非国民通信

ノーモア・コイズミ

役に立っていると実感するのは難しい

2012-08-28 23:04:32 | 社会

役に立てず申し訳ない…復興支援の市職員自殺?(読売新聞)

 東日本大震災の復興支援で盛岡市から派遣されていた岩手県陸前高田市の男性職員(35)が7月、乗用車内で首をつった状態で死んでいたことが24日、わかった。

 「自分の希望で被災地に来たのに、役に立てず申し訳ない」との趣旨が書かれた家族宛ての文書が残されており、県警は自殺の可能性が高いとみている。

 陸前高田市などによると、男性は今年4月、1年の任期で盛岡市道路管理課から派遣された技師。水産課で漁港の復旧を担当していたが、7月22日、同県遠野市の国道脇に止めた車の中で死んでいるのが見つかった。

 県市町村課によると、県内の沿岸11市町村には8月1日現在、県内外の自治体から計241人が派遣されている。

 

 よくウチの母親が「首をつるといいよ」と言っていたのを思い出しました。別に首吊り自殺を他人に迫っているわけではなく、頚椎の牽引を指しているらしいのですが、微妙に酷い表現です。それはさておき、復興支援に派遣されていた公務員に自殺者が出てしまったそうです。残された文書によれば「(復興の)役に立てず申し訳ない」とのことですが、状況が状況だけに目に見えた成果が上がらなかったとしても故人を責めるわけにも行かないでしょう。しかし、過剰に責任を背負い込んでしまった人がいるということなのかも知れません。

 成果が上がるかどうかは多少の権限を有する個人の努力だけでどうにかなるというものではなく、諸々の諸条件によっても左右されます。誰がやっても上手く行くような状況もあれば、誰がやっても失敗するような状況もまたあることでしょう。放っておいても企業が集ってきて経済活動を展開してくれる都会と、産業は皆無で若者は外に出て行くしかない農村部とでは、前者に無能な、後者に有能な首長が着いたとしても成功を収めるのは前者になってしまう、そういうものだと思います。そして世間は結果から努力を類推するものです。誰がやっても上手く行く状況であろうと成功者は称えられ、誰がやっても難しい状況では、本人の尽力の如何に関わらず責めを負わされがちなのではないでしょうかね。

 あるいは自衛隊のようにどこに行っても感謝感激雨あられ、向かうところ全てで歓迎されるような組織の一員であったなら、この公務員男性はもう少し「役に立っている」と実感できていたかも知れません。自衛隊が被災地から撤収した際には自衛隊への感謝の式典を開く自治体もありましたし、寄せられた賞賛の声は数限りないものです。一方で、自衛隊「以外」の公務員の場合はどうでしょう。警察や消防ならいざ知らず、自殺してしまった男性職員(35)のような「普通の」公務員であれば、罵倒されることの方が多かったとしても不思議ではありません。

 自殺にまで至らずとも、自分の仕事ぶりが世間に認められないことを気に病んでいる人は多いと思います。世間の評価など気にしないと表向きは強がっている人でも、内心はいかがなものなのか、自衛隊とは違って決して感謝されることもなければ賞賛されることもない、そのような日々の連続に「役に立てず申し訳ない」と感じてしまう人もいるのではないでしょうか。実際は役に立っているのかも知れませんが、公務員が住民のために尽くすのは当たり前と、世間の扱いはそんなものです。このような事態が続けば、自己肯定感を失って追い詰められてゆく人は必然的に増えていくことでしょう。

 実は社会に必要な役割であったとしても、それが世間に認められているかと言えば全くそのようなことはありません。例えば薄給で名高い介護職などどうでしょう。ブラック率の高い飲食の世界も、時間当たりに直せばアルバイト以下の給与で働いている人も多いです。そうでなくとも非正規雇用を都合良く使い捨てることで人件費を抑えている、それでコストを下げては廉価なサービスを提供している会社が今や当たり前になりました。諸々の低賃金労働の存在によって、今の日本社会は成り立っています。しかるに彼らが感謝の対象になることなどあり得ないのが実態です。労働者の低賃金なくして成り立たないような経営でありながら、その経営を成り立たせてくれる人々には甚だ冷たい、それが我々の社会の「普通」です。世間の賞賛や感謝を集めるのはほんの一握りの人々だけ、自分は役に立っていないと気に病む人が減ることはなさそうです。

 

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4 コメント

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Unknown (プチ左派)
2012-08-29 01:00:17
阪神淡路大震災の時、被災地で仕事をしていた神戸市職員が被災者に暴行を受けるという事件があり、その加害者をジャーナリストの黒田清が妙に擁護していました。

私はこの黒田の記事を読んだ時「こんな理不尽な話があるか」と怒りがこみ上げたのを覚えています。被災者であれ、自分の不運不満を、それも無関係の他人に暴力という形でぶつけるなど到底許されることではない。しかし、相手が市の職員という「公務員」なら認めてしまう、それが当時左派言論を代表していた黒田から出た発言だったことに失望したのです。

その黒田の意志は大谷昭宏へと受け継がれています。大谷も左派を自認しながら公務員バッシングに血道を上げ、オタクに対する歪んだ差別意識を炸裂させています。

こうした一連の旧左翼勢力の姿を見るにつけて、私は彼らとは距離を置いた左派でいようと「プチ左派」を名乗っているわけです。
Unknown (くり金時)
2012-08-29 06:40:03
ま、自分の仕事は放ったらかしで、国政レベルの物事に口出しする、どこぞの都知事や口ばかり達者な市長が「庶民受け」する時代だから、仕方ないと言えば、仕方ないが。全く嫌なものだ。
これは重要なご指摘ですね (Bill McCreary)
2012-08-29 21:54:07
>放っておいても企業が集ってきて経済活動を展開してくれる都会と、産業は皆無で若者は外に出て行くしかない農村部とでは、前者に無能な、後者に有能な首長が着いたとしても成功を収めるのは前者になってしまう、そういうものだと思います。

橋下はどうだか知りませんが、石原が、新銀行の失敗やオリンピック招致など、お粗末極まりない行政をしていても東京都のもつ存在感と経済力をもってすれば失敗が目につかないというものです。だいたい尖閣騒動だって、東京の首長だからあんなバカげたことができるわけで。もっともあれは寄付が殺到したんだから、どんだけ馬鹿なんだかというレベルの話ですが。

Unknown (非国民通信管理人)
2012-08-29 22:58:58
>プチ左派さん

 公務員(自衛隊は除く)を「絶対悪」のごとくに描き出す風潮も強い中で、公務員に対しては何をしてもいいみたいなノリを恥じない人も多いですからね。そして公務員バッシングのノリが電力会社にも向けられるようになったのが震災後で、一見すると公務員バッシングには批判的であるかのごとき態度を取ってきた人でも必ずしも例外ではなかったりするわけです。

>くり金時さん

 自身の職責を果たすよりも、他人を咎め立てしていた方が有権者のウケは悪くないのでしょうね。国民の期待することがそもそも間違ってしまっている気がしてなりません。

>Bill McCrearyさん

 なにしろ、よほどの自然災害にでも見舞われない限り何もしなくても東京は日本中の富を吸い上げる首都なのですが、そうした構図に無自覚で、繁栄を当たり前と感じている人が首都圏の住民には多いので派内でしょうかね。そして難しい状況に対処するより、楽な道を選んだ方が業績として認められるようになってしまうのでしょう。

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