非国民通信

ノーモア・コイズミ

私が今まで批判してきたものと、その反対にあるもの

2011-12-26 23:14:20 | 雇用・経済

東電、企業向け値上げ 4月から2割、家庭も1割検討(産経新聞)

 東京電力は22日、工場やオフィスビルなど企業向けの電気料金を来年4月から引き上げると発表した。福島第1原発事故に伴う代替火力発電の燃料費増加に対応するため。値上げ幅は2割程度となるもようだ。政府の認可が必要な一般家庭向けも早急に値上げを申請する考えで、早ければ来夏にも1割程度の値上げを行う方向で検討している。

 料金値上げは、企業、家庭ともにオイルショックで燃料費が高騰した昭和55年以来32年ぶり。西沢俊夫社長は22日の会見で「燃料費増による経常赤字構造を解消することが電気の安定供給のために急務だ」と述べた。東電の平成23年度の火力発電用燃料費は前年度より8300億円増える見込みで、経営合理化では吸収しきれないと判断した。

 企業の値上げは、政府の認可がいらない契約電力50キロワット以上の顧客約24万件が対象で、販売電力量の約6割を占める。具体的な料金は、東電が個別交渉で決めるため一律ではないが、来年1月に交渉のたたき台となる料金体系を決める。値上げ幅は新潟県の柏崎刈羽原発の稼働状況などを見極めて判断。今年度並みの燃料費増を吸収するには2割程度の引き上げが必要だ。

 さて、企業向けの電気料金が値上げされると発表されました。より具体的には契約電力50キロワット以上の顧客約24万件が対象になるそうです。そうなった理由は政府による認可を必要とするか否かによるところもあるようですけれど、まず企業から、まず大手から料金値上げに踏み切る姿勢は評価したいと思います。何せ我らが政府と来た日には、一貫して消費税増税を悲願としており、負担を求めるのは何よりも庶民から、という姿勢を堅持してきたわけです。それに対して東京電力は一般家庭向けの値上げは後回し、値上げするにしても大手企業は2割だけれど一般家庭は1割に止めるなど、累進型の値上げプランとなっています。消費税増税という逆進課税に邁進する政府与党の連中には、東京電力経営陣の爪の垢でも飲ませてやりたいところです。

 率直に言えば、東京電力は日本の他の民間企業や政府与党に比べれば肯定的に評価できる部分が多いように思います。まず大手、まず企業からの値上げ方針もそうですし、自治体との関係も同様です。つまり、あまり裕福ではない自治体の中には形振り構わぬ優遇措置や膨大な補助金によって企業(工場)の誘致に走るところも少なくない一方、補助金を毟り取られるだけ毟り取られた挙げ句、肝心の企業には早期に撤退されるなんて事例が珍しくありません。しかるに電力会社(発電所)ともなると、そう簡単には撤退しないどころか、逆に自治体に寄付をしてくれたりもするのですからありがたい存在です。誘致するなら、電力会社(発電所)に限りますね。

 特定企業による寄付が多額ともなれば自治体の行政が歪められる恐れもありますが、寄付などなくとも特定企業が納める法人税によって財政が大きく左右される自治体(≒企業城下町)もまた少なくないわけです。他に産業のない自治体に大企業が拠点を構えるとあらば、その経済力が自治体を左右してしまうことは避けられないことで、これは好ましいことではないかも知れませんが恩恵との兼ね合いで考えていくべきでしょう。元より優遇措置に甘えてろくに税金を納めることもなければ、あろう事か自治体から補助金を毟り取るばかり、ちょっと雲行きが変われば躊躇なく撤退して雇用を増やすこともない、そういう企業と自治体との関係を何度となく批判してきた身としては、電力会社と自治体との関係は随分とマシな方、せめてこのような関係であって欲しいものとして評価できるのです。

 安ければ良いのか、という気持ちもあります。異常なデフレ状態が継続する日本において、色々な商品やサービスの値段が下落を続けています。その必然的な帰結として、働く人の取り分もまた減少を続けてきました。デフレで消費者としては商品やサービスを安価で手にできるようになったとは言え、自らが働いて収入を得る上では大いに困難を伴うようになったわけです。低価格を武器にシェアを伸ばす企業が(それが業界全体の衰退を招いていてさえ)賞賛されがちな時代ではありますけれど、単に消費者だけではいられない、同時に労働者でもあることも求められる社会において、これは喜ばしいことなのでしょうか?

 多少割高ではあったとしても品質が良いものを求めていくことも、消費者としてあるべき態度ではないかと思います。ひたすら安い物を追い求めて行った先は、デフレの継続であり深刻化であり、労働者としての所得の減少であり経済停滞であり、その結果としての社会保障の破綻でもありますから。商品やサービスの価値は価格だけではない、もっと品質を正しく評価できるようであって欲しいと願うわけです。そしてこの観点から是としたいのが、必ずしも安価ではないけれど、世界でも最高レベルに安定した日本の電力供給体制なのです。もちろん安い方が消費者にとっては好ましく見えるかも知れませんが、しかし安いだけで良いのか。もっと品質を評価すべきではないのかと、そうした観点こそ日本社会に欠けているものです。

 とかく働く人の取り分が多い業界は世間の非難を浴びがちで、給与をカットすべきだ、そしてもっと安価にサービスを提供できるようになるはずだと、そう迫ってきたのが我らが日本の民意です。この日本の民意に親身に耳を傾けてきたのが経団連であったり各企業の経営陣だったのかも知れません。働く人の取り分を削って、商品やサービスの値下げに励んできた、日本の多くの企業は民意に応えてきたのです。一方で、民意に応えていないのが電力会社と言えます。しかし、民意に応えて働く人の取り分を削ってきた企業群を繰り返し批判してきた身としては、この民意に媚びない電力会社の姿勢は賞賛したくなるところこそあれ、改めるべきものとは到底思えません。むしろ電力会社こそ、デフレにあえぐ社会の希望とすら言いたいくらいです。

 

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9 コメント

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Unknown (プチ左派)
2011-12-27 01:02:54
ネットリサーチで、東電のボーナスが37万であることにどう思うか?というのがあり、8割の人が「高すぎる」と答えていました。

東電のような大企業が37万のボーナスで叩かれるなんて・・・。
このボーナスを受け取っている社員のほとんどは原発事故にはかかわっていない末端社員なんですがねえ。

そういえば東電の寮がいやがらせを受けたなんてのもありましたね。
東電の事故からしばらくの姿勢には批判されても仕方ない面もありましたが、それはあくまでも上層部。
寮に住んでいるような社員にいやがらせをする精神のほうに貧困を感じます。
Unknown (amanojaku20)
2011-12-27 01:16:42
最低賃金が一向に上がらないのは財界において未だに製造業が幅をきかせているのが原因なんでしょうかね?未だに経団連の会長はほぼ代々製造業出身の人間ですし。

製造業に関しては日本国内の労働者の賃金が上がると、そりゃ困るでしょう。通貨の安い国で生産された製品に負けてしまいますからね。
断固反対するでしょう。

政治家の皆さんも財界と喧嘩しろとは言いませんが、製造業を何としてでも日本に温存させる事が果たして日本の為になるのか考えてもらいたいものです。

Unknown (非国民通信管理人)
2011-12-27 23:06:10
>プチ左派さん

 なんだかんだいって男性正社員であれば37万円以上のボーナスをもらっている人も多いはずなんですが、こういう場面ではまさしく「無限に」責任を負わせないと気が済まない人がいるのでしょうね。犯罪加害者の家族までをも罪に問おうとする気運が強まる時代でもあります。普通の会社員であっても会社の責任をどこまでも負わされてしまう、資本主義の常識すら通用しない社会になりつつあるのかも知れません。

>amanojaku20さん

 少なくとも現行の製造業を維持するためには、そこで働く人の賃金を新興国に負けないよう低く押さえ込むべく「改革」を続けなければなりませんからね。どうにも製造業こそ「あるべき姿」的な思い込みが強い日本ですけれど、それは新興国に任せて日本は先を探るべき段階に来ているのではないかと、考えを改めて欲しいところが多々あります。
Unknown (amanojaku20)
2011-12-28 14:04:21
逆に見習うべきでないのは橋下でしょうね。
近頃大阪市交通局職員の給料の額に腹を立てている様ですが

大阪市交通局は御堂筋線の莫大な黒字で、バス事業を含めた赤字路線を本数を減らす事無く維持する事に成功しており、公営交通の優等生と言われているんですよね。

橋下は常日頃職員に民間企業と同じように実力主義を掲げていますけども、ならば閑散路線の本数を減らす事無く、安定的な経営を実現している大阪市交通局は賞賛され、職員は特別にボーナスを貰ってもいいくらいです。

であるにも関わらず交通局職員の給与を批判するとは、どうやら橋下の言う実力主義とか結果を出せとは自分の給与を減らしつつ、市民に誠心誠意尽くす事なのでしょうね。

民間企業を見習えとも言ってますが、橋下の言う民間企業とは稼いだ利益を社員に還元する企業では無く、ボーナスを出すのを渋り、安い賃金で社員をこき使う企業なのでしょう。こんなんで大阪の経済を良くしようなどと言っているのですから失笑を禁じえません。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-12-28 18:55:45
>amanojaku20さん

 橋下はバス事業を地下鉄事業から切り離すことでバス部門を赤字化させて不採算路線の削減に踏み切らせる計画のようですが、これで不利益を被るのは住民なんですけれど理解でいない人が多いということなのでしょうね。自分の気に入らない相手の給料さえ下がれば自分たちの生活なんてどうなってもかまわない、こうした民意が日本の企業や政治家を支えているのだと言えます。
Unknown (富士山ぽん子)
2011-12-28 18:57:21
毎回、頭のいい方がいるものだな~と感心しながら拝読しております。
私は、難しいことはわからないのですが、そういった「難しいことはわからないし、本当はどうでもいいけど、正義を掲げさえすれば叩ける奴は叩きたい」心理につけこんで視聴率、販売数稼ぎをするマスコミの情報を鵜呑みにし続ける限り、デフレスパイラルに巻き込まれるどころか、マスコミに蔓延る共産主義者の餌食となってしまうのがオチでしょう。
マスコミだけでなく、学校の先生や物書きにも多いと思うのですが、彼らが、「言葉」のなかで生きる理想主義者であるのにに対し、大企業の社員や、労働者は、「行動」という現実の中で生きています。例え大企業が嫌いでも、東電に責任があるとしても、私たちの社会を支えてくれていることに違いはない「現実」の中で黙々と生きる人を批判する権利など、「現実」の中で生きられない者には、元々、ない筈です。
管理人様の、現実を見据えた、地に足のついたご意見、今後も参考にさせて頂きます。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-12-28 23:10:25
>富士山ぽん子さん

 蔓延る共産主義者というのが私には思い当たる節がないのですけれど、それはさておきマスコミの正義を掲げた見境のない「叩き」には辟易させられますね。ちょっとでも厚遇されているかのごとく思われたら、それだけで悪玉視され、働く人の立場など微塵も考えられていない、ただ叩かれる対象が時に移り変わる程度なのですから。
Unknown (IBA)
2011-12-28 23:42:14
 電気料金値上げの影響で、中小企業の経営が圧迫されて、雇用環境の更なる悪化が予想されます。

 で、反原発どもは、鎮静化に向かう……はずもなく、更にいっそう激化するんじゃないかと、心配しております……。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-12-29 00:56:33
>IBAさん

 まぁ電気料金値上げで傾くような会社なんて、よほど特殊な業界にしか存在しませんよ。日頃コストカットにうるさく首切りに熱心だったはずの大企業にどれだけ節電余力があったか(=日頃の電力使用量を気にしていなかったか)を考えれば、それはあまり影響力のある話ではないのでしょう。

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