弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(その後シリーズ)】「勧進帳」その後

2023年03月08日 08時48分57秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
快晴の@湘南地方です。
快晴なれど、今日は一日内仕事…なので、お散歩を兼ねて朝からお買い物を少しだけしてきました
(FBご覧の方はご存じの通り)。

さて、ほぼ一年前にこんな記事のエントリをしておりました。
gooブログって、一年前にどんな投稿をしていたかを教えてくれて、ご丁寧に振り返り投稿しませんか?とレコメンドまでしてくれる。
とはいうものの昨日はその余裕がなく、今に至る。

というわけで今日は、本件のその後の話。

結論として、不服審判は結局認められず、登録には至っていない。
審決における判断を一部以下に引用。

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請求人は、(a)「勧進帳」をはじめとする歌舞伎十八番は、市川宗家専有の演目であり、歌舞伎の「勧進帳」と言えば、市川宗家の歌舞伎の演目を示すものであることが、歌舞伎ファンなどの一般需要者の間では著名な事実であること、(b)「勧進帳」は、請求人等が180年以上の長期にわたって指定役務において使用した結果、請求人等の業務に係る役務であると認識されるほどの著名性を獲得するに至っており、本願商標は商標法第3条第2項の規定により、登録されるべきものである旨を主張する。
たしかに、「勧進帳」は、演目の名称であって、請求人等に係る役者である七代目市川團十郎が、請求人等のお家芸として歌舞伎十八番と制定したものの1つと認められる。
しかしながら、請求人提出に係る全証拠をみても、専有とされているのは、歌舞伎十八番の上演に際する「荒事」といわれる荒々しく誇張した演出様式の一種であって、本件演目については、請求人等のみが、その興行の企画又は運営や上演することができる専有の演目であるとの事実は確認できない。
また、本件演目の興行において、請求人等に係る役者が、その主役を演じているが、請求人等以外の屋号の役者によっても、主役及び脇役が演じられ、さらに、歌舞伎以外の劇団によっても本件演目が公演されている。
そうすると、本願商標は、その指定役務との関係において、これに接する取引者、需要者が、演目の名称を表示したものであることを超えて、その役務の出所を識別することは困難な状況にあり、特定の出所を想起することはないというべきである。
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3条2項の主張をしたけれども、上記青字部分の認定により、結局は独占性は認められなかった、というもの。
そりゃあ確かに、歌舞伎という表現スタイル以外でも「勧進帳」は披露されることがあるわけで、
・一当事者に独占を認めるべき事情 と
・独占を認めたことによる弊害 とを比べたら 後者が勝ってしまう状況と理解できる。
結論としては妥当かな、と思う。


それにしても…恥ずかしながら、この記事を書くにあたって初めて勧進帳のあらすじを知った次第。。
文化的営みが不足しているなぁ。年齢相応の教養を身につけたいと思う今日この頃。


コメント
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