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【知財記事】店舗デザインと知的財産権(トレードドレス)

2018年05月30日 08時25分15秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
どんよりした雲が空に漂う今朝の湘南地方です。お昼ごろから雨らしい

さて、昨日までのエントリに関連して、今日はこんな記事

(SankeiBizより引用)
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【高論卓説】店舗デザインと知的財産権 意匠法の早期改正で保護範囲を拡大

先日、特許庁が製品のデザインなどを保護する意匠法を改正し、店舗の内外装についても保護するよう保護範囲を広げることを検討していると報じられた。

(中略)

米国では、店舗の内外装について、「トレードドレス」として保護される。トレードドレスとは、「米国で知的財産として認められている概念で、ロゴマークや製品の形状、色彩構成、素材、大きさといった各種要素を含んだ、全体的・総合的なイメージのこと」とされている。これに店舗の内外装も含まれる。

では、わが国において、店舗の外観などが全く法的に保護されないかというと、以下に述べる通り、不正競争防止法により救済されることがある。

(以下略)
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詳細は原典をご一読いただきたいですが、ポイントとしては、
・現行の意匠法では店舗内外装は保護対象外
・米国では「トレードドレス」として保護され得る
・日本では不正競争防止法での救済に留まっている。
・意匠登録の対象となるよう法改正されれば、立証負担は大幅に軽減されることから保護に資する。
というところ。

正直なところ、商標法にしたって新しいタイプの商標が保護されるようになって久しいし、
意匠法もそれなりにフレキシブルに改正がなされてきた。液晶画面保護なんかはその一例。
頻繁な改正は産業立法の宿命であるところだが、原則としては、やっぱり一定の「剛性」というか「硬さ」も必要ではないかな、と思う。
昨日もこういう趣旨のことを書いたけど、独占排他権を設権することは、その他大勢の自由に制約を課すこと。
一律に「模倣=悪」という短絡的な構図から制度そのものの変更に手を付けると、世の中は息苦しいものになってしまう。

もちろん、世の実状と法規範の乖離、という点については常に意識すべきことだけど、
改正に至るには“現場”での不都合が生じたという点のみでなく、より上位の規範も考慮した上でのバランスのとれた議論が必要。
ここでいう「上位の規範」に、“例えば外国の法制がこうだから”というのは、あてはまらない。

「トレードドレス」に関しては、もうながーい間俎上にあがっているところ。
上記記事で紹介されている「コメダ珈琲店」の事案の他にも、古くはユニクロ対ダイエーとか、最近だと唐揚げ「からやま」「からよし」の件とか、実際に争いになった事案も積み重なってきているところでもある。
登録制度を導入することでの救済可能性向上を図ることには一定の意味がある、とは考える。

ただ、その枠組み、本当に意匠法なのだろうか…?
24条2項が規定されて以降もなお、裁判所と特許庁の「類似」の判断には依然乖離はある(「(修正)混同説」と「創作説」)。
仮にトレードドレスを登録対象とすることになれば、一連の経緯を踏まえれば「混同説」ベースの審査を余儀なくされると考えられる。
裁判所としては大きくブレはないのだろうけど、特許庁としては一の法規範のなかで、保護対象に応じてスタンスを使い分けて審査することになる…?というのはちょっと節操がない気もする。
まあそれを言い出すと、商標法なんか商標の「定義」そのものを拡張しちゃったわけだから、それと比べると大したことない話、かな…?


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