非国民通信

ノーモア・コイズミ

こういう場面でこそ、毅然とした対応が求められるというもの

2012-03-04 23:02:17 | 社会

中部電力、都庁への電力供給断る…西日本を優先(読売新聞)

 東京都の猪瀬直樹副知事が、中部電力に新宿区の都庁舎への電力供給を打診したことを受け、中部電力の渡辺穣・販売本部長らが27日、都庁で猪瀬副知事と会談し「危機的な需給状況の中で、まずは西日本エリアの安定供給に全力を尽くしたい」と述べ、当分は供給できないことを伝えた。
 
 渡辺本部長は、東京電力の値上げ方針が発表された後に、東京都以外にも東電管内の企業約10社から電力購入の申し出があり、いずれも東京都と同様に断っていることを明らかにした。
 
 しかし、猪瀬副知事は、「需給が安定すれば(中部電力は)いつでも供給するということで合意した」とした上で、「東電が勝手に値上げをすれば、どんどん競争が出てくるということだ」と主張、今後も東電側をけん制していく意向を示した。

 なんと言いますか、猪瀬直樹の頭の悪さと中部電力の示した良識が綺麗なコントラストを描いている感じです。原発事故後は公務員を超える最大公約数的なバッシング対象と化した東京電力への当てつけ的に中部電力へ電力供給を打診した猪瀬副知事ですが、何とも身勝手な要求ではないでしょうか。そもそも西日本の電力需給だって大変なのですから、そこから電気を買うことは西日本に対する圧迫にも繋がります。東と西で電気を奪い合うような状態になってはいけないでしょう。幸いにして、中部電力からは一蹴された模様です。それはもちろん、中部電力に限らず電力会社としてはまず自分の管轄エリアで電力供給の責務を果たすのが第一、政治家のくだらないパフォーマンスに付き合うつもりはないと言ったところでしょうか。電力会社のやってきたことに批判の余地がないわけではありませんけれど、今回のような振る舞いを見ると概ね電力会社とは日本の数多の民間企業や政府に比べれば、少なくとも相対的には信頼の置ける存在であるように思えてきます。

 市民の生活に必須の鉄道など公共交通機関や郵便事業、そして電力事業といった公益性の高い部門に関しては民間企業に委ねるより国が運営に携わるべきではないかと考えてはいるものの、さりとて今の政治家よりも今の電力会社トップの方が、まだしも任せられるなと言わざるを得ません。東京電力が国営化されても、それは民主党のおもちゃとして政争の具にされるだけの話で、何かが良くなると言うこともないでしょう。そして今回の東京都副知事の発言です、曰く「需給が安定すれば(中部電力は)いつでも供給するということで合意した」などと虚勢を張っていますけれど、「需給が安定すれば~」は単に断りの口実です。そもそも平常運転が可能であったはずの中部電力エリアを含めた西日本全域にまで電力不足を招いたその責任はどこにあるのか、不適格ながらも政治家である以上、その辺を他人事のようにしたまま口を開くべきではないでしょう。

 国際的な競争に関しては企業側を保護しつつ、その一方で国内での競争を煽るというのが日本における一般的な経済観と言えそうです。その結果として国際競争力を低下させ、デフレをも深刻化させてきたわけですが、それでも国内競争を責務であるかのごとくに当然視し、この国内競争から免れているかに見える層(電力会社や公益法人等々)を諸悪の根源であるかのように考えている人も多いのかも知れません。国内競争でお互いに身を磨り減らす、その輪に加わらないものは徹底して糾弾すべき異端者である、それが日本という国の教義なのでしょう。しかし、こういうデフレの時代だからこそ安値で勝負するよりも品質(安定供給)の維持に奔走している電力会社の方が、私には好感が持てるというものです。

 

福島から避難の子ども、入園断られる 山梨の保育園(朝日新聞)

 東京電力福島第一原発の影響で昨年、福島県から山梨県内に避難してきた子どもの保育園入園が「原発に対する不安が他の保護者から出た場合、対応できない」という理由で断られていたケースがあったと、甲府地方法務局が2日発表した。

 法務局によると、自宅近くの公園で子どもを遊ばせようとした際、近くの住民から避難者であることを理由に「遊ばせるのを自粛してほしい」と言われたこともあったという。

 法務局は風評による偏見・差別をしないよう、ポスターを掲示し、自治体広報紙に広告を掲載するなどの救済措置をとった。

 法務局による「救済措置」が、当事者をどう「救済」してくれるのか想像も付かないのですが、ともあれ似たような事例は枚挙にいとまがありません。原発/放射能に対する諸々の偏見が差別を生み、被災地のガレキや農産物だけではなく、被災地から来た「人」までもが排除の対象にされているわけです。

 福島で原発事故が起こる前にも、専ら聞かされてきたのは「原発安全神話はウソだ、本当は危険なのだ」と言うことでした。私自身なんとなく、そういうものなのだと思い込んでいたものです、当の「原発安全神話」を直接に耳にしたことはなかったにも関わらず。結局のところ危険だ、危険だとは聞かされつつも、そこまで深く考える必要性に迫られていない、というのが事故前の原発を巡る世間の最大公約数的な理解ではなかったでしょうか。だから私も、何となく危ないものなのだと思っていました。ただ「何となく」そう感じていただけなのですが。ことによると、核戦争で世界が荒廃して地球には人が住める地域がなくなり――みたいなSF小説のイメージにとらわれていたのかも知れません。

 ところが、原発事故後に事態は急変します。そこで起こったのは、原発/放射能への恐怖や煽りが被災者や被災地周辺地域の住民をも差別の対象にしてきたということでした。とにかく恐ろしく、絶対に触れてはならない「穢れ」として原発/放射能が扱われるが為に、被災地のガレキや農産物はおろか福島県民までをも排除しようとする、本来ならば当然のように非難されるべきその行為が、自らを守るための正当な防衛行動などとして擁護されるようになったと言えます。実際は、そこまでして避けなければならないものではなかった、恐怖を煽ってきた連中が言うようなことは「起こらなかった」わけですが、科学者や専門家の説明に耳を傾けるよりも、自分たちの頭の中にある「恐怖の放射能」像を優先して科学者や専門家の罵倒に走る人の方が多かったのは、むしろ現代の対立軸が原発推進か脱原発か、ではなく理性か盲信かというところにあることを示していると言えます。

 偏見を振りまき差別を煽る、にも関わらず自分たちは被害者なのだと思い込んでいる、そうした点では在特会のようなレイシスト集団も昨今の反原発な人たちも大差がありません。「日本」なり「子供」なりを守ると称して、自分たちが「害」だと信じるもの排除を訴える人々が、原発事故後は随分と増えました。時間が経過してちょっとは頭数が減ったかも知れませんけれど、残った人の中には先鋭化の度合いを強めている人もいるように思います。その手の人には、もはや素人は手出しできないものなのかも知れません。カルトの脱退支援とか、そういう類の経験や訓練を積んだ人じゃないと無理でしょう。ただ行政や引用したニュースに上がった保育園など公共性の高い施設側が、その手の人々の狂信に怯まないで欲しいと願うばかりです。中部電力がそうしたように、馬鹿げた要求は毅然として退けてください。

 

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8 コメント

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Unknown (ルーピー)
2012-03-05 14:04:31
 さんざデマ拡散をしていた人たちが、ここ何日か「子供を差別するな」とか言い出しています(山本太郎、きっことか)。完全にマッチポンプです。ここまで見下げ果てた腐れ外道だったのか。
Unknown (非国民通信管理人)
2012-03-05 23:21:55
>ルーピーさん

 自分たちが差別を煽ってきた当事者であることに、全く以て無自覚な人々なのでしょうね。何か良くないことが起これば、それは原発/電力会社のせいであって、自分たちの言動が何をもたらしたかなど考えても見ないのだと思います。
Unknown (ここ)
2012-05-20 22:30:42
原発の問題だけに言えることではないのですが、反原発の小林圭三氏の主張を例に・・・。

「もんじゅは核燃料増殖のために、核分裂しにくい高速の中性子で核分裂させようと、プルトニウムの燃料棒をぎゅうぎゅうに詰めている。だからトラブルが起きると核分裂反応が暴走しやすく大事故につながる」

と小林氏は主張しています。これだけ読むと、「やっぱり危険!」となってしまいますが、詳しい方にこの主張は正しいのか聞いてみました。


小林氏の主張は、ボイド反応度が正になりやすいから危険、ということであるが、これは一面からしか見ていない。

原子炉の固有安全性(物理現象により安全性が担保される性質)というのは、
・温度反応度係数が負(何らかの外乱により温度が上昇しても核分裂反応が暴走しない)
という事が非常に重要で支配的である。

これが正の場合、例えば原子炉内が過加熱に至り温度が上昇すると核分裂反応が制御不能となり、チェルノブイリ発電所事故のような爆発が生じる(チェルノブイリのRBMKはこの値が正で設計されており、運転時の不注意で加熱し核暴走に至った)。

温度反応度には、炉内の核分裂反応を制御する温度が関係するものの種類毎に
・ボイド反応度
・ドップラ反応度
・減速材(冷却材)温度反応度
・構造材膨張反応度
等に分解でき、”この総和が負であることが重要”。基本的にドップラ反応度は燃料の性質上、どのような設計でも十分に負になりえる。

軽水炉の場合、減速材温度反応度が材料の性質上十分に負になり、またBWRではボイド反応度は
(減速を十分にできなくなり、核分裂反応が満足に行えなくなるため)設計上負にしやすく、
そもそもの性質から負にすることが簡単である。

一方、高速炉は高速中性子を利用するため、沸騰が生じた場合は核分裂反応がしやすくなる方向で、結果として正になりやすくなる。これは、燃料棒を短くすることで沸騰しなくすることで回避している。また、十分に負のドップラ、負になりやすい冷却材温度反応度、構造材膨張反応度により、総和で確実に負になるよう設計されている。


原発に限らず、”まず結論ありきで、自分に都合の良い資料やデータだけを取り上げ(都合の悪いデータは無視)、結論づける”人は多いのではないでしょうか。

猪瀬副知事などはその典型だと感じます。
Unknown (非国民通信管理人)
2012-05-20 23:15:10
>ここさん

 小林氏の主張は単純でわかりやすいですけれど、そういうものほど危ういのでしょうね。まぁ、自説に都合の良い部分だけをピックアップする、不都合な部分には目もくれない、そういう態度は政治家にも多いんですよね……
技術の問題 (ここ)
2012-05-22 01:02:21
危険を煽る主張は、具体性がないものが多いと思います。例えば大飯原発の問題に関しては、

「琵琶湖が汚染される!」←具体的にどれだけ汚染されるのか。例えば平時は1mSvだったものが2mSvになったところで、倍ではあるが、数値から考えて、「何が問題なの?」というレベルです。だから、どれだけの汚染があるのか、恐怖を煽る前に具体的に提示してほしい。

福島の事故を受けて、非常用電源を高台に設置する、水から遮断する対策をした原発は、地震や津波が起こった場合、”具体的に”事故が起こる可能性はどれくらいなのか。

事故が起こった場合、”具体的に”どれだけの被害が考えうるのか。

福島の事故を軽視するわけではありません。しかし、おそらく福島第一付近でなければ、住民が居住する地域で、現在の線量では、健康被害の有意なデータは出ないでしょう。これはチェルノブイリ事故等の疫学データから言えることです。

小林氏の主張の「ボイド反応度が正になりやすい」は間違っていない。しかし、他の条件は負になるように設計されている。では、それでもボイド反応度が正になる可能性は”具体的に”どれくらいなのか。最悪の状況がどれだけ重なったら小林氏の主張する危険な状況が起こりうるのか。

具体性がなく、福島と関電の福井の原発の型の違いも報道されず、ただ「危険!」という世論が実は最も危険である、と感じます。



抽象論、
すみません、訂正です (ここ)
2012-05-22 01:14:02
>では、それでもボイド反応度が正になる可能性は”具体的に”どれくらいなのか。

ボイド反応度ではなく、「総和が正になる」可能性、具体的な確率はどれくらいなのか。

ということです。失礼しました。
ダブルスタンダード? (ぱっく)
2012-05-23 16:50:17
福島からの避難幼児の入園受け入れ拒否問題が起きた山梨県と言えば、2011年9月に市立甲府病院で約150人の子供が過剰被曝していた事実が判明したご当地ですよね。
しかもこの病院での子供達の被曝線量は平均で約30ミリシーベルト。最大の子供が150ミリシーベルトを超えていたそうです。

福島県で2月に実施したホールボディーカウンター(WBC)による内部被曝検査では、検査した2万2717人中、最高でも3ミリシーベルトが2人、2ミリシーベルトが10人、1ミリシーベルトが14人で残りの99%は1ミリシーベルト以下だったそうです。

こんなニュースを比べて見てみると、山梨県で福島の避難民を差別していた人の頭の中を覗いてみたい気がしますね。
また、一病院でこれだけ大規模の被曝事件が起きた訳ですから、反原発派の論理では、全国の病院で同様の事象が起きないよう絶対の安全性が確認できるまで、全国の病院の放射線利用機器は全面停止させる必要があった筈なのですが、その点には全く触れられないのも不自然ですよね。
この辺りの論理矛盾が意図的にスルーされ、単なる政府叩き、電力会社叩きでマスコミも政治家も迎合している気がしますね。
Unknown (非国民通信管理人)
2012-05-23 23:15:57
>ぱっくさん

 医療上の手違いとか、手違いでなくても局所的なものであれば普通のバリウム検査とかでも、実は結構な被曝量だったりするのですよね。原発事故の影響で深刻な健康被害が出るのなら、むしろ医療目的の放射線利用の方が危険視されそうなところですが、まぁ脅威を煽る人ほど不勉強だったり、自説に都合の良いものにしか目を向けなかったりするのでしょう。

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