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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)オーキシン受容体TIR1/AFBファミリーの役割分担

2010-01-11 19:45:01 | 読んだ論文備忘録

Complex regulation of the TIR1/AFB family of auxin receptors
Parry et al.  PNAS (2009)106:22540-22545.
doi:10.1073/pnas.0911967106

TIR1はオーキシン受容体として機能するF-boxタンパク質で、シロイヌナズナには同じファミリーに属するタンパク質AFBが更に5つ存在する。これらのうち、TIR1、AFB1、AFB2、AFB3についてはオーキシン受容体として機能することが確認されている。米国 インディアナ大学のEstelle らは、陸上植物のTIR1/AFBタンパク質の系統樹解析を行ない、種子植物のTIR1/AFBタンパク質は4つのクレイドに分けられ、非維管束植物のヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens )のTIR1/AFBタンパク質はこれらとは別のクレイドを形成することを見出した。よって維管束植物の祖先種のゲノムには1種類のTIR1/AFBタンパク質がコードされており、被子植物と裸子植物が分離したおよそ3億年前よりも以前に2回の重複が起こってTIR1/AFB2、AFB4、AFB6が形成されたと考えられる。TIR1とAFB2の分離はそれよりも新しく、単子葉植物と双子葉植物が分離する前に起こったと思われる。AFB6ホモログはアブラナ科とイネ科では早い段階で消失したと考えられる。このような進化の歴史をみると、TIR1/AFBタンパク質のそれぞれのクレイドは機能が異なっていることが推測される。そこで、シロイヌナズナの各TIR1/AFBタンパク質の単独、二重、三重機能喪失変異体を作出し、表現型の解析を行なった。芽生えの根の2,4-Dによる伸長抑制について各遺伝型での応答を見たところ、tir1 変異体が2,4-D非感受性が最も強く、tir1afb2 二重変異体ではtir1 単独変異体よりも2,4-D非感受性が高まったが、tir1afb1tir1afb3tir1afb1afb3 変異体の応答はtir1 変異体と同等だった。また、tir1afb2afb3 変異体はtir1afb2 変異体より2,4-D非感受性が高まり、tir1afb1afb2 変異体では相加効果が見られなかった。よって、根におけるオーキシン応答にはTIR1がもっと大きな貢献をしており、次いでAFB2、AFB3の順で、AFB1は殆ど貢献していないと考えられる。次に各TIR1/AFBタンパク質のC末端にGUSタンパク質を繋いだ融合タンパク質を各々のプロモーターの制御下で発現させて植物体を染色したところ、TIR1-GUSAFB2-GUSAFB3-GUS では主根と側根の根端、若い葉、若い花芽といった活発に成長している領域のみ染色され、各プロモーターによりGUS のみ発現させて染色した領域よりも限定いることがわかった。ただし、AFB1-GUS融合タンパク質では植物体全体が染色された。このことから、TIR1AFB2AFB3 は転写後制御を受けていると考えられ、これには以前に見出されているマイクロRNAmiR393 が関与していると考えられる。AFB1miR393 認識部位に1塩基置換があるため、miR393 によるmRNAの分解に対して耐性があり、そのために植物体全体で発現が観察されるものと思われる。tir1 変異体でAFB1 もしくはAFB2TIR1 プロモーター制御下で発現させても、TIR1の機能を相補しないことから、TIR1/AFBタンパク質はその活性においても差異があると考えられる。

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