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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)アブシジン酸による種子発芽制御に関与する因子

2018-01-13 07:59:25 | 読んだ論文備忘録

Abscisic Acid Modulates Seed Germination via ABA INSENSITIVE5-Mediated PHOSPHATE1
Huang et al. Plant Physiology (2017) 175:1661-1668.

DOI:10.1104/pp.17.00164

シロイヌナズナPHOSPHATE1(PHO1)は、根からシュートへのリン酸(Pi)の輸送に関与している。PHO1 遺伝子は主に根の維管束系で発現しているが、公的マイクロアレイデータによると、PHO1 転写産物は種子に多く、浸漬によって増加することが示されている。このことから、中国農業大学のChen らは、PHO1はアブシジン酸(ABA)による種子発芽制御に関与しているのではないかと考え、解析を行なった。PHO1 転写産物量は、種子発芽初期に増加するが、ABAを添加することで減少した。pho1 変異体は、野生型種子と比べて、種子のリン含量が少なく、発芽率が低く、植物体の地上部が小さくなった。pho1 変異体の葉にPiをスプレーすることで植物体の成長が健全になり、この植物体の種子はリン含量や発芽率が野生型と同等になった。しかし、この種子はABAに対する感受性が高くなっており、ABA添加培地での発芽遅延、子葉の緑化率の低下が起こった。また、PHO1 を過剰発現させた系統はABAに対して非感受性となり、ABA存在下での発芽率が野生型よりも高くなった。これらの結果から、PHO1はABAを介した種子発芽や芽生えの初期成長に関与していることが示唆される。PHO1 遺伝子プロモーター領域には、ABAシグナル伝達の制御因子の1つであるbZIP型転写因子ABI5が結合するACGTモチーフが2つ含まれていた。ABI5 過剰発現系統ではPHO1 転写産物量が減少しており、abi5 変異体ではPHO1 発現量が増加していた。また、ABI5はPHO1 遺伝子プロモーターのACGTモチーフを含む領域に結合することが確認された。よって、ABI5はPHO1 遺伝子プロモーターに結合することでPHO1 の発現を負に制御していることが示唆される。abi5 変異体種子はABA存在下でも発芽するABA非感受性の表現型を示すが、abi5 pho1 二重変異体種子は、pho1 単独変異体種子と同様に、ABA感受性が高くなっていた。したがって、PHO1 はABAを介した種子発芽や芽生えの初期成長においてABI5 よりも上位に位置していると考えられる。以上の結果から、PHO1はアブシジン酸による発現制御を受けて種子発芽や芽生えの初期成長に関与してると考えられる。

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