goo blog サービス終了のお知らせ 

Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)シクロフィリンAによるオーキシン輸送制御を介した側根形成制御

2015-03-12 20:10:22 | 読んだ論文備忘録

The cyclophilin A DIAGEOTROPICA gene affects auxin transport in both root and shoot to control lateral root formation
Ivanchenko et al.  Development (2015) 142:712-721.

doi:10.1242/dev.113225

シクロフィリンAは、ポリペプチド内のプロリンのアミド結合をシスからトランスヘ異性化する活性(PPIase)を有したタンパク質で、免疫抑制剤のシクロスポリンAの受容体としても知られている。トマトのPPIaseの変異体diageotropicadgt )の最も顕著な表現型として側根原基形成の欠失が見られることから、高等植物においてシクロフィリンAはオーキシンによる成長制御と関連していると考えられている。米国 オレゴン州立大学Ivanchenko らは、オーキシンレポーターDR5:GUS によるオーキシンシグナルの観察から、トマトdgt 変異体では維管束でのDR5 シグナルが完全に消失し、静止中心やコルメラでのシグナルは野生型よりも強くなっていることを見出した。野生型植物をオーキシン輸送阻害剤のNPAで処理すると維管束のシグナルが消え、IAA処理をすると維管束でのDR5 活性が増加するが、dgt 変異体ではそのような変化は見られなかった。野生型植物もdgt 変異体も分裂組織を切除することで側根形成が誘導されるが、野生型と比較するとdgt 変異体の側根でのIAA2:GUS レポーターの発現が維管束で弱く、周縁部組織で強くなっていた。dgt 変異体の根は重力刺激に応答せず、IAA2:GUS の不均等発現も起こらなかった。したがって、dgt 変異体の根端部はオーキシンレポーターの発現パターンに異常が見られ、これはオーキシンの極性輸送が妨げられているために生じていると考えられる。dgt 変異体の根の分化領域では側根原基の誘導もDR5 シグナルも観察されなかった。DGT:GUS は根、子葉、葉の維管束で発現しており、側根原基では原基形成の初期に発現が見られた。DGTタンパク質は核と細胞質に局在していた。シロイヌナズナのSOLOTARY-ROOT(SLR)/IAA14のトマトオーソログのEとDGTの両方が機能喪失したdgt e 二重変異体は、側根形成が部分的に回復したが、形成された側根の成長は野生型よりも遅かった。野生型植物とe 変異体はIAA処理をすることで根端部の近くでも側根原基が形成されるが、dgt 変異体やdgt e 二重変異体では形成されなかった。側根はシュートから供給されるオーキシンによって成長が促進されることから、dgt 変異体の台木に野生型のシュートを接いだところ、根の発達が改善し、内鞘細胞での不均等分裂や維管束でのDR5 シグナルが見られるようになった。野生型シュートを接いだdgt 変異体の根でDGTは検出されないことから、dgt 変異体の台木での側根形成の回復はDGTタンパク質が根へ輸送されたことによるものではない。dgt 変異体でのオーキシン極性輸送を見たところ、根-シュート接合部(基部)から根端部への輸送は増加しており、根端から基部への輸送は減少しているとことがわかった。よって、dgt 変異体の根端は側根形成に関与している維管束細胞へのオーキシン供給能力が低下していると思われる。dgt 変異体の葉から調製したプロトプラストは野生型のものよりもオーキシンの排出量が多いことから、DGTは細胞レベルのでのオーキシン極性輸送の負の制御因子であることが示唆される。DGTはPINタンパク質によるオーキシン輸送を負に制御しており、ベンサミアナタバコでDGTPIN1 を同時に発現させるとPIN1の局在が細胞膜から核表面へ移行し、DGTは細胞表面の局在が増加した。このDGTによるPIN1の内部移行がオーキシン輸送の低下をもたらしていると考えられる。dgt 変異体根端部でのPIN 遺伝子の発現を見たところ、PIN1aPIN1b の発現に差は見られなかったが、PIN2 の発現量は野生型よりも低くなっていた。また、dgt 変異体でのPINタンパク質の局在を観察したところ、PIN2タンパク質量が全体的に減少し、細胞膜上の局在比が高くなっていた。よって、dgt 変異体ではPIN 遺伝子の発現とPINタンパク質の細胞膜上の局在に変化が生じていることが示唆される。以上の結果から、DGTは極性輸送によるオーキシン極大形成に関与することで側根形成を制御していると考えられる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 論文)雄ずいの発達過程を制... | トップ | 学会)第62回生態学会大会... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読んだ論文備忘録」カテゴリの最新記事