弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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韓国商標登録出願「TOKACHI」の件

2014年10月30日 17時39分13秒 | 実務関係(商・不)
さて。お待たせしました。
標記の件につきひとまず情報を整理します。

1.出願の内容
 【出願番号】4020140012796
 【出願日】 2014.02.26
 【出願人】 YOO, JAE KYUN (個人の出願のようです)
 【商標】  (下記)


 【区分及び指定商品】※ネットの翻訳サイトでの翻訳ですので多少の不正確は否めません。ご了承ください。
  29 牛乳,油加工食品
  30 菓子,ガム,パン,チョコレート,キャンディ,韓菓(ハングァ)

2.ステータス
 2014.09.04付で「出願公告決定」が出されています。
 これは、審査官による実体審査をクリアしたことを意味します。
 公告から2月の間、誰でも異議申し立てをすることが可能です。
 またいわゆるノミナルでの申し立て(理由は追って補充)の形も可能です。
 補充期間は30日+1ヶ月の延長が可能です。

3.情報整理
(1)ヒストリをみると、本願に対しては2014.05.27に
  「情報提供がなされた旨の通知」が発せられているようです。
  「情報提供」とは、“この出願にはこれこれこういう拒絶理由があるから登録されるべきでないよ”
  という情報を特許庁に対して書面で提出する手続です。
  その内容、提出者などはファイル閲覧を行わなければ確認することはできませんが、
  審査においてはこの情報提供における主張は採用されなかったことになります。

(2)韓国商標法、審査基準を確認したところ、登録要件については下記の記載が認められます。
 <商標法第6条第1項:自他商品又は役務の識別力を有すること> ※日本の商標法の第3条第1項に相当。

 “自他商品又は役務の識別力”が認められない例として、以下が規定されています。

  <3号:商品の産地・品質などを普通に使用する方法で表示する標章のみからなる商標>
   →その審査基準(第8条)において、下記の記載が認められます。
   
   本号に規定する、その商品の「産地表示」とは、当該地域の気候、土壤等の地理的条件等と
   関連して当該商品の特性を直感することができる地域を表示するものであって、当該商品が
   当該地方において過去に生産されていた場合や現実に生産されている場合はもちろん、その
   地方において生産されているものと一般需要者に認識され得る場合にも、これに該当するも
   のとみる。

   そして、産地表示の性格を有する商標の例として、指定商品「眼鏡」について商標「VIENNA」
   が挙げられています。 ☆つまり、外国の地名を排除するものではありません。

   →さらに審査基準には、以下の記載も認められます。

   商品の産地(販売地を含む)を表示することによって商品の価値又は信用を増加させる場合、
   当該産地以外で生産、販売される商品に、その産地を表示することによって商品の品質の誤認
   や混同を誘発するおそれがあるときには、法第7条第1項第11号の規定を適用する。
   (注:「7条1項11号」=商品の品質を誤認させるか又は需要者を欺瞞するおそれのある商標
     ※日本の商標法の第4条第1項第16号に相当。)


  <4号:顕著な地理的名称・その略語又は地図のみからなる商標>
   →その審査基準(第9条)において、下記の記載が認められます。

   法第6条第1項第4号(以下“本号”という。)に規定する「顕著な地理的名称・その略語」
   とは、国家名、国内の特別市、広域市又は道の名称、特別市・広域市・道の市・郡・区の名称、
   著名な外国の首都名、大都市名、州又はこれに相当する行政区域の名称、そして顕著に知られて
   いる国内外の古跡地、観光地、繁華街等の名称等と、これらの略称をいう。

   そして、その例示として以下が挙げられています。

   ○顕著な地理的名称である場合:
    핀란디아(フィンランディア),OXFORD,VIENNA LINE,
    HEIDELBERG,뉴욕(ニューヨーク),MANHATTAN,
    GEORGIA,LONDONTOWN,BRITISH‐AMERICAN,
    INNSBRUCK(인스브룩インスブルック),HALLA(한라漢拏),
    종로학원(鍾路学院),NIPPON EXPRESS


4.現時点でのコメント
(1)そもそも本願が実体審査をパスしたこと自体が、謎です。
   上記外観態様であれば、「TOKACHI(=十勝)」を普通に使用する方法で表示の範疇と考えます。
   指定商品との関係も関連性が高いものがほとんどです。

   出願人には出願人なりの意図があるとしても、こと審査については、
   WTO加盟国の審査姿勢として極めて問題があるように見受けられます。

(2)現状取りうる手続としては、「異議申し立て」です。
   期限は間近に迫っています(2014.11.04です)。
   さしあたり申し立て手続きのみでも早急に行う必要があります。
   十勝と関わりを持たせていただいている身として、上記手続が期限内に速やかに行われることを
   切に願います。

(3)歴史を振り返れば、日本でも同様なことが行われていた、との指摘もあろうかと思います。
   しかし、「だから甘受すべし」という結論にならないことは明らかです。
   地域振興の基本的かつ根源的なよりどころである地域ブランドが蹂躙される状況は、
   完全に排除しなければなりません。

以上、メディア掲載の情報、および韓国特許庁およびKIPRISから入手可能な情報から
まずはまとめました。
本件は動きがあれば逐次取り上げたいと思っています。

  
   
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