非国民通信

ノーモア・コイズミ

憎しみが生む連帯感

2008-06-22 22:44:42 | ニュース

 さて大阪では1000億を超える巨額の大型投資には手をつけず、ひたすらに職員の給与カットを迫る府知事がいるわけです。財政再建案としてはお世辞にもクレバーとは言えませんし、自分の部下を弱体化させては自分の組織もダメになるわけですが、それでも全国的に支持されていたりします。反対に、この府知事のやり口に反対する人に対する非難の方が遥かに賑やかですね。

朝日新聞「死に神」報道:「素粒子」に抗議1800件 「風刺コラム難しい」(毎日新聞)

 死刑執行の件数をめぐり、朝日新聞夕刊1面のコラム「素粒子」(18日)が、鳩山邦夫法相を「死に神」と表現した問題で、朝日新聞社に約1800件の抗議や意見が寄せられていたことが分かった。

 で、例の「死に神」騒動です。死刑を乱発する鳩山法相を「死に神」と皮肉を込めて報じた朝日新聞に鳩山法相が激怒、大人げない猛抗議に至った事件ですね。昔の自民党議員は良くも悪くも「汚い大人」と言いますか、本音では怒っていても顔には出さず、当たり障りのない言葉でその場を収めてしまうイメージがありました。それに比べて今の自民党議員は子どもですね。ちょっと自分に嫌なことを言われるとムキになる、ガキです。こんな人間性だから大人の支持が自民党から民主党に移っている気もしますが、その代わりに若者の支持が強まっているから彼らも無反省です。

 さて、落ち着きを見せるべき立場の人が感情的になっている昨今ですが、その手の人、つまり鳩山や橋下がどういう理由で支持されているのか、それを考えてみる上でここに引用した抗議1800件は興味深い事例ではないでしょうか。橋下に意見した府職員が報道されたときもそうでした、あの時も職員に対する抗議や脅迫が殺到しましたね。この辺を取り巻く人々の意図はどの辺にあるのでしょうか?

 実のところ鳩山や自民党、橋下の類を主体的に、あるいは積極的に支持している人は、それほど多くないような気がします。かつて積極的に自民党を支持してきた人は小沢民主に相当な数が奪われているはずです。ところが新たに湧いてきたのが、より消極的な理由で与党や橋下のようなタイプを支持する人々ではないかと。

 彼らは自民党が、鳩山が、あるいは橋下が好きだから支持するのではありません。「好き」で結びついているわけではないのです。では何によって? それは「嫌い」によってです。彼らは自民党と対立するものが、鳩山と対立するものが、橋下と対立するものが嫌いだから、その自分の嫌いなものと対立している人を持ち上げようとしているのです。

 今回の件もそう、鳩山を支持する以上に「死刑に反対する人々が嫌いだから」というのが巨大なモチベーションとして存在するのではないでしょうか。死刑への異議は気にくわない、だから死刑に異議を唱える人々の「敵」を支持する、それが結果的に鳩山支持、自民党支持にも繋がるわけです。橋下の場合も同様、公務員憎しで凝り固まっている人は、その大嫌いな公務員を叩いてくれる人を結果的に支持するわけです。

 まぁ他にも正社員憎しが高じて、社員の待遇切り下げを進める財界人や御用学者と同じ視点に到達する人もいれば、外国から意見されるのが気にくわないと熱烈な調査捕鯨擁護論者に目覚める人など、どうしようもないケースは多々あります。昨今の右傾化にしたところで愛国心云々よりも「サヨク嫌い」の方がモチベーションとしては大きいのではないでしょうか? 国旗・国歌云々にしても、国旗や国歌が好きだから敬えと言う人は多くありません。国旗や国家に服従しない人のことが気に入らないから、それで国旗・国歌を掲げ始めるわけです。

 そして結局のところ、我々の社会は「御上」に楯突く人が何より嫌いなのです。自分自身が御上=政府与党に不満があったとしても、それ以上に御上に異議を唱える人々が嫌いであり、そうした人々の胎教に立とうとする、結果的に権力の側に立つのが昨今の世論です。昔も今も、政治家なんてそんなに尊敬されていません。誰もが影で笑い物にしています。鳩山や橋下だって同類、右からも左からも別に重んじられてやしません。しかし、そこに「嫌い」が混じると話は変わってきます。この権力に異議を申し立てている人がいる、この異議申し立てを我々の社会は何より嫌っており、それが転じて権力の擁護に繋がっている、そんな見方もできるのではないでしょうか?

 

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23 コメント

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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2008-06-22 23:12:38
少し前の朝青龍関や亀田一家に対するあれこれもそのように見えますが、「嫌いパワー」は人がまとまる上で実に侮れないものですね。そのエネルギーを何とか有効活用できぬものでしょうか?
Unknown (非国民通信管理人)
2008-06-22 23:56:15
>ノエルザブレイヴさん

 何とも非建設的なパワーではありますが、何か使いどころはあるでしょうかねぇ。何かを罰するためにしか働かないパワーですし。それが転じて権力サイドの保護に繋がっているだけに、そっち側にとっては活用できるものなのかも知れませんけれど。
毎度おなじみの手口 (Bill McCreary)
2008-06-23 04:56:34
>そして結局のところ、我々の社会は「御上」に楯突く人が何より嫌いなのです。

私も管理人さんに賛同します。石原にしても、ごもっとも。毎度おなじみの手口ですが、こんな古典的な手口で橋下あたりを批判する人が逆に避難されるんだから、お話にもなりません。

前の話ですが、あの府庁職員に対するバッシングは本当に愚かで無残な光景でした。彼女の語ったことはごく「正論」(爆笑)ですけど、仮にその意見に反対だったとしても、あんなふうな八つ当たりはしてはいけませんね。
今の議員 (単純な者)
2008-06-23 11:41:02
こんにちは。

好き嫌いで決める。現代の風潮なんでしょうね。短絡的で軽挙妄動で木枯らしに集まったり吹き飛んだりする路上の落ち葉ちゃん達という感じでしょうか。

さて、昔の政治家に言及されておられますので、彼らは選挙基盤を固めて支持者を大事にして、支持者も一朝ことあるときの
選挙運動と投票に熱心に手弁当で、お互いにご恩とご奉公をというイメージが浮かびます。

ところが最近の政治家は様変わりで旧弊因習とは距離を置き
投票してくれるかどうかを今までよりもよりドライに計算し
まさに職業的政治家の色合いを濃くしています。党と党首の命ずるまま行動し選挙区にも以前よりも執着せずに変更したりします。

どうなんでしょうか、くだんの大都会の若者達はそういう政治家の理解では投票をしてくれそうな支持層として浮かんでいるのでしょうか。

いえ、フリーター、ニート、派遣・・投票権あるんでしょうね。現実的な彼らの要求を政治家がどう受け止めているのかには、この辺の投票と選挙という政治家の生命線にとって重要ですよね。

では。
Unknown (siegmund)
2008-06-23 12:49:35
「風刺コラム」に抗議が1800件ですか。
管理人さんの仰るとおり「嫌いな者を叩く」「御上に楯突く者が嫌い」の典型ですね(私は更に広く「権利を主張する者が嫌い」も加えます)。
朝日新聞は既に新自由主義に飲み込まれたと私は理解しているのですが、「反政府主義の左翼御用達新聞」と思っている人も未だに多いのでしょうね。

さて、バッシング現象は対象が今やスポーツ選手や芸能人にまで及んでいますが、どれも共通するものがあります。
それは批判を口にする人は「いい子ぶっている」ということです。
(公務員が不真面目だから財政難になったのだ!という的外れな意見もこれに該当します。)
コラムにしても芸能人の失言にしても、常識で考えれば風刺であったり冗談であることは明白ですが、それを敢えて「無垢で善良な市民を演じて」批判するわけです。
未成年者のタバコなどは友達とのお遊び程度で吸ったことがある中・高校生などはかなりの数がいると思われますが、それを「大真面目な振りをして」批判します。
でも彼らは学校でタバコを吸っている学生にそれを注意したことはないでしょう。
その場では「匿名」ではありませんからね。

ですから批判をする者は真面目で大人しく目立たない人生(つまり「いい子ぶる人生」)を送ってきた人たちが多いのだろうなぁと想像しています。
それが公の場で自分の意見を主張できないから陰でコソコソ言っていたのが、インターネットのおかげで表に出ているだけかと。
こうやって考えると、インターネットというのは日本人の「卑屈で惨めで言いたいことも怖くて言えない」という国民性を完全に暴露してしまいましたね。
上手く言葉がまとまりませんが・・・。 (ニュースコープ)
2008-06-23 17:27:09
しかしまぁ何と言うんでしょう、最近は色々な意味で「世の中も随分変わったなぁ…」と思わずにはいられないんですよね。
私が政治に関心を持ち始めたのは90年代頃でしたが、当時は「汚い大人」であることを肯定し、現実主義の立場から野党の護憲論・平和主義などを「子どもじみた理想論」と批判するのは、保守派による左派叩きの常套手段だったはずなのですが。
で、彼らの基本的主張は最近もあまり変わっていないはずなのですが、思考としてはいつしか野党の方が「現実主義」になり、与党及びその支持者の方が「子どもじみた理想論」(悪い奴らはぶっ殺せ!敵の敵は味方だ!つまるところ俺たちは悪い奴らと戦う正義の味方なんだ~い!)に走っていはしまいか、そんな気もしてきます。
どの辺りで逆転したのかは判然としませんが、やはり小泉元首相の辺りからでしょうかねぇ。
不遇者が弱者を攻撃する! (コミュニスト)
2008-06-23 18:53:15
関東大震災の時に、民衆自身が朝鮮人狩りに奔走した!
「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「暴動を起こした」から「やられる前にやってしまえ!」

ところが、これは政府が海軍送信所を使って全国的に意図的に流したデマだった。政府も戒厳令を布告し、自警団を組織させ、あたかも真実であるかのように装った!何故こうしたデマを流したか?!地震による被害と国民の不満・要求が政府に向いてくる前に、その矛先を朝鮮人などに向けさせたのだ!

1920年以後の戦後恐慌による生活苦と朝鮮総督府によって財産や地位、生活を奪われた人たち約8万人以上が出稼ぎに来ていた。彼らの賃金は日本の労働者、日雇い労働者などより低い賃金だった。だから雇用主は朝鮮人を使った。彼らも稼ぐために働いた。それが日本人労働者、国民の生活をいっそう深刻なものに陥れた。そんな時にデマが流れてきた。朝鮮人に対する憎悪が偏見・差別感情と絡まって増幅して、6000人以上の朝鮮人が虐殺された。なかには朝鮮人を助けた日本人もいた!

なんか、現在の風潮に似ていないでしょうか?

不遇な日本人が、自分を不遇にさせていると錯覚している公務員、国民・仲間に矢を放っている!

団結し、自分たちを不遇にしている根源に矢を放つ日がいつ来るのか?

またどうすれば、その根源に矢を放つようになるか!
Unknown (perica)
2008-06-23 19:49:21
>大人の支持が自民党から民主党に移っている気もしますが、その代わりに若者の支持が強まっている

http://imi.ne.jp/abc/opimion/new/pol/docs/sub2.html
このサイトを見る限りでは、自民党は落ちるところまで落ち、民主党は年金にまともに手を出さなかったせいで大人から見放されているという感じがします。
流言蜚語は (おさふね)
2008-06-23 21:06:05
前からありましたね。
確かに「死神」はいけません。「忌避される存在」であろうとも「神」に対して不敬です。
あんなものは「黄色いアミン」で十分かと。
それはさておき
マスメディアの誘導で大騒ぎした挙句、それが捏造だったとわかると大暴れした例はいくらでもありますね。
身近な例で行けば「あるある大辞典」とか。
無闇矢鱈にメディアや権威、権力に同調し、反対勢力を叩く事が正義だと信じているところに問題があるのかと。
松本サリン事件の教訓を何一つ生かしてないというのも空しい気がしますが、狙いすまして踊らせる方が悪どいのか、何も考えずに踊るほうが馬鹿なのか…
Unknown (非国民通信管理人)
2008-06-23 23:33:01
>Bill McCrearyさん

 どこぞやの自称全国紙のおかげで「正論」という言葉がどこか滑稽なものに聞こえてしまいますね。それはさておき上から下へは暴言も賞賛され、下から上は正論でも非難囂々、内容や主張の正当性よりも権力関係の方が大事にされているようです。

>単純な者さん

 旧弊因習も侮れないと言いますか、投票すれば見返りがあるなら、それもある種の互恵関係のはず、それが壊れたのが今という理解でいいでしょうかね。若年層や貧困層が「見返りのある」政党や政治家を捜せば、また違った選択肢が出てきそうなものなのですけれど。

>siegmundさん

 面と向かって注意できない、意見できない分をネットなりメディアなりが多数派の立場からバッシングによって発散しているところはありますね。自分を安全なところにおいて、一方的に攻撃できる関係を好む、そんな有様でしょうか。

>ニュースコープさん

 そう、昔は左派政党の方が理想論として批判される、与党は現実のためにいくらでも妥協する「汚い大人」として支持されていたはずなんですよね。今の「汚い大人」の役目は小沢民主でしょうか、一方で自民党が「子どもじみた理想論」になり、支持層も若い世代が中心に。この自民党の変貌は常に留意すべき事項ですね。

>コミュニストさん

 少なからず現代と共通する点があるわけですが、日本人が過去と変わっていないのなら、むしろ積極的に権力の意図を先取りし、虐殺に走ろうとするかも知れませんね。世の中を知ることは過去に比べてずっと簡単になったはずですが、知り得た情報を理解できるかどうか……

>pericaさん

 少年犯罪のデータと同じですが、長期的な動向を無視してごく一部の意図に適した期間だけを抽出するのはミスリードというものですよ。

>おさふねさん

 なるほど、死に神に対して失礼ですね。それはさておき世論は一気に傾くと言いますか、時流に応じてあるものを熱狂的に崇めたかと思えば別のものを総出でバッシング、進歩がないというより、悪化しているような? ダメなメディアとそれを歓迎する顧客、この共犯関係も続きそうですね。

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