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論文)オーキシンシグナルと光形態形成シグナルに応答する因子

2011-01-18 23:10:00 | 読んだ論文備忘録

Misregulation of the LOB domain gene DDA1 suggests possible functions in auxin signalling and photomorphogenesis
Mangeon et al.  Journal of Experimental Botany (2011) 62:221-233.
doi:10.1093/jxb/erq259

LATERAL ORGAN BOUNDARIES DOMAINLBD )遺伝子ファミリーはシロイヌナズナに43種類存在し、DNA結合活性を示すLOBドメインを持つ植物特異的な転写因子をコードしている。この遺伝子ファミリーの中には植物の発生過程に関与しているものが幾つか存在しているが、多くの遺伝子については機能が未知である。米国 カリフォルニア大学リバーサイド校植物細胞学センターSpringer らは、LBD 遺伝子のうちのLBD25 (At3g27650、ASL3 としても知られている)について機能解析を行なった。この遺伝子のプロモーター領域にレポーター遺伝子としてGUS を繋いだコンストラクトをシロイヌナズナに導入し、発現部位を調査したところ、葉の維管束、胚軸の基部、根端以外の根、がく片の維管束、柱頭、胎座、花粉粒、花の基部で発現していることがわかった。また、芽生えのオーキシン処理、暗黒処理によって発現量が減少することがわかった。このことから、本遺伝子を新たにDOWN IN DARK AUXIN1DDA1 )と命名することにした。DDA1 遺伝子のイントロンにT-DNAが挿入されて発現量が低下したdda1-1 変異体芽生えは、オーキシンによる根の伸長阻害と側根形成の程度が野生型よりも低く、オーキシン感受性が低下していた。オーキシン応答の抑制因子であるAux/IAAタンパク質IAA17の機能獲得変異体axr3-1 ではオーキシン処理によるDDA1 転写産物量の減少が見られず、オーキシンによるDDA1 転写産物量の減少にはAux/IAAタンパク質の分解が必要であると考えられる。暗所で育成したdda1-1 変異体芽生えの胚軸は野生型よりも短くなるが、長日条件で育成すると野生型よりも僅かに長くなった。光形態形成に関与しているbZIP型転写因子HY5の変異体hy5-1 の芽生えではDDA1 の転写産物量が減少しており、HY5はDDA1 の正の制御因子として機能していると考えられる。ただし、DDA1 遺伝子プロモーター領域にはHY5結合サイトが見られないことから、この制御は間接的なものであると考えられる。dda1-1 変異体ではDDA1 の発現量が野生型よりも減少しているが、オーキシン処理や暗黒処理をすることによって野生型とは逆に転写産物量が増加した。この転写産物量の増加はスプライシング効率の変化によるものではなく、原因は不明であるが、dda1-1 は高形質(hypermorphic、遺伝子機能の増加を引き起こす)な対立遺伝子であると考えられる。DDA1にグルココルチコイド受容体(GR)を融合したタンパク質(DDA1-GR)を恒常的に発現させたシロイヌナズナ芽生えはデキサメタゾン(DEX)処理によってオーキシンに対する感受性が低下することから、DDA1はオーキシンシグナルの負の制御因子として機能していると考えられる。DDA1-GR を発現させた芽生えはDEX処理によって暗所での胚軸の伸長が抑制されることから、DDA1 は光形態形成において胚軸伸長を抑制する作用がある。以上の結果から、DDA1 は光とオーキシンの両方のシグナル応答に関与する転写因子であると考えられる。

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