たぶん2017年のブログです
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小倉清さん、村田豊久さん、小林隆児さんの『子どものこころを見つめて-臨床の真髄を語る』(2011・遠見書房)を読みました。
2011年の本ですが、なぜか読みそびれていて、今回、やっと読みました。
いい本です。
本の帯に、「発達障碍」診断の濫用は逆に子どものこころを置き去りにし、今や脳は見てもこころは見ない臨床家がどんどん産み出されている、とあるのですが、そういう現実を危惧している3人の児童精神科医による鼎談です。
こころを見ない、とは、子どもの問題行動の原因を、心理テストや脳波を見ただけで診断をしてしまう危うさを指摘していて、もっともっと問題行動の背景や理由、気持ちや考えに目を向けないと真の診断にはならない、と警告をしています。
それはある意味で、子ども一人一人の個性を本当の意味で尊重したうえでの診断ということになりそうです。
また、そうした考えから、精神医学は自然科学より社会科学に近い、とか、精神医学は人間学、といった発言が出てきますが、まったく頷けます。
さらに、印象に残ったのが、臨床の教育は徒弟制度、という発言。
師匠の技を間近に見ることで成長していくしかない、と述べられています。
よく臨床家は職人だ、と言われますが、同じ意味だと思います。
昔、調査官の後輩が「職人としての調査官」という論文を書いたのですが、先見の明があったな、と感心します。
いずれにしても、エヴィデンスやDSMだけでは十分ではない、臨床の奥深い世界を垣間見ていくことが重要になりそうです。
ふだんからのケース検討やケース研究での学びを大切にしながら、説得力のある、質の高い臨床の力をつけていきたいなと思います。(2017?)
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2024年初夏の追記です
子どもの気持ちにきちんと目を向けることが、子どもの個性を本当に尊重することになる、というところは大切だな、と思います。
そしてそれは児童精神科医療だけでなく、さらには子育てや教育の分野にも共通するのではないかと思います。
とはいえ、子どもの気持ちにきちんと目を向けるということは、口でいうほど簡単なことではありませんし、なかなか至難のわざです。
じーじがふりかえってみても反省ばかりです。
さらに努力をしていかなければなりません。 (2024.6 記)