Normal growth of Arabidopsis requires cytosolic invertase but not sucrose synthase
Paul Barratt et al. PNAS (2009) 106:13124-13129.
doi:10.1073/pnas.0900689106
ショ糖が植物細胞において代謝される際には、ショ糖合成酵素(SUS)かインベルターゼ(INV)により単糖に分解される。SUSはショ糖をフルクトースとUDPグルコースに可逆的に変換する酵素で、シロイヌナズナにはアイソザイムが6つ存在する。INVはショ糖をグルコースとフルクトースに加水分解する酵素で、シロイヌナズナには細胞内局在(液胞、細胞質、細胞壁)の異なるアイソザイムが9つ存在する。SUSによる糖代謝はATPの消費が少なく、フィードバック制御による調節を受けることから、INVによる糖代謝よりも重要ではないかと考えられてきた。このことを検証するために、ジョン・イネス・センターのSmith らのグループは、シロイヌナズナのSUSのうち篩部で発現しているSUS5とSUS6を除く4つを発現抑制した四重変異体(sus1/sus2/sus3/su4 )を作出して解析を行なった。しかし、この変異体は正常に成長/繁殖し、INV 遺伝子の発現増加やヘキソースリン酸やUDPグルコースのプールサイズの変化は見られなかった。そこで、細胞質局在の2種類の中性/塩基性INV(At1g35580、At4g09510)を発現抑制した変異体を作出して解析を行なった。それぞれのINVの単独変異体cinv1 とcinv2 は土耕栽培条件下において野生型と同等であったが、cinv1/cinv2 二重変異体は開花・結実は見られるが、成熟個体は野生型に比べ小さくなった。また、二重変異体の芽生えはシュートの成長は正常だが根の成長は極端に悪かった。二重変異体の根の伸長領域の細胞は肥大して潰れやすく、中心柱、内皮、皮層の細胞分裂に異常が見られた。根の中性INV活性は野生型よりも4割程度低下していた。これらの結果から、細胞質INVによるショ糖分解は非光合成細胞における糖代謝の主要な経路であると考えられる。
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