Four Season Colors

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読書のよもやま(2022.07.18)

2022-07-18 | 雑文
「作家との遭遇」沢木耕太郎(新潮文庫)

現代日本のノンフィクション作家を代表する
一人である、沢木耕太郎さんの文庫新刊を見
つけたので購入し読み終える。

本書は井上ひさしを始まりに、時には著者と
の関わりも交え、著作から作家をたどる。

人物像を探るというものの場合、書き手と読
み手は互いに一定程度、対象への興味関心が
必要となる。

自分はまったく小説読みではないので、沢木
さんが取り上げた作家19名のうち、その著
書を読んだことがある作家は2名だけ。

しかも2名とも小説を読んだわけではない。

しかし、ほとんどの作家は名前しか知らない
にもよらず、退屈という感情が湧くことなく
最後まで読み終えた。

元々、沢木さんの文章を読むためという目的
であるので、不思議ではないのだが、それに
してもである。

通り一遍の作品の書評ではなく、作家そのも
のを書く。

それも一生涯を総括するのではなく、表現と
しての作品を軸に、その特徴や個性の源泉を
考察する。

これは中途半端に書評をするよりも難しく、
事前準備も相当であることが伺える。

それがノンフィクションの手法であると言っ
てしまうのは簡単であるが、それを読むに堪
えるものにすることは容易ではない。

押し付けではない、対象と真摯に向かい合う
先に見えてくる考察と論。

ちなみに19名は、井上ひさし、山本周五郎、
田辺聖子、向田邦子、塩野七生、山口瞳、色
川武大、吉村昭、近藤紘一、柴田錬三郎、

阿部昭、金子光晴、土門拳、高峰秀子、吉行
淳之介、檀一雄、小林秀雄、瀬戸内寂聴、山
田風太郎。

無論、作家をよく知っていて著書を読んでい
る方がより深く楽しめることは間違いがない
(だろう)が。

自分のように全然19名を知らなくても、十
分に楽しめてしまう。

現代の若い世代には馴染みのない作家も多い
が、名前を聞いたことがあるくらいの方が、
むしろ興味を惹かれるかもしれない。

とても読みやすいので気軽に読んで、一人で
も気になる作家がいたり、または沢木さんに
興味が沸いて、(他の)作品に繋がれば。

現代も最先端の現代に多い、なんだか浅く説
教臭い、断定系の理解している風の作家論よ
り、断然、こちらをおススメ。

沢木ファンで未読の方も、当然におススメ。


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