子。そうか、こいつは知らないんだな。
「あー、今日香な、昨日寛と初デートやってん。そのこと思い出しとんのやろ」
……言おうと思ったことを明日香に奪われた。まあ誰が言ったって一緒か。
「あらまあ」
岩白、オバサン臭い驚き方。もちろん右手は頬に添えて。右手に持ったカバンごと。
「でもそん時になー、うちと明とセンちゃんが居合わせてもうてん」
「クロちゃんも居ましたよね！」
「日永君、場をわきまえましょうよ」
なんで俺だけなんだよ。なんて突っ込む間もなく今日香が続く。
「あれはびっくりしたわ。店出たら棚の向こうで皆しゃがんでるし、クロまでおるし……」
そりゃ驚くよな。ほぼ全員集合だし。岩白が来てたら完璧だったのに。
「明日香さん、クロちゃんはどうやって連れて帰ったんですか？ 自転車だったんですよね？」
「ん？ 籠に入れて帰ったわ。荷物入らんなってもうて、手に持って帰る羽目になったけどな」
その様子を想像する。……か、可愛いかもしれない。
「どどっ、どんな感じで入ってたんですか！？」
俺ですら可愛いと思うんだから、センは既に大興奮だった。
「んーとな。籠の手前側の縁に手ぇ掛けて立ち上がって、ずっとこっち見とったわ。
なんや文句でもあったんやろかいな？」
睨まれたと捉える者も居れば、
「うわぁ、想像しただけで可愛いです！ ずっとこっちをみつめてるなんてぇ！」
と捉える者も居る。俺は後者。
「そーや。クロと言えば昨日も言うたけど、センちゃん、今日うち来るか？ 暇やったら」
「そやな。センちゃん来たらクロも喜ぶ思うよ。センちゃんのこと気に入ってるみたいやし」
「いいんですか！？ 喜んで！」
こいつが来てクロが喜ぶかどうかは怪しいところだが、
呼ばれた上に他に用事がないってんならセンからすれば断る理由はないよな。
可哀想なクロ。
「センが行くんなら日永君もセットじゃないの？」
あれ？
「あはは、そやな。明くんも来られます？ 春菜ちゃんもどう？」
「私もいいの？ じゃあお邪魔させてもらおうかしら」
「明。センちゃんの付属品として、ねつれつだいかんげいしたるわぁ～」
……なんだこの扱い。今日香も普通に『そやな』って。
「お前ら、俺に来て欲しいのか来て欲しくないのかどっちなんだよ」
「大丈夫やて。センちゃんがクロに夢中で寂しい間、うちが相手したるから。にゃっはっは！」
そこまで言うか……と思ったその時、明日香の目つきが鋭くなった。
「……ときに明。あんたテレビゲームはするか？」
「ん？ ちょくちょくやってるけど……」
と言ったものの、そういやセンが来てから手つけてないな。
「ほならそれで勝負しよか。にっひっひ」
「どういうゲームがあるんだ？」
と訊いたところ、今日香が苦笑しつつ答えた。
「いや……うち、一つしかないんですよ。ゲーム」
「それが何かはうちに来るまでお楽しみや」
と言われても、勝負だってんだからだいたい限られてくるよな……
ああでも女の子だし軽めな……パーティゲームとかだろうか？
「じゃあ春菜ちゃん、コンビニんとこで待ってるし」
と今日香。お客三人とも広瀬家の場所を知らないので、そういうことになったのだ。
「ええ。それじゃ、また後で」
いつも通り、また急な石段でお別れ。ただ今日は後でまた会うのだが。
「また後で、春菜さん」
「あーしもた。もうちょいはよう思いついとったら寛も呼べたのになぁ」
ぺちんと額に平手をかまし、残念そうな明日香。それに今日香が反応し、携帯を取り出す。
「あ、呼んでみる？ 昨日うち携帯の番号聞いてんけど」
「おぉ。やるやんか今日香～。にくいねこのこの」
「も、もう……」
可愛いと言われたのが余程嬉しいらしく、
上機嫌なセンは傘で地面を一定のリズムでカンカン叩きだした。
神社の前辺りまで行くと道が舗装されてないからまた違う音がするんだろうけど。
「これ、昨日撮ったんか？ デパートにおった時？」
センの言葉に、携帯の写真をもう一度覗き込む明日香。
「ああ。ちなみに笑ってるのは演技じゃなくてマジだ。撮る時にセンが……」
「も、もう明さん！ いいじゃないですかそんなことは～！」
声質と表情は上機嫌なままで怒られた。怒ってると言うよりは照れ隠しに近いか？
「昨日なぁ…………ふふっ」
今日香がそうつぶやき、誰も何も言ってないのに下を向いて嬉しそうに微笑んだ。
まず間違いなく昨日の寛とのデートを思い出してるな。なんと幸せそうなことよ。
「今日香さん？ どうしたの急に」
その隣の岩白は、今日香の突然の笑みに困惑した様子。そうか、こいつは知らないんだな。
「あー、今日香な、昨日寛と初デートやってん。そのこと思い出しとんのやろ」
……言おうと思ったことを明日香に奪われた。まあ誰が言ったって一緒か。
「あらまあ」
岩白、オバサン臭い驚き方。もちろん右手は頬に添えて。右手に持ったカバンごと。
「でもそん時になー、うちと明とセンちゃんが居合わせてもうてん」
「クロちゃんも居ましたよね！」
「日永君、場をわきまえましょうよ」
なんで俺だけなんだよ。なんて突っ込む間もなく今日香が続く。
「あれはびっくりしたわ。店出たら棚の向こうで皆しゃがんでるし、クロまでおるし……」
そりゃ驚くよな。ほぼ全員集合だし。岩白が来てたら完璧だったのに。
「明日香さん、クロちゃんはどうやって連れて帰ったんですか？ 自転車だったんですよね？」
「ん？ 籠に入れて帰ったわ。荷物入らんなってもうて、手に持って帰る羽目になったけどな」
その様子を想像する。……か、可愛いかもしれない。
「どどっ、どんな感じで入ってたんですか！？」
俺ですら可愛いと思うんだから、センは既に大興奮だった。
「んーとな。籠の手前側の縁に手ぇ掛けて立ち上がって、ずっとこっち見とったわ。
なんや文句でもあったんやろかいな？」
睨まれたと捉える者も居れば、
「うわぁ、想像しただけで可愛いです！ ずっとこっちをみつめてるなんてぇ！」
と捉える者も居る。俺は後者。
「そーや。クロと言えば昨日も言うたけど、センちゃん、今日うち来るか？ 暇やったら」
「そやな。センちゃん来たらクロも喜ぶ思うよ。センちゃんのこと気に入ってるみたいやし」
「いいんですか！？ 喜んで！」
こいつが来てクロが喜ぶかどうかは怪しいところだが、
呼ばれた上に他に用事がないってんならセンからすれば断る理由はないよな。
可哀想なクロ。
「センが行くんなら日永君もセットじゃないの？」
あれ？
「あはは、そやな。明くんも来られます？ 春菜ちゃんもどう？」
「私もいいの？ じゃあお邪魔させてもらおうかしら」
「明。センちゃんの付属品として、ねつれつだいかんげいしたるわぁ～」
……なんだこの扱い。今日香も普通に『そやな』って。
「お前ら、俺に来て欲しいのか来て欲しくないのかどっちなんだよ」
「大丈夫やて。センちゃんがクロに夢中で寂しい間、うちが相手したるから。にゃっはっは！」
そこまで言うか……と思ったその時、明日香の目つきが鋭くなった。
「……ときに明。あんたテレビゲームはするか？」
「ん？ ちょくちょくやってるけど……」
と言ったものの、そういやセンが来てから手つけてないな。
「ほならそれで勝負しよか。にっひっひ」
「どういうゲームがあるんだ？」
と訊いたところ、今日香が苦笑しつつ答えた。
「いや……うち、一つしかないんですよ。ゲーム」
「それが何かはうちに来るまでお楽しみや」
と言われても、勝負だってんだからだいたい限られてくるよな……
ああでも女の子だし軽めな……パーティゲームとかだろうか？
「じゃあ春菜ちゃん、コンビニんとこで待ってるし」
と今日香。お客三人とも広瀬家の場所を知らないので、そういうことになったのだ。
「ええ。それじゃ、また後で」
いつも通り、また急な石段でお別れ。ただ今日は後でまた会うのだが。
「また後で、春菜さん」
「あーしもた。もうちょいはよう思いついとったら寛も呼べたのになぁ」
ぺちんと額に平手をかまし、残念そうな明日香。それに今日香が反応し、携帯を取り出す。
「あ、呼んでみる？ 昨日うち携帯の番号聞いてんけど」
「おぉ。やるやんか今日香～。にくいねこのこの」
「も、もう……」