Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)WRKY75による花成時期制御

2018-01-31 22:44:06 | 読んだ論文備忘録

Transcription Factor WRKY75 Interacts with DELLA Proteins to Affect Flowering
Zhang et al. Plant Physiology (2018) 176:790-803.

doi:10.1104/pp.17.00657

シロイヌナズナWRKY転写因子は、ストレス応答や発生過程において重要な役割を演じている。最近の研究から、WRKYタンパク質が花成制御にも関与していることが報告されており、WRKY71はFLOWERING LOCUS TFT )やLEAFYLFY )の発現を直接活性化し、WRKY12とWRKY13は短日条件での花成時期制御において正反対に作用している。中国科学院 西双版納熱帯植物園Yu らは、花成時期を指標にして、WRKY T-DNA挿入変異体集団およびRNAi系統のスクリーニングを行なった。その結果、wrky75 変異体は対照と比較して花成が遅延することを見出した。また、恒常的にWRKY75 を発現させた系統は花成時期が早くなった。これらの結果から、WRKY75 は花成時期を制御していると考えられる。WRKY75 過剰発現系統ではFT の発現量が増加しており、wrky75 変異体では減少していた。WRKY75 プロモーター制御下でGUSを発現させてWRKY75 の発現組織を調査したところ、FT の発現部位と同じ維管束細胞での発現が観察された。よって、WRKY75FT の発現を活性化することで花成を促進しているものと思われる。FT 遺伝子プロモーター領域にはWRKYタンパク質が結合するW-boxエレメントと推定される配列がいくつか見られた。そして、WRKY75がFT 遺伝子プロモーター領域に結合し、FT の発現を正に制御していることが確認された。FT 過剰発現系統は花成時期が早くなるが、wrky75 変異を導入しても花成時期の変化は見られなかった。一方、WRKY75 過剰発現系統にft 変異を導入すると花成時期が遅延してft 変異体と同等になった。これらの結果から、WRKY75はFT の上流で作用し、FT に依存して花成時期を正に制御していることが示唆される。各種アッセイから、WRKY75はDELLAタンパク質と物理的に相互作用をすることが確認された。また、ベンサミアナタバコを用いた一過的発現解析から、DELLAタンパク質のGAIとRGL1がWRKY75の転写活性を抑制することが確認された。WRKY75RGL1 を過剰発現させた系統を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR解析から、ジベレリン(GA)処理はWRKY75のFT 遺伝子プロモーターへの結合を高めることがわかった。よって、RGL1はWRKY75のターゲット遺伝子への結合能力を低下させていると思われる。WRKY75 過剰発現系統でRGL1 を過剰発現させる、もしくは機能獲得gai-1 変異を導入すると、花成促進効果が部分的に抑制された。GA処理はWRKY75 の発現を誘導する効果が有り、wrky75 変異体は野生型と比較してGA処理による花成に遅れが見られた。したがって、WRKY75 はGAによる花成時期制御に部分的に関与していることが示唆される。以上の結果から、WRKY75 はGAを介した花成時期制御において正の制御因子として機能していると推測される。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする