弁理士『三色眼鏡』の 業務日誌     ~大海原編~

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【商標/不正競争】鴨でした ~パロディについて~

2018年01月10日 08時45分04秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
突き抜ける晴天にTOKYOFMから流れる「前前前世」が響き渡る今朝の湘南地方です。

さて、地元(鎌倉)のお父さん友だちが京都出張でこんなのを見つけたそうで。
京都鴨川 鴨サブレ

鳥をかたどったサブレといえば、やっぱり地元鎌倉、豊島屋さんの「鳩サブレー」。

オマージュ?パロディ?パ●リ?
色々な声が聞こえてきそうですが。

いくつかの観点から考察してみたいと思います。

[事実関係]
・「鳩サブレー」は明治生まれ、豊島屋初代が考案。一方「鴨サブレ」は2012年発売。
・「鳩サブレー」「鴨サブレ」とも商標登録を受けている。
・実際の商品としてのサブレの味については過去にも色々なブログで言及されている(これとかこれとか)。
・パッケージについても言及されている。対比写真を挙げているブログもあるので見てみた。
 「鳩サブレー」は黄色の背景に白地の鳩サブレーの形状。左下に花押。
 「鴨サブレ」はオレンジの背景、上部にフランス語「Sable du canard」、その下に鴨の絵と「京都鴨川/鴨サブレ」

[考察]
1.商標法的には?
 上述の通り、いずれも登録商標の使用。
 後発の「鴨サブレ」の審査経過においても、特段「鳩サブレー」の存在が取り沙汰された跡は無い。
 特許庁としては「非類似」「混同のおそれなし」と判断した、ということ。
2.不正競争防止法的には?
<「鴨サブレ」の名称について>
(1)「鳩サブレー」は周知商標と言えるか?→種々立証は必要だが、その可能性は高いと思われる。
(2)「鴨サブレ」の表示は「鳩サブレー」と類似するか?
 →5音節中語頭の2音が相違し、称呼的には類似とは言えない。
 →外観上「鴨サブレ」と「鳩サブレー」、一文字目の「鴨」と「鳩」は紛らわしい、ということもできなくはないが、ちょっと苦しいか。
 →観念的に「鴨」と「鳩」は明確に相違
 …基本的には、商品等表示として非類似の範疇。よって混同可能性の検討に及ぶまでもなく2条1項1号非該当。2号(著名表示冒用行為)は、さすがに無理。
<商品形状・パッケージについて>
(1)「鳩サブレー」の商品形状は周知と言えるか?→議論あるが、可能性はあり。
(2)各形状/パッケージは類似するか?→外観上明白に区別がつくものであり、類似とは言えない。
 …形状/パッケージとしても非類似。

<追記:混同可能性について>
・いずれも地場のお土産菓子であり、商圏が異なる。
・何らかの資本的組織的関連性を想起させるような特段の事情もない。
※商品コンセプトやアイデア(鳥の形状を模した焼き菓子)について保護されるわけではない。
※大前提として、「模倣」それ自体が禁じられているわけではない(だからこそ“法的にNGな模倣”が敢えて法定されている)。

法律上の規範からは、特段の問題はない。
あるのは、もっぱら
・商道徳上の規範
・フリーライド的な商法を老舗が行うことの「美学」の規範
と思われる。
この辺りは、法的な強制力ではなく市場の選択に委ねられるべきもの。

[所感]
個人的には、パロディが全く認められない世の中ってつまらないよな、と思ったりしています。
諸外国ではパロディが認められる要件が法定されたり判例規範として確立していたりします。
日本でも、“ここまではセーフ”みたいな境界線がある程度見えると、窮屈感はなくなるのかもしれません。

でも、こんな「総監視人」的社会だと、パロディを規範化しちゃうと却って自由度は損なわれ、
硬直性が高くなってしまうのかなぁ、と思います。

硬直的なルール作りよりは、“うまいことやりおった、しゃーないなー”的な許容ラインが事例蓄積とともに醸成されていくのが、結果的に需要者側-供給者側双方にとってプラスになる。そういう気がします。
その意味では豊島屋さんは太っ腹だと思うし、井筒八ッ橋本舗も品質的にひけをとらない商品を異なる商圏で出しているという点で、適度な関係が成立していると感じます。
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