非国民通信

ノーモア・コイズミ

橋の下からさらに下へ

2008-06-26 23:03:50 | ニュース

橋下知事「国の無駄遣い納得できない」 自民本部で講演(朝日新聞)

 「美辞麗句を言われても、今の国で行われている無駄遣いを見せられると国民は納得できない」――。大阪府の橋下徹知事は25日、自民党本部で開かれた「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」(座長・園田博之政調会長代理)の会合で講演し、中央省庁などの無駄遣いを批判した。

 会場は自民党国会議員ら数十人が集まる盛況ぶり。「行政に携わって4カ月の僕が皆さんに政治の話をするのは大変恐縮だが」と切り出した橋下知事は、後期高齢者医療制度が批判されているのは国の無駄遣いが背景にあると指摘。「やはり、中央のお役人さんが自分たちの身をどれだけ削ったのかということが、国民にはわかりやすい」と述べ、国家公務員の人件費削減などを求めた。

 橋下知事は前日、人件費を大幅削減する府の予算案を発表したばかり。出席した山本一太参院議員は「『行動で示さないと国民の理解は得られない』というのが印象的だった」。片山さつき衆院議員は「国の来年度予算をつくるうえで、大阪府を下回っちゃいかんという気持ちでやらないといけない」と話した。

 無駄遣い撲滅は結構なんですが、何が無駄かを分かっていることが前提です。無駄ではないものを削って無駄なものには手をつけない、それでいて「無駄を削った」と豪語されても薄ら寒いばかりなのですが、まぁ往々にして中身は問われないものでもあります。そのツケはやがて国民に回ってくるのですがね。

 大型事業には軒並み手つかずで公務員叩きを繰り返しているだけの橋下が財政再建の有効策を打ち出せるとは思えないわけですが、しかるに政治の世界は今や悪役とヒーロー役が設定された勧善懲悪の舞台、聴衆と化した有権者が誰に喝采を送るかは初めから決まっています。後期高齢者医療制度を強行採決した小泉純一郎が今なお讃えられ、それに抵抗勢力として反対した中央省庁が批判の矢面に立たされている現状を考えてください、やったことが何であろうと、賞賛される人と非難される人は最初から決まっているのです。

参考、
厚生労働官僚のモラールが崩壊しかかっている件(BI@K accelerated: hatena annex, bewaad.com)

 嫌われ者を叩いていれば支持は集まる、気にくわない奴が叩かれていれば満足できる、それがいかに不毛であったとしても関係ない、そんな状況でもあります。拉致被害者家族会を見てください、拉致問題を何一つとして進展させることのなかった自民党政府と家族会の関係はどうですか? ただ対岸から相手を罵るだけの政府に失望して袂を分かったのは一人ぐらいしかいません。「進展がない」ということはそれほど大きな問題ではないのです。大事なのは憎き北朝鮮への敵視が続けられていることであり、進展がないことに対してではなく制裁解除の可能性にこそ彼らは憤るわけです。

 橋下と支持者の関係もそれと同じです。支持者にとって重要なのは自分達が憎悪し蔑視している公務員への攻撃が継続されることであり、財政再建の結果など問われません。財政再建がどうにもならなかったとしても、それについて橋下の責任が問われることはないでしょう。例によって「抵抗勢力」に責任が押しつけられて終わるだけです。拉致被害者家族会が求めているのが進展ではなく制裁であるように、有権者が要求しているのは財政再建ではなく公務員叩きなのです。せいぜい違うのは拉致問題の非がどこにあるかは明確なのに対し、財政問題は純粋に憎悪と偏見に基づいて犯人捜しが行われたことだけです。

一戸建てに住んで何が悪い?

 先日に書いたこのエントリ、抗議の先頭に立っていた労組委員長が「一戸建てに住んでいる」とポリから非難されているのを扱ったものです。馬鹿馬鹿しい言いがかりですが、それでも「恵まれている」ことを理由に抗議する資質を問うような発想は根強いわけです。私財を投げ打つなど自分を犠牲にすることで、ようやく他人に何かを訴える資格ができる、そういう発想は根本的な誤りですが、同時に幅広く通用し続けているものでもあるのです。

 で、橋下曰く「中央のお役人さんが自分たちの身をどれだけ削ったのかということが、国民にはわかりやすい」と。ヒャッホー、欺される人が多そうです。我々は自分を犠牲にしたのだから、お前も自分を犠牲にしろと、そういうシナリオです。でもいいですか、自己犠牲を模範としている以上、必ず我々全員にも犠牲が求められる、自分を犠牲にすることが要求されるのです。国民(府民)が犠牲にされそうになったとき、そこで抗議しても無駄です、「自分達も骨身を削ったのだから」と押し切られてしまうだけです。

 そもそも「我が社は経営難なのでこれだけ社員の給与を落とし、待遇を悪化させました」と誇らしげに喧伝して回る社長がいたら、その人には入院してもらった方がいいですよね? ところがそんなイカレタ親分が賞賛されるのが現状なのです。ここで肯定的な価値を持っているのは給与削減、待遇悪化であり、それが追求される価値です。片山さつきは「大阪府を下回っちゃいかんという気持ちで」と語りましたが、実際に追求されるであろう方向性は逆です。「大阪を下回ろう」歓迎されるのはそちらですから。「我々は他社よりもしっかり給与を払ってやろう」そう考えるのではなく「我々は他社よりブラックです」と、そうしたアピールが歓迎されるのです。

 そもそも自分を痛めつけることで理解を得ようというこの発想、要は物乞いとして同情をひくために子どもの手足を切り落とすのと同じではないかな?と。

 

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8 コメント

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官僚と公務員と (単純な者)
2008-06-27 13:19:58
こんにちは。

主論に触れる問題として官僚と公務員と、一般的な経済と財政と、「高級官僚」と「官僚と公務員」との区別とか、橋本府知事が自営業として経営してきた筈の弁護士事務所と府財政との大きな違いについても、まさか彼も知らないはずはないのでしょうが。

公務員の給料を例え余得分も勘案して適切な水準にもっていこうとしたりしてもそれの何がどう府民の利益につなげる為の施策になると考えているのか意味がわかりませんね。

管理人さんの言われるスケープゴートにしかならないし、公務員のモチベーションが低下して困るのは府民だし、地域経済の消費分野での低下になって商店街も困るでしょう。

府財政が大赤字だと言うけど、その主原因とされる大規模事業・施設建設を官僚がやりたがるのは不味くなっても責任逃れと一時の隠蔽に地方債を発行できるからなんでしょう、そして大規模事業・施設建設に投じられた財政資金が地方公共機関にどれだけの巨額の借金を押しつけたか、そのうちのどれだけの部分が地域に落ちるものなのかももう判りそうなものです。

そういうのを造っては後に増えた天下り先の役職人員とその給料や施設の維持費などを負担するのは地域住民ですからね。

実質地域経済を支える消費に向かう方の人件費を削ってしまうとは何も判ってない人間と言われても仕方がないようです。回り回って府民が困りそうですね。

では。
拉致問題とか (ノエルザブレイヴ)
2008-06-27 20:31:26
拉致問題の非がどこにあるかは明確である、それは私もそうだと思います。しかしそれが却って日本側の戦略的自由度を狭めている気もするのです。
なまじ相手が悪いということがものすごく明らかである(少なくともそう思われている)ばかりに、「引いてはいけない、譲歩してはいけない、悪い奴に屈してはいけない…。」と半ば義務的・強迫的に考えてしまうのではないかと。普通の取引では自分の提示した条件が99%受け入れられたなら大成功と喜ぶのでしょうが、拉致問題では100%、いや120%主張を受け入れさせられないと満足できなくなっている、1%の譲歩ですらも「悪い奴に屈した」と考えてしまう、そんな気がします。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-06-27 23:09:12
>単純な者さん

 そうそう、状況や立場の違いがあって、それぞれ適切な方法論も変わってくるわけですが、色々なものから目を背けて公務員を悪役に仕立て上げ、そこで完結させてしまうのが橋下とその同類の方法論であり、その支持層の思考回路でもあります。府民の賢明な判断を望みたいところですが、後先考えずに「気に入らない奴」を叩くことにばかり血道を上げていると……

>ノエルザブレイヴさん

 もう一つ言えば、一方的に相手が悪いだけに、ある種の「居心地の良さ」が見出されているようなところもあるでしょうか。この問題に関しては自分に非がないだけに、他の問題と違って優位に立てると言いますか…… そうは言っても、落としどころを見つけていかないと拉致問題そのものでさえ何一つ進展させられないわけですけれど。
そんな風に考えていた時期が… (ニュースコープ)
2008-06-29 22:26:56
>>政治の世界は今や悪役とヒーロー役が設定された勧善懲悪の舞台
……そんな風に考えていた時期が俺にもありました(苦笑)。

いや、本当は全く笑おうに笑えぬ深刻な問題なわけですが、子どもの頃から特撮ヒーローが好きだった自分としては、誠に恥ずかしながら中高生ぐらいの頃、政治の世界にも「正義のヒーロー」を求めていた時期があったのは事実です。
ただココで取り上げた人々との決定的な違いは、私は割と家族や学校の先生に「アンチ自民」が多い環境で育ったせいか、「今の日本を支配している自民党という『悪の組織』はいつか野党(まだ土○氏や辻○氏、菅○人氏らが元気だった時代です)という正義のヒーローによって打ち倒され、真に平和や人権が守られる社会が来るに違いない。皆もそれを望んでいるようだし、夜明けは近いのだ」という信念に突き動かされて今まで生きてきたわけですが、その結果は……(あの郵政選挙の後、本当に長期間に渡って精神に変調を来しました)。
いくらでも笑って下さって結構です。

まぁ私1人が笑われる分には勝手ですが、世の多数の人々が私と同じヒーロー願望を持ちつつ、私とは全く正反対の方を向いている構図……何か色々な意味で情けなくならずにはいられません(私事ながら、昨日も中学の同級生の1人がネトウヨ化していると分かり、orzしたばかりです)。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-06-29 22:58:08
>ニュースコープさん

 私も10代の頃までは政治を善悪で考えがちで、何かが上手くいかないのは政府に「悪い奴」がいるからで、「善」の指導者が政権に就けば何でも上手くいくと、そう思っていた頃がありました。正義のヒーローが悪者を駆逐してくれる日々を待った時代もありましたが、しかるにヒーローとして華々しく登場したのは―――
国際児童文学館について (特命希望)
2008-08-11 19:45:10
こんばんは。

まず最初にお伺いしたいのですが、この非国民通信では国際児童文学館の統廃合について取り上げる予定はあるでしょうか?
僕はぜひ取り上げていただきたいと思っています。それは次のような理由からです。
国際児童文学館についてあちこち検索していたら、「大阪市問題まとめサイト」なる橋下シンパらしきブログにぶつかりました。
そこでの記事と賛同者の発言がどうも、どうせ利用者は少ないからつぶせとかいう理屈なので「それはおかしい」と考え、議論に飛び込んでしまいました。

そこで僕は以下のような発言をしました。
http://osakasi.livedoor.biz/archives/50941908.html#comments

(引用開始。>無しが僕の発言です)
>研究メインだしなー大学が抱えてもいいんじゃないの。売り払って。貴重なマンガと五月蝿いから、京都精華大学の京都国際マンガミュージアムに合併とか看板付け替えで独立してやってけばいいよ。たかるな

何で漫画専門資料館がもっとあってはいけないのですか?秋葉に行けない漫画オタクにとっては頼もしい限りでしょうに。
あと漫画ミュージアムは小学校の校舎跡の再利用施設です。国会図書館の子供会館(?)より多い蔵書をどうやって受け止めるのですか。重複した資料はポイされるかもしれないんですよ。あと、漫画は保存されても良くて小説や絵本は破棄されてよいのですか。

>「知事は小さいときに絵本を読んでもらったことはありましたか」と問われ、「私の母は昼も夜も仕事をしていたので、読んでもらったことはありません」と応じる。

( ;∀;)イイハナシダナー

自分が貧しい環境で苦しめば他者に同じ苦痛を味わわせる政策を実行して良いことにはなりません。
なんで他人の過去の話で僕やほかの府民が本を読みに行く権利を潰されないといけないんですか。

(引用終了)

長々と書き込んでしまいましたが、管理人さんはどのように思われるでしょうか?
ああ、案の定! (特命希望)
2008-08-11 19:51:36
追伸です。
大阪市問題まとめサイトの管理人氏は赤木智弘シンパのようです。
>
平成日本タブー大全2008
>
http://osakasi.livedoor.biz/archives/50968354.html
Unknown (非国民通信管理人)
2008-08-11 22:14:47
>特命希望さん

 恥ずかしながら国際児童文学館については詳細を知らず、手に余るものではあるのですが、考え方としては特命希望さんに同意します。営利施設でもないのですから、仰るように単純に利用者の多寡で判断すべきものではありませんし、むしろ市場に出回らないものこそ公共の施設で保管しておくべきでしょう。

 それにしてもまぁ、赤木智弘にしても問題のブログにしても、要は他人の権利を否定することに躍起になっているだけというか、それが高じて住民なり国民なりの権利を否定していく政治家と手を携えていく、この辺がまさに国民の生活を良くしていく上での「抵抗勢力」と言うべきでしょうかね。

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