インプロヴィゼーションの彼方に

人生ヨウスルニインプロヴィゼーション

蹴りたい背中 / 綿矢りさ

2005-04-20 22:10:13 | 今日の一冊
最年少芥川賞W受賞で話題となった時ギャルっぽい方金原ひとみ作『蛇にピアス』はわりとすぐに読んだけど、もう一方の清楚系綿矢りさ作『蹴りたい背中』をようやく読んだ。激シブにも文藝春秋掲載版を電車で広げて。文藝春秋には受賞2作品とも全文のって780円だったからね。安すぎ。
さて内容は女子高校生の青春思春期恋愛の中に潜むソフトででも抑えきれない、密かな禁断のサディズムにも若干の興奮をともない、かなり面白かった。なにをかくそう俺は主人公と同じように高校のときグループとかが嫌いでぶつぶつと文句を並べながらも、でも周りとどうにかうまく笑って、周りにもそこそこの人気を得てなんとか生き抜いたタイプである。なんだかんだ恋もして。だからこの『蹴りたい背中』に綴られた言葉や描写は、とにかく懐かしかった。その懐かしさが不思議と今嬉しい感じ。周囲に無関心を装いながらそれ自体が周囲に関心持ちすぎな寂しがりやな自分に気づこうともせず、周りのせいにしてどんどん惨めにとか、身体の細部まで高校のころ内部に抱えていたイメージを喚起させてくれた。内部だけでなく、他人の息遣いとか視線とか、幾分セクシャルな細かな描写も、今ではなくしてしまった高校生のころの視点でイメージできてなんともいえないいい気分になれました。ああ青春。読んでいる時にipodでクラムボンやMO'SOME TONEBENDERという切なる青春を心に映写してくれるPOPを服用したため、その効能は何倍にも膨れ上がり体が震えました。オススメ。