非国民通信

ノーモア・コイズミ

日本は経営者には優しい

2008-06-14 23:07:14 | ニュース

最強ワーキングマザー対談(10)「日本は貧困にも冷たい」(毎日新聞)

 西原 でも日本には、誰にもなにがしかの仕事があるでしょう。

 勝間 そう、それもよく言われていることで、なにがしかの仕事はあるけれど、より好みしちゃう人も多い。

 --まあ自発的な失業ですよね

 勝間 だからどちらかといえば気力対策の方が必要だと言われているんですけど。若年層に対しては特に。働く気力を呼び起こす気力対策ですね。

 部分的には読むべきところもあるのですが、偏見を煽っている箇所も目立つ対談記事の抜粋です。まぁ誰にでも何らかの仕事がある、というのは同意します。よく「自分は一生、正社員にはなれない」云々といった主張を目にするわけですが、そうでもないでしょう。正社員になるのはそんなに難しいことではありません。正社員でありさえすればいい、と思えるのなら。

 正社員を辞めて派遣社員になったら手取りが増えたとか、正社員になったら1時間当りの給与はバイト時代より減ったとか、正社員の残業代の方が踏み倒しやすいので正社員の方が安上がりとか、そういう事例も多々あります。同じ派遣でもホワイトカラーとブルーカラーでは絶望的な差があるので一概には言えませんが、問題は雇用形態をどうにかすれば済むような、そんな単純なものではないわけです。

 で、正社員でありさえすればいい、そう思えるならば仕事には事欠かないはずですが、自らそう思える人ってどれだけいるのでしょうか? まともな人間なら、人間らしく扱ってくれそうな職場を求めますし、非人間的な扱いをされると分かっていれば、それを避けます。そのような状態を指して勝間氏らが語るには「より好みしちゃう人も多い」「自発的な失業です」「気力対策の方が必要」と。

 劣悪な労働環境を拒絶することは、ある種のストライキであり、労働環境の改善を要求する圧力にもなります。ですから、経営側としては頭の痛い問題です。経営側としては低賃金でも黙々と労働に従事してくれることが望ましいわけで、待遇が悪いからと労働を拒否されては堪らないわけです。ですから、こうした劣悪な職場を拒否する人々を経営層が批判し、それに対策をとろうとするのは当然のことでしょう。勝間氏もその一人で、就業していない人に「気力対策」という名の調教を施し、劣悪な労働環境をも拒絶せず経営層のために奉仕する産業兵卒を育てること、これが必要だと説くわけです。もちろん、それは経営層にとっては好ましいわけですが、それで働く人が幸せになれるはずがありません。

 --深刻なんですね。勝間さんが勧めるのは正社員化ですか?

 勝間 基本的には正社員化ですよね。でもそのためには、正社員で今ひとつの人たちの給料を下げないといけないわけで。

 --うん、そうですね、それは既得権を脅かされるので、なかなかね。

 この手の人々が意図しているは、雇用の問題から雇用主を免責することです。雇用の問題は当然、雇用主と労働者の間の問題でしかあり得ないわけですが、そこから雇用主を安全な場所に避難させ、労働者間の問題にすり替えること、これが勝間氏の主張が意図するところであり、諸々の御用学者の意図するところ、赤木智弘などを重用するエセ左派メディアの意図するところでもあります。

 なるほど確かに、現行の労働分配率を維持したまま、経営側の取り分に手をつけないまま、非正規雇用の待遇を改善するには、他の労働者の取り分を「奪う」必要が出てくるのでしょう。もちろん隣の労働者からすればいい迷惑ですが、その人の正当な取り分を「既得権益」と呼ぶことで、その当然の取り分を守ることが道徳的な非難の対象として描き出されているのが現状です。そしてこの非難、「既得権益」を守ろうとする人々の抵抗を、事態を改善できない原因であるかのように見せかけることで、経営側のさらなる免責を図るものです。

 そもそも非正規雇用が増えたのは人件費を削るため、労働者側の取り分を減らして経営側の取り分を増やすためです。非正規雇用の人々の取り分が不十分なのは、経営側にそれを持って行かれたからです。非正規雇用の現状をどうにかするためには、その経営側に持って行かれた分を取り戻す以外にありません。ところが、非正規雇用層にとっての不足分を補うべき財源として、この当然の対象である経営層を除外し、あたかも当たり前のように正社員層に財源を求める発想が、それ以外に選択肢がないかのように見せかける主張が幅を利かせています。法人税を減らし続けたから税収が不足しているのに、社会保障の財源として消費税増税しかあり得ないかのように語る、その手の連中と同じ稚拙なレトリックです。

 

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14 コメント

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Unknown (doushin)
2008-06-15 07:00:08
こんにちは。

ここらへんの問題は、俗な言葉で言えば「ロスト・ジェネレーション」問題ですよね。彼らは体制側も反体制側も嫌いで、カテゴライズされるのも嫌で、言論の空間で語られるのにも嫌気がさしているのでしょう。よって赤木のことも嫌いで、赤木を擁護・批判する人々のことも嫌いで、勿論こう語っている私のことも嫌いで、そして非国民通信さんのことも嫌いなはずなのです。何が何でも自分で決断することはせず(つまり、反体制にもならない)、人にせっつかれても決して首を縦に振らず(横にも振らず)、曖昧な態度を改めるよう攻められると、「曖昧なわけじゃない・・・と思うけど、まあ、、、(そう思ってくれていいよ)」と返答。主義主張が存在せず、あるいはその主義主張がとてもふわふわしていて、何故か先鋭化したり、そうかと思えばいきなり穏健派になったりするのです。

そんな少し上の世代を見て、今日も絶望しております。
法人税率高すぎだっつーの (oguri)
2008-06-15 09:21:45
>、あたかも当たり前のように正社員層に財源を求める発想が、それ以外に選択肢がないかのように見せかける主張が幅を利かせています。法人税を減らし続けたから税収が不足しているのに、社会保障の財源として消費税増税しかあり得ないかのように語る、その手の連中と同じ稚拙なレトリックです。
ーーーーーーーーーーーー

日本の法人税率は07年で40.7%

OECD加盟国の平均が27.7%。
世界平均が26.8%
EU平均が24.2%
http://kisoken.keikai.topblog.jp/blog/10006595.html

下げないと外資は入ってこれないし、日本の企業は海外に出てくっつーの。つか、でまくり。

この国の労働生産の効率の悪さと人件費の高さを考えると各国と比べて優位性とかすんげぇ低いわけ。

経営者の視点で経営を見るなら
顧客>経営(会社の維持、向上)>従業員
な訳。

これ普通でしょ?





経済に適しているの? (単純な者)
2008-06-15 11:46:25
こんにちは。

本論説は判りやすかったのです。

しかしリンクして貰ったWebサイトのこの両ご婦人の話す意味が理解しがたかった・・。一部経営論を語っているのでしょうね。使い物になるのかなぁ?そんなので。労使論としてもそうだし、断片的に語られる社会認識としても幼稚な様に読むしかないわけです。

何を生産するか、どんなサービスを商うのか知りませんが、こんな考えでは経営が実態として成立するんでしょうか、生産効率も低下するようにも思えるし、逆に不当労働行為とか軋轢が頻発して安定しないのではないですか?

投資家でもまっとうなのは実態レベルでこういう認識してたら回収できないし投資か仲間からも疎外されそうですし、経営者や工場責任者でしたら自ら失格宣言を早く出した方がいいでしょう。勤まらない!

唯一考えられるのは奴隷労働ですか。冗談ですが。
売文家ですかねぇ?一時こういう考えが通用するとしても、それは社会とそこの人々の劣化が許している時代なんでしょうね。

では。
Unknown (赤木智弘)
2008-06-15 12:09:29
いつも記事を拝読させていただいております。
私の名前があったので、少し意見を。

まず、私が考えていることは、マジョリティーである「安定労働層」すなわち家族を養える程の給料を得ている正社員とその家族のことですが、彼らが考え方を変えない限り、社会は変わらないということです。
そして、この点について非国民通信さんが「雇用の問題から雇用主を免責する」と考えているのと同じように、私は「雇用の問題を雇用主の問題に限定することは、雇用の問題から安定労働層を免責している」と考えているのです。

そもそも、「終身雇用」という枠組みは、決して雇用主の都合だけでできたものではありません。安定雇用を望む労働側と、それを組み入れて経営を安定化できる雇用主。そして右肩上がりの経済成長という両者の合意と状況からでき上がったものです。
そしてその終身雇用の枠組みこそが、就職氷河期世代を就職からはじき出した最大要因なのです。

その点について、安定労働層は雇用主以上になんら反省をしていません。そして方や「最近の若者は」と愚痴り、方や「雇用主が悪いのだ。(私は自分の生活を守っただけだ)(だから若者も私たちの手先になって戦うべきだ)」と開き直っているだけです。

そしてマジョリティーである安定労働層が今すぐに既得権益を放出することが、一番手っ取り早くワーキングプアを救い出す手段なのです。

雇用主から取り戻そうとしても、取り戻したものは「残業代が出ないから」などと言って、安定労働層が真っ先に持っていくのが常です(マクドナルド「みなし店長」の件など)。そのような「とにかくワーキングプアにお金を回すのだ!」という合意がされていない状況で、いくら雇用主が悪いのだ、経営者が悪いのだ云々言っても、それはただの富裕層と安定労働層間の闘争に過ぎません。
そして、闘争のネタとしてワーキングプアが利用されているに過ぎないように、私は考えています。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-06-15 12:44:28
>doushinさん

 そう、あらゆるものに対してネガティヴなところがありますね。ただ全てに対してネガティヴである一方で、何に対して「より」ネガティヴかを見てみると、政財界に対してよりも、それに批判的な人々に対してより強くネガティヴであるとも思うのです。そんな人々が二者択一を迫られたとき、消去法的な選択で政府与党を支持している、それが若年層、貧困層に自民党支持が強い一員かな、と。

>oguriさん

 何だこの稚拙な論法は、たまげたなぁ。

 まぁ、既に論駁され尽くした御用学者の主張を引き写されることに驚きは何もないのですが、経営者でも何でもない普通の人がこうした財界側のでっち上げを盲信しているところに深刻さを感じますね。

 そもそも日本の法人税率、理論上の値を使って最大限に見積もれば40%ですが、実際は諸々の優遇制度や抜け穴があり、実際に課される税率は30%程度です。これは日本と同レベルの経済力を持つ先進国と変わりませんね。もちろん、oguriさんが肩を並べたいと思っているのは例えば中国などの発展途上国でしょうか、日本よりも格段に貧しい国であれば法人税率も日本より低く、これが世界の平均を引き下げているわけですが、私は自分達よりも遥かに貧しい国とわざわざ肩を並べたいとは思いませんね。

 企業側の意見調査の結果としても、海外に生産拠点を移す理由として法人税の高さを挙げたところはほとんどなく、インフラや現地需要がトップに出てくるわけですが、その辺は無視ですか?

 人件費にしたところで、社会保障等の企業側負担分が極めて低く抑えられているため給与外の人件費コストは僅かに13%と、OECD諸国中ではアメリカと最下位を争っており、先進国の中では最も安く労働力を調達できる国が日本なのですが、その辺も無視ですね?

 それから、顧客のためを装って労働者に負担を強いる発想がワタミの社長と一緒ですなぁ。この辺はもう、とっくに何度も書いているので今さら繰り返しませんが。

>単純な者さん

 リンク先ですが、社会批判のようでいて同時に若者叩きだったり、正社員叩きだったり、貧困層叩きだったりもしますからね。ある意味では功成り遂げた、勝ち誇る両名の御高説みたいなところもあると思います。この手の人々が実際に経営を機能させられるかは甚だ疑問ではありますが、それが上手くいったとしてもこの人達は咎められない、この人達の言い分は受け容れられるのだろうなぁ、とも。

>赤木智弘さん

 商業媒体で活躍されている方につきましては、名指しで批判させていただいております。御了承を。

 さて、マクドナルドの例を挙げておられますが、マクドナルドは店長に残業代を支給することを決定しましたが、同時に店長手当(管理職手当)を廃止しました。赤木さんは「安定労働層が真っ先に持っていくのが常」と仰いますが、そのような事例は仮想のものに過ぎません。結局、雇用側と労働側の取り分は動いていないわけです。雇用側が労働側に回した分を、安定労働層が懐に入れている、それが赤木さんの世界観のようですが、実態に即さないことをいくら繰り返しても何の説得力もありません。むしろそのような虚構を広めることで、経営層を免責しているだけです。そして経営層を免責するために赤木さんの主張が有効だからこそ、ブルジョア媒体で赤木さんが重用されている理由だとも思いますよ。

 前のエントリでも書いたのですが、安定労働層は我々のママではありません。確かに我々の世代は安定労働層の両親に養われてきましたが、それはあくまで親だからであって、親でも何でもない無関係の安定労働層のポケットマネーで我々が養われているわけではないのです。雇用の問題に雇用主を含めず、労働者観の間でそれを完結させようとしても、それは親が助けてくれることを期待して泣き叫んでいるのと同じことです。
こんにちは (往楽斎)
2008-06-15 16:27:21
お久しぶりです。往楽斎です。結局の所は、経営側の都合で人事は動いていると考えても差し支えは無いと私は考えます。

この社説を読む限りでは、結局の所仕事場の環境を一切無視している伏しも見受けられます。更に現存の給料を減らした場合、我々の生存は確保出来るのだろうか?等々、多くの事を考えさせられます。

現在、景気が後退するとの見通しが有りますが、例えそうであったとしても果たしてこのまま我々の税金を上げるだけでやっていけるのでしょうか。正直、疑問もあります。

そもそもこの国自体が、企業を中心に事を進めているのであれば、資金を海外へにがさぬよう抜本的に尚且つ、目に見えるような対策が必要と私は考えます。

長文、駄文失礼を致しました。

様々な生き方が出来そうですが・・・ (レンタル携帯の末坊)
2008-06-15 17:35:31
僕みたいな零細企業を、「脱サラ」でやってますと、
どんなサラリーマンでも、「まあ、オレよりましだなぁ~」って、思えちゃいます。
そもそも、サラリーマンって、宮仕え、また、料給取り。
自営業のお客様は、僕にお金払ってくれる人。
料給取りでは、給料くれる人。つまり社長さん。
だから、どんな「馬鹿な社長!」って思っても、ニコニコ・ペコペコせにゃあなりません。
自営業者の性格にもよりますが、アンマリ欲張りいませんよ。
ただ、組合の横暴は甚だ迷惑、採用してやって、「なんだ!こりゃ!」って・・・、
誰でも頭来るんじゃないでしょうか?
自営業から見りゃサ、ラリーマンって自分の事しか考えてないなぁ~って思う人多いかもです。
でもね、これだけ日本の有為な若者がフリーターって状況は対策せにゃあなりません!
例えば、フリーター再雇用専門事業を興すとか、それには勿論非課税法人にするとか、知恵はイロイロ出そう。
日本の若者がこのままってのは可哀想じゃないですか!!


Unknown (非国民通信管理人)
2008-06-15 21:47:38
>往楽斎さん

 労働者側が経営側を慮り、経営側が権限を握る、片側にのみ寄っている状況ですからね。そういう状況下で、労働環境を一切無視して「何かしら仕事はある、働く気力の問題」などと言われても無理な話、単なる責任転嫁です。財界は景気後退の恐怖を煽ってさらなる犠牲を迫りますが、それ故に国内には使い潰された労働者という負の遺産が堪っていく有様でもあります、会社が潰れれば終わりだが、会社が儲かっていれば労働者が潰れても問題ない、そういう発想から脱却することですね……

>レンタル携帯の末坊さん

 零細企業なのに組合があるのですか? それはまた優良企業でございますね。ただ組合側の主張を横暴だと切り捨てる姿勢は、まさに典型的な経営者の発想かと。実際に経営者である人がそう考えるのは、まぁ当然とも思ってますが。
そういや、会社って (かなしいズボン)
2008-06-16 00:31:10
「会社は株主のもの」。もはや経営者のものでさえありません。

アメリカでは株主の利益を第一に考えない経営者は背任罪に問われる可能性があるとか聞きました。日本では現在どうなのか知りませんが、遅かれ早かれそうなるのでしょう。そして人件費などを大幅に削って株主に少しでも多い配当を配り続けることが出来た経営者には、御褒美として一般社員とは桁違いの高給が約束されるというわけです。

こんな状況では、株主や経営者が必要最低限の経費として、仕方なく投げてくれる給与という餌を、常雇用と臨時雇用の2種類の飼い犬たちは奪い合うしかないというわけでしょうか?
(赤木さんなどのご意見では)

例え戦争が起こったって、犬が飼い主になれるはずはないですしね。じゃあ、飼い犬をやめて野良(自営業)になったとて、これはこれでハンパな厳しさではないでしょう。困ったもんです。
Unknown (j10)
2008-06-16 01:22:43
oguriさんとのやり取り、拝見させていただきました。
法人税が破格の安さだ、という意見しか知らなかったので、
そういう見方があるとは驚きでした。
よろしければ、このあたりの事情についてより詳しく知りたいので、
本なり、Blogなりをご存知でしたら、紹介していただけると幸いです。

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