非国民通信

ノーモア・コイズミ

日本人の条件

2008-10-08 22:31:51 | ニュース

ノーベル物理学賞 日本人3氏 南部陽一郎氏、益川敏英氏、小林誠氏(産経新聞)

 スウェーデン王立科学アカデミーは7日、2008年のノーベル物理学賞を高エネルギー加速器研究機構の小林誠名誉教授(64)、益川敏英京都大名誉教授(68)=京都産業大教授=と米シカゴ大の南部陽一郎名誉教授(87)の3氏に授与すると発表した。授賞理由は南部氏が質量の起源などを理論的に説明する「対称性の自発的破れ」、小林、益川の両氏が素粒子のクォークが少なくとも6種類あることを予言した「小林・益川理論」による素粒子物理学への貢献。宇宙や物質の成り立ちにかかわる根源的な現象を理論的に解明し、素粒子物理学の基礎となる「標準理論」を築いた功績が評価された。日本人のノーベル賞は6年ぶりで、共同受賞は初めて。

 日本人のノーベル賞受賞者は2002年の小柴昌俊氏(物理学)、田中耕一氏(化学)以来。米国籍の南部氏も含めると、計15人になった。

 正直どこの新聞社の記事でも大差なかったので、とりあえずいつもお世話になっている産経新聞から引用しました。なんでもノーベル物理学賞を日本人3氏が受賞したそうです。聞くところによると賞金の分配は南部氏が50で小林氏、益川氏がそれぞれ25だとか。賞金の分配はさておき、時事通信こそ明示的にそうは書いていないものの、どこの新聞社も概ね「日本人3氏」と堂々と掲げています、ふ~む、日本人3氏ねぇ……

国籍法第十一条
日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。

 南部氏はアメリカ国籍を取得していますので、関係部局がサボってでもいない限り日本国籍は剥奪されているものと思われるのですが、どうなのでしょうか。日本政府は断固として二重国籍を認めていませんし、今後とも認めるつもりはなさそうです。アメリカと日本、二つの国籍の保有を日本政府が認めることは出来ないでしょう。南部氏がアメリカ国籍である以上、氏は日本国籍の保有者ではないわけですが、しかるにほぼ全てのメディアで「日本人」として報道されています。

 国籍による差別の色濃く残る日本では、日本国籍を保有しているかどうか、そこに意味がないわけではなさそうです。しかし、南部氏の例を見る限り日本国籍を喪失していたとしても、社会通念上の扱いは相変わらず「日本人」です。ならば二重国籍を認めてもいいのでは、と言いたいところですが、そこは譲れない点なのでしょうか。

 逆のパターンを考えてみましょう。日本国籍保有者が外国籍を保有する場合の逆、つまり外国出身者が日本国籍を取得した場合です。この場合はどうでしょうか? 社会通念上、日本国籍取得者は「日本人」と呼ばれるでしょうか? 昨年末、日本国籍取得者と「日本人」の格闘技の試合がありました(参考)。勝った「日本人」はこう言いました。「日本人は強いんです!」と。この発言者が檻に入れられるどころか英雄視され、主催団体や中継したメディアも何ら批判されることなく活動を継続していることから考えると、どうやら社会通念上、日本国籍を取得したからといって日本人と見なされるわけではないようです。

 結局、この社会で「日本人」として認められる条件はどこにあるのでしょうか。法律上は国籍の有無で隔てるものかも知れませんが、世論や報道がそれを気にかける様子はありません。日本人の条件は国籍にはないようです。ならばどこに? もしかしたら「血」でしょうか? 日本人の「血」、これなら日本の法律の根幹にある血統主義とも矛盾しません。DNAに拘る溶けゆく日本人らしい基準でもあります。

 とはいえ歴史を鑑みるに、日本は従来「イエ」の継承を重んじてきたのであって、「血のつながり」は軽視されてきたはずです。最優先されるのは「イエ」を引き継ぐことであり、別に血筋が途絶えようが「イエ」さえ残れば些末なことと、そう扱われてきました。これがいつの間にか「遺伝子を残す」などの文明発祥以前の発想に逆転され、血統主義が幅を利かせているのが現代です。この血統主義もまた「単一民族論」や「万世一系」の神話と同様、戦後教育の産物なのですが、中にはウケが良いのもあるのですなぁ。

 

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29 コメント

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ノエルザブレイヴ (あるいは)
2008-10-08 22:50:00
いいこと、名誉あることをした人は「日本人」、悪いこと、不名誉なことをした人は「外国人」という側面もあるかもしれませんね。「外国人犯罪者」の話とか、大相撲とか。民族主義者は「悪いことは全てよそからやってきた」と思いたいかもしれません。
追加して思うこと (ノエルザブレイヴ)
2008-10-08 22:57:55
あと、「血筋」「父系」にこだわるのは(多分に民族主義者が嫌っているであろう)中国や朝鮮など大陸的な考え方のはずですがね。
Unknown (仲@ukiuki)
2008-10-08 23:00:23
今日、受賞が発表された下村氏も、
http://nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/2008/
では「USA」と記載されてますね。

南部さん、下村さんを「日本人」として大々的に報道しているのは、重国籍容認への意欲がマスメディアの中で強まっている証拠だといいのですが、単に「血統主義」の表れ、という非常にお寒い悪寒もします。
黙然日記さんにもコメントしました (Bill McCreary)
2008-10-08 23:21:18
ように、故・大山倍達は日本国籍を取得した際韓国籍も保持していたので、二重国籍者でした。韓国も二重国籍は認めていません。

日本の場合、国籍法により外国の国籍を取得した場合自動的に国籍を失うとありますが、現実問題として日本政府がそれを確認するのは多くの場合困難ですから、実質的には二重国籍者が多いと考えられます。

今回の南部氏は形式的には日本国籍を喪失しているのでしょうが、彼の(旧)本籍地の戸籍等は(たぶん)物理的に排除はされていない可能性があります。

けっきょく国籍というのは他国の国籍法と密接なつながりがあるわけで、一刀両断に国籍のはく奪、喪失というのはなかなか困難なようです。

すいません、あんまり本質的な話ではないかもしれませんが。
二重国籍といえば有名なあの人も (poppo-x)
2008-10-09 00:46:03
こんにちは。いつも興味深く貴ブログ記事を拝読させていただいております。

そういえば、元ペルー大統領だった藤森謙也氏(アルベルト=ケンヤ=フヒモリ)も二重国籍者でしたね。
だからこそ、かれは「ペルー国籍者」としてペルー大統領職に就任できたと同時に、ペルー官憲の追及から「日本国籍者」を理由に日本国からの引渡しを拒否されて逃れることができたんでしたね。
Unknown (hana)
2008-10-09 02:11:33
主旨からずれますが、ノーベル賞にせよ、オリンピックにせよ、国籍(国家)を強調する日本の偏狭的な民族主義メディアにはうんざりします。日本にゆかりのある人がその業績を賞賛されることは格別うれしいことですが、そういった偉人たちのことは国籍に関係なく紹介することがメディアの役割だと思います。メディアは日本人の視野を狭めることを意図しているのでしょうか? 個人の努力に負うところが大きいものを、都合の良い時だけ「国家の業績」に格上げするのもなんだか・・・。日本(人)を誇りたいのなら、「貧困世帯の少なさ」「省エネ」なんかを他国と競い合うことを誘導する報道でもすればいいのにと思います。
Unknown (大木銀太郎)
2008-10-09 09:48:39
 初めまして。いつも拝見させて頂いています。

 上のBILLさんのコメントの補足となります。

 大山倍達さんの話ですが、少し誤解があるようです。私の知り合いの在日家族にも似たような誤解をもたれた話があります。兄弟で帰化の時期が違うわけですが、70年代に帰化した兄は今だに韓国の戸籍に名前がありますが、90年代に弟が帰化した際は、自動的に韓国の戸籍が削除されました。いわゆる、戸籍係の「物理的は処理」の為と思われますが、しかし、兄が韓国の戸籍に名前があったとして、「二重国籍」にはなりません。大山倍達氏も件もこれと同じと思います(私もどこかの本で氏が二重国籍であったような記載を見ましたが、それは勘違いとすぐ思いました)。

 何故なら、日本には「外国人登録証」があります。勿論韓国にも「似たもの」があります。

 大山氏が、日本の国籍を持ちつつ、同時に「外国人登録証」を持っているのならば、「二重国籍」であることになりますが、実際は「不可能」です。
 もしくは、韓国と日本の両方のパスポートを持っているとか(これは、日本と韓国では完全な法律違反でそれは双方から偽造となります。犯罪です)。

 また同時に日本在住の大山氏が外国人登録証を持たずして、韓国の大使館にパスポートを申請することも書類上「不可能」です。、また韓国で大山氏がパスポートを申請することもできません。住民登録番号がないからです。

 要するに、前述の兄弟の話と同じく、役所の怠慢で戸籍削除が行われていなくても、「現実」、国籍維持、つまりは二重国籍は「無理=ありえない」というのが、日本と韓国の法律であります。両国ともに国民を「しばる目」に抜かりがないのが現状です。それこそ「戸籍表示」などに「力」を与えていません。

 ですから大山氏が「戸籍に名前がある」から「二重国籍」であるというのは、話としてはネタになっても実際性がないというのが現実です。

 今回のノーベル賞受賞者も同じではないでしょうか。二重国籍を認めないとしている日本政府が、戸籍係の怠慢がどうであれ、ポスポートが米国国籍ならば、たとえ「帰国」してもそのまま日本に居住するのであれば、「外国人登録」が成されます。

 本文の内容には外れるレスとなり申し訳ないですが、BILLさんの解釈は心情的には理解できても、実際は「きちんと線引きの法律=外国人登録、パスポート申請」がありますから……余計かもしれないと思いつつ、勝手に補足させて頂いた次第です。

 日本と韓国の「二重国籍を認めない」というのは、決して「ザル法」ではありません。ザル法でない故に両国で「外国人差別」が強いとも言えそうです。

 それでも韓国では「二重国籍」を認める方向に行きそうです。日本では、この先どうなりますか。

 長文で失礼しました。BILLさんの解釈に訂正という事ではありません。あくまで補足です。BILLさんも御理解の程を宜しくお願いします。
Unknown (taka)
2008-10-09 11:26:54
ただ単に日本で生まれて見た目が日本人である人を「日本人」っていってるだけなんじゃないですかねぇ。

果たしてオノ・ヨーコは日本人なんでしょうか?
手柄は国のものに、過失は個人の責任に (nanami)
2008-10-09 12:33:23
もしもこれが銃乱射事件だったら、「アメリカの大学で起こった不祥事」で済まされていたような……。
日本語というバリア (Masai)
2008-10-09 15:06:01
最近、拝見するようになった者です。鋭い視点とperceptionの土台を的確に抉る思考と文章に大変勉強させてもらっています。

さて、「何が日本人たらしめているか」ですが、まあ、「日本人論を論じる者が日本人だ」などと杉本良夫さんとか森巣博さんなどはおっしゃるわけですが、皆さんがが指摘されているような要素に加え、決定的なのは「日本語」を話すという要素は無意識に重視されていますよね。必要条件としての日本語を話すこと。これは決して十分条件とも、必要十分条件とも位置づけられてはいないでしょうが、例えば、黒人演歌歌手Jeroがいくら日本語で「日本の心」演歌を歌っても「日本人」とは扱われないでしょうし、中国残留孤児や植民地日本で日本語を教えられた人たちも「日本人」とは扱われていないという現状がそのへんのinvisibleなラインとしてあるのでしょうね。

最大の非関税障壁「日本語」。これがもたらすバランスシートはどうなんでしょう。一部「憂国の志士」たち(でも絶対自衛隊には入らないのですが)が守りたい「ニッポン」にとって一層マイナスに向かって行くのでしょう。

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