弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【韓国商標】「TOKACHI」異議申立 認められる

2015年06月12日 08時11分02秒 | 知財記事コメント
おはようございます。
今朝はお客様のFB投稿を受けて、記事コメント。

(「どうしんウェブ」より引用)
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道が異議「TOKACHI」出願 韓国、商標登録認めず


道は11日、韓国特許庁にローマ字表記の「TOKACHI」の商標登録が出願され、道などが異議を申し立てていた問題で、同特許庁が商標登録を認めない決定をしたと発表した。商標登録されていれば、韓国内で「TOKACHI」表記のある商品を販売した場合、商標権の侵害で訴えられる可能性があった。

 道によると、同特許庁が出願を認めないと決定したのは4月29日付。韓国の出願者が6月5日の期限までに不服審判請求を行わなかったため、同日にこの決定が確定した。

 道は10日に結果を確認した。韓国商標法には「著名な地名の商標登録は受けられない」とあり、同特許庁が「十勝」を広く知られる地名と判断したとみられる。
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(引用終わり)


条約上一定の縛りはあるものの、国によって制度は異なります。
そのため国によって“外国の地名が出願された場合の取扱いをどうするか”については、
必ずしも画一的ではありません。

異議決定本文を確認していないので上記記事に依存しますが、
「著名な地名の商標登録は受けられない」という規定は、韓国商標法の以下の規定(6条1項4号)を指していると思われます。
※ちなみに、日本の商標法にはこの「4号」に該当する規定はありません。
 3号を広く解釈するか、又は6号(韓国の7号)で処理する建付けです。


第6条(商標登録の要件)次の各号の一に該当する商標を除いては、商標登録を受けることができる。
 1.その商品の普通名称を普通に使用する方法で表示した標章のみからなる商標
 2.その商品に対して慣用する商標
 3.その商品に産地・品質・原材料・効能・用途・数量・形状(包装の形状を含む。)・価格・生産方法・加工方法・使用方法又は時期を普通に使用する方法で表示した標章のみからなる商標
 4.顕著な地理的名称・その略語又は地図のみからなる商標
 5.ありふれた姓又は名称を普通に使用する方法で表示した標章のみからなる商標
 6.簡単でありふれた標章のみからなる商標
 7.第1号から第6号まで以外に需要者が誰の業務に関連する商品を表示するものかを識別することができない商標

ここで、審査基準によれば、4号の「顕著な地理的名称・その略語」について以下の記載が認められます。
① 法第6条第1項第4号(以下“本号”という。)に規定する「顕著な地理的名称・その略語」とは、
 国家名、国内の特別市、広域市又は道の名称、特別市・広域市・道の市・ 郡・区の名称、
 著名な外国の首都名、大都市名、州又はこれに相当する行政区域の名称
 そして顕著に知られている国内外の古跡地、観光地、繁華街等の名称等と、これらの略称をいう。

「TOKACHI(十勝)」が“著名な外国の…行政区域の名称”と解釈されたのか、
或いは“顕著に知られている…観光地”と解釈されたのか、ちょっと興味がありますが、
いずれにしろ、本来的には審査段階で看過される事案では無いように思いますよね。。。

今回の「TOKACHI」は何とかまっとうな結論に落着しそうですが、
他にも「HIDAKA」や「KUSHIRO」など、横取り的に権利取得されている事例が
複数存在します。

ことは地名の話だけではありません。
北海道を代表する菓子メーカーのハウスマークが、やはり外国で不正取得されてしまった例もあります。
世の中は善意の人ばかりではないです。
転ばぬ先の知的財産。
有名になったときに、思わぬところで(しかも“合法的に”)邪魔をされてしまうこともあります。
ビジネスがグローバル化、ボーダレス化すればするほど、
否応なくケアしなければならないことも増えてきます。
予算制約もある中、どう優先順位をつけて知的資産を守っていくか。
そのことをお客様と一緒に考えていきたいと思っています。
コメント
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