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論文)概日時計制御因子によるジャスモン酸シグナルの日変化

2012-08-13 09:39:40 | 読んだ論文備忘録

TIME FOR COFFEE Represses Accumulation of the MYC2 Transcription Factor to Provide Time-of-Day Regulation of Jasmonate Signaling in Arabidopsis
Shin et al.  The Plant Cell (2012) 24:2470-2482.
doi:10.1105/tpc.111.095430

シロイヌナズナTIME FOR COFFEE(TIC)は概日時計のリズムの振幅の維持に関与している。TICタンパク質は核に局在するが、特徴的なドメインは見出されておらず、生化学的機構は明らかとなっていない。ドイツ マックス・プランク植物育種学研究所Davis らは、TICタンパク質と相互作用をするタンパク質の探索を行ない、MYC2タンパク質がTICタンパク質と物理的相互作用をすることを見出した。MYC2はジャスモン酸(JA)シグナル伝達に関与する因子であり、JAによる芽生えの根の成長阻害に対して、myc2 機能喪失変異体はJA感受性が低下し、MYC2 過剰発現形質転換体は感受性が高まり根の伸長が強く阻害される。tic 機能喪失変異体芽生えはJA処理に対してMYC2 過剰発現個体と同じような表現型を示して根の伸長が阻害された。tic myc2 二重変異体芽生えのJAに対する応答性はmyc2 変異体と同等であり、JAによる芽生え根の伸長阻害においてmyc2 変異はtic 変異の上位に位置している。tic 変異体はトマト斑葉細菌病菌(P. syringe pv tomatoPst )DC3000)の感染に対する感受性が高く、tic myc2 二重変異体はmyc2 単独変異体と同様に高い抵抗性を示した。Pst DC3000はJA-Ileと構造が類似したコロナチン(COR)を生産してホストのJAシグナルを活性化することでホストの防御応答を抑制している。よって、tic 変異体はJAに対する感受性が高く、TICはJAシグナルを負に調節することでPst DC3000の感染を抑制すると考えられる。tic 変異体のJA応答性を分子レベルで解析するために、マーカー遺伝子として、早期応答遺伝子(JAZ5LOX3 )、傷害応答遺伝子(VSP2TAT )、病害応答遺伝子(PDF1.2PR4 )のJA処理後の発現量変化を見た。myc2 変異体では早期応答遺伝子と傷害応答遺伝子の発現誘導量が野生型よりも低く、病害応答遺伝子の発現量が増加するが、tic 変異体では早期応答遺伝子の発現量は野生型と同等であり、傷害応答遺伝子の発現量は野生型と比べて大きく増加、病害応答遺伝子の発現増加は野生型と比較するとごく僅かであった。よって、TICは傷害応答遺伝子の発現を抑制し、病害応答遺伝子の発現を促進するものと考えられる。tic myc2 二重変異体でのこれらの遺伝子のJAによる発現誘導の解析から、JAZ5LOX3TAT の発現はmyc2 変異が上位にあり、VSP2PR4PDF1.2 の発現については部分的にmyc2 変異が上位にあることがわかった。以上の結果からTICはJAシグナル伝達に対して負の作用を示し、この作用にはMYC2が必要であることが示唆される。また、tic 変異によるJA応答性の変化は概日時計の欠損の結果生じたものではないと考えられる。TICとMYC2はお互いの発現制御をしていなかったが、tic 変異体でMYC2 を過剰発現させると野生型でMYC2 を過剰発現させた場合よりもMYC2タンパク質量が大きく増加することが判った。MYC2タンパク質の分解にはプロテアソームが関与しており、TICはこの過程に関与していると思われる。MYC2 の発現は概日時計による制御を受けており、夕方に発現のピークが見られた。MYC2 過剰発現個体ではMYC2 転写産物が恒常的に存在するが、MYC2タンパク質量は概日変化し、日中に多く、夜間に減少した。MYC2タンパク質量は光シグナルによって制御されているのではなく、概日時計によって転写過程と転写後の過程による制御がなされていると考えられる。野生型シロイヌナズナにPst DC3000を明け方もしくは夕方に感染させると、明け方に感染させた場合のほうが菌の増殖量が多くなるが、tic 変異体で同様の試験を行なうと、この差が見られなくなった。JA処理によるJAZ5 の発現誘導は明け方に高くなっており、JA処理によるMYC2 発現の日変化も同様のパターンを示した。しかしながら、tic 変異体ではJA処理によるJAZ5 の発現量に日変化は見られず、常に高い状態を示した。よって、概日時計はTICを介してJA応答性の日変化をもたらしていると考えられる。JA応答性の日変化をもたらす因子として、JA受容体であるCOI1 の発現量を見たところ、COI1 転写産物量は周期変動し、明け方に高いことがわかった。tic 変異体ではCOI1 の発現に日変動が見られないことから、COI1 の発現はTICを介して概日時計による制御を受けていると考えられる。tic myc2 二重変異体においてもCOI1 発現の日変化が見られないことから、tic 変異体でのCOI1 発現量の変化にMYC2は関与していないと考えられる。

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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-08-14 11:11:39
はじめまして。
いつも拝見させていただいます!!

どうしてこの論文をよもうと決めましたか??
Unknown (ARA MASA)
2012-08-17 19:41:56
ブログを閲覧していただき有難う御座います。
特に深い意味はなく、面白そうなので読んでみて、面白かったからブログに書いた、というのが正直なところです。
この分野の専門家という訳ではありません。
Unknown (Unknown)
2012-08-19 19:19:43
専門として、何を研究されているのですか?
Unknown (ARA MASA)
2012-08-20 06:07:13
特にこれといった専門分野はないのですが、強いて言うならば、バイケイソウの繁殖生態学的研究でしょうか。

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