非国民通信

ノーモア・コイズミ

慎重な対応を求めたって……

2018-07-08 22:38:40 | 雇用・経済

「雇い止め」相談2千件増 無期転換ルール影響か(共同通信)

 厚生労働省は27日、2017年度に各地の労働局などに寄せられた民事上の労働相談のうち、「雇い止め」に関する相談が前年度比約2千件増の約1万4400件だったと発表した。

 同省は、有期契約労働者が5年超働けば無期契約に移行できる「無期転換ルール」が今年4月から本格的に始まったため、事前に契約を打ち切るケースがあったとみており、担当者は「ルールを意図的に避ける雇い止めは望ましくない」と、企業に慎重な対応を求めている。

 

 さて無期契約への移行を回避するための雇い止めが発生する可能性は、以前より指摘されてきたことです。「ルールを意図的に避ける雇い止め」は労働相談件数に表れるのに先だって、随所で事例が挙がってきたものでもあります。ただ、この雇い止めが発生したこともさることながら、悪質な法律逃れを規制するための制度がしかるべく用意されていない、という点もまた問われるべきものがあるのではないでしょうか。

 企業に全面的な自由を与えたまま無期雇用への転換ルールを作った場合、多くの企業は抜け穴を探します(それが日本的経営の倫理観ですから)。穴の空いた瓶に水を注いでも、底から抜けてしまうようなものでしょうか。当然ながら、穴をふさぐことも考えなければ片手落ちになってしまいます。しかし、そこまでやる意識が行政には欠けている、というのが実態と言わざるを得ません。

 非正規社員を永遠に非正規のまま使い倒したがっていた人々にとって、無期雇用への転換ルールは悪夢でしかなく、そのルール導入へ反対するための御為ごかしとして頻繁に語られてきたのが「(無期雇用への転換ルールを作ると)非正規雇用の雇い止めが増えるぞ」というものでした。この御為ごかしによって、非正規社員を非正規のまま使い続けたい人々は、あたかも「非正規社員のため」を思う風を装いながら無期雇用への転換ルール策定に反対してきたわけです。

 そこで厚労省の担当者曰く「ルールを意図的に避ける雇い止めは望ましくない」とのことで、「企業に慎重な対応を求めている」そうです。「慎重な対応」って何でしょうね? 昨今は弱腰の大手労組に代わって総理大臣が賃上げ目標を掲げたりもするわけですが、しかるに企業側には応じる義務もなければ、応じなかったことによる罰則も何もないわけです。政府側も「頑張ってます」というアリバイ作りまでは出来るのかも知れませんが――しかし企業に逃げ道を残したままというのが現実です。

 不安定な非正規・有期雇用は当事者の生活上のリスクであるばかりでなく、その多さは日本社会のリスクでもあります。収入が少なかったり不安定であったりする労働者は当然ながら消費に回せるお金も少なく、必然的に消費低迷の要因となり、日本経済衰退の一因とならざるを得ません。そして生活の安定しない人は、望んだとしても家庭を持たず子供も産まない人が多い、日本社会の少子高齢化を進める原因ともなっています。加えて現役時代の収入が少ない人は現行制度上、生存が可能になるレベルの年金を受給できる見込みもありませんので、未来は良くても生活保護受給者の激増、最悪の場合はスラム化でしょうか。

 日本国のことを考えるなら、日本で働く人を豊かにすることが欠かせない、薄給かつ不安定雇用という二重苦の日本式非正規雇用を根絶することは不可避と言えます。そのために有期契約の労働者を無期契約に転換することは当然の施策なのですが、「ルールを意図的に避ける雇い止め」を行う事業者に「慎重な対応を求め」るだけで罰則も何もないのなら、穴の空いた器に貴重な資源を流し込むようなものです。法の趣旨を逸脱したルール逃れを行う事業者に必要なのは、その自由の尊重ではなく、罰ではなのですから。

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