さて皆様のお勤め先でも、4月からの人事が発令されたところは多いのではと思います。私の勤務先でも一部を除いて公表されているわけですが――例年通りシャッフル人事が目につくところだったりします。まぁ、とにもかくにも「変える」ということが評価に結びつく組織では、シャッフル人事も改革意欲の表れと見られるのでしょう。
新型コロナウィルス感染者の再拡大が明白となる中、帰省や観光を控えるようにとの意見も聞こえる中ではありますが、「転勤を控えるように」みたいな声明は昨年と同様に耳にする機会がないわけです。転勤命令は神聖にして侵すべからざる雇用主の権利であり、それは帰省や観光とは次元の違うものとして扱われていることがわかります。
弊社でも4月からは東北の人間を東京に、東京の人間を大阪に、全国各地で従業員を大移動させることが決まっています。転勤を命じられた社員は新居探しや業務の引き継ぎのために県をまたいで飛び回る日々を過ごしているわけですが、どうしたものでしょうね。頓挫したGoToトラベルの埋め合わせというものでもありませんし……
私の会社は基本給は低いですが転勤者への手当は割と手厚いところがありまして、それは人員増以上にコストのかかりかねない部分であったりもしますが、社員を転居させることにはそれだけの価値があると判断されているようです。まぁ本当の幹部社員ともなれば各地で見聞を広める必然性もありそうですけれど、そうでない人はどうなのでしょう。
一方で、転勤はおろか同じ部署から永遠に異動しないでいる人もいたりしまして、相変わらず人事の意図はわかりません。2年と待たずに勤務地の変わり続けるジャーニーマンもいれば、私が入社するよりずっと昔から同じポジションで働き続けている人もいて、謎は深まるばかりです。
全国を飛び回りたいか、それとも同じ部署で働き続けたいか――そういう意向を問われたことは入社して一度もありませんので、たぶん本人の望みによるところとは関係がないものと思われます。本人の選択とは無関係に、高頻度で飛ばされる人もいれば一貫して不動の地位にいる人もいる、人事とは人知を超えたものなのでしょう。
全国各地に飛ばされる人々が幹部候補のゼネラリストかといえば、そういう風でもありません。そして決して異動の対象にならない人が特定部署になくてはならないスペシャリストかといえば、やはりそうでもなかったりします。ずっと同じ仕事を続けているけれど、必ずしも頼れる存在ではない、ところがどうして会社の評価は低くなかったり……
ヨソから異動してきた上司は落下傘候補よろしく部署の仕事を知らない、一方で異動とは無縁な人はローカルルールだけは知っている。そうした中で異動とは無縁な人が「リーダーシップを発揮している」かのごとく人事の目には映る場面があるのでしょうか。人事と無関係な人には、別なものが見えている気もしますけれど。