(有)妄想心霊屋敷

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普通な非日常18 「変じゃ無かったですか?」

2006-11-30 17:55:49 | 普通な非日常
「えぇっと……ああそうそう。
 兄さんに色々助けてもらったから、なんとかなってたんです。
 なんでお父さんがああなっちゃったのかは知らないんですけど……」
「俺も知らん!」
「とにかく、私が中学の三年になる頃に離婚が成立するまで続いてたんです。
 て言うか、逮捕されちゃったんですけどね」
「当たり前だな!」
「それから一年間……いえ、それまでもそうだったんですけど、
 私、人と上手く付き合えなくなっちゃってて。
 酷い時にはお母さんや兄さんにまで非道い事言っちゃったり……」
「気にすんな!」
「それでもお母さんと兄さんは本当に良くしてくれて……
 だから、高校に入ったら頑張ろうと思ったんです。きっかけ、ですね」
いや、よくそんな状況で進学する気になりましたね。しかもちゃんと入学してるし。
俺なんか何も無いのにヒーヒー言ってましたよ入試の時。凄い奴ばっかだな長谷川家。
「でもそんなに上手くいくはずも無くて、結局いつも兄さんとばかり一緒に居たんです。
 そしたら兄さんいきなり『死んじまった!』とか言い出して」
「いやービックリだ!」
ビックリしてる場合じゃないだろ。
「……それから何日かして、いきなり霧原さんに飛び掛られたんです。
 あの時は本当にびっくりしました。叫び声あげる寸前でしたよ」
「ほんっとーにゴメン! あの時はもう嬉しくて嬉しくて」
そりゃあ霧原さんからすりゃ初めて見つけた幽霊仲間ですからね。無理も無いです。
「怖かったけど、私も少し嬉しかったんです。
 身内以外にも同じ境遇の人が居るって解って。だから、あの時は頑張れたんです」
「でも、霧原さんにビビってた以外はごく普通に見えましたけど?」
「そうですか? よかったです。でも、あのあと家で大泣きしちゃったんですけどね」
「映画館の俺並みの泣きっぷりだったな!」
もしかして、あの時の一志の死亡体験談は俺達の目を自分に向けさせる為?
ああでも話振ったのは確か霧原さんだし……
いや、こいつなら誰にも聞かれなくても強引にやりかねん。
……まあいいか。『一志なら何かしらやったに違いない』って事にしとこう。
「本当に変じゃ無かったですか? 遭った次の日に映画に誘った事とか」
「え? うーん……幽霊と、それと普通に会話する集団だし……
 常識なんて麻痺しちゃってるのかもね」
俺は常識人で在りたいぞ森口。
しかし、その説は否定し切れんな。俺もなんとも思わんかったし。
「でも、幽霊とか関係無しに皆いい人で……
 だから、知っておいて欲しかったんです。私の事。
 ……これも変な事かも知れませんけどね」
とびきりの笑顔で締めくくる。
これが変なことだとしても大丈夫ですよ。だとしたら変なのは俺達全員ですから。

「ただいまー」
玄関から聞き覚えのある声がした。……早過ぎないか?
「お財布忘れちゃった。たまに自分でやったらこれだもの……年ってやーね」
帰ってきてそのまま出て行ったのに財布を忘れた?
まさかお袋さん、里美さんに気を使って……
「あ、お母さんちょっと待って。今日は皆お母さんに用があって」
「私に用? 何かしら?」
「携帯で霧原さんの写真を撮って欲しいんだけど……」

「今、画面に入ってる?」
「うん。大丈夫」
「じゃー撮るわよー。はいチーズっ! ……あらまあ」
「どうだった?」
「これ……」
こっちを向いた携帯の画面には……普段通り、まさしく完全な霧原さんが写っていた。
「おお! やったぞ!」
「お母さん凄い!」
「あらあら? 私って凄いのかしら」
文句なしに大成功だ。いやーよかった。
「へえ、これが霧原さん……通りで」
初めて霧原さんを見た森口がこっちを見てニヤニヤする。
「何だよ」
「そろそろ言わなくても解るんじゃないの~?」
……うるせえよ。
逃げるように横を向くと、そこには狂ったようにポーズをとりまくる一志、
そしてニコニコ笑顔、且つ高速でシャッターを切りまくるお袋さんの姿があった。


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