非国民通信

ノーモア・コイズミ

賛同者も多いようではありますが

2019-03-10 21:54:04 | 社会

医師が「死」の選択肢提示 透析中止、患者死亡 東京の公立病院(毎日新聞)

 東京都福生市と羽村市、瑞穂町で構成される福生病院組合が運営する「公立福生病院」(松山健院長)で昨年8月、外科医(50)が都内の腎臓病患者の女性(当時44歳)に対して人工透析治療をやめる選択肢を示し、透析治療中止を選んだ女性が1週間後に死亡した。毎日新聞の取材で判明した。病院によると、他に30代と55歳の男性患者が治療を中止し、男性(55)の死亡が確認された。患者の状態が極めて不良の時などに限って治療中止を容認する日本透析医学会のガイドラインから逸脱し、病院を監督する都は6日、医療法に基づき立ち入り検査した。

 

 日本維新の会の参院選比例区公認候補である長谷川豊氏は、かつて「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」と主張して注目を集めました。結果として氏は当時出演していたテレビ番組から降板することとなったわけですが、その反面では一定数の賛同者がいたもので、だからこそ政党の公認も得られたと言えるでしょうか。

 さて今回報道の「公立」福生病院では、ある意味で長谷川豊氏の主張したことを実践していたようです。患者本人や遺族が最後の瞬間まで後悔しなかったかはさておき、医療費の公的負担は少なく済んだのかも知れませんね。また引用元では医師の主張も伝えられていますが、それを読むと医師側の強い信条あっての判断であることが分かります。

 

 センターの腎臓内科医(55)によると、さらに女性は「透析をしない。最後は福生病院でお願いしたい」と内科医に伝え、「息が苦しい」と14日に入院。ところが夫によると、15日になって女性が「透析中止を撤回する」と話したため、夫は治療再開を外科医に求めた。外科医によると、「こんなに苦しいのであれば、また透析をしようかな」という発言を女性から数回聞いたが、苦痛を和らげる治療を実施した。女性は16日午後5時過ぎに死亡した。

 外科医は「正気な時の(治療中止という女性の)固い意思に重きを置いた」と説明。中止しなければ女性は約4年間生きられた可能性があったという。外科医は「十分な意思確認がないまま透析治療が導入され、無益で偏った延命措置で患者が苦しんでいる。治療を受けない権利を認めるべきだ」と主張している。

 

 しかし医師の言う「正気」とは、いったい何によって担保されるのでしょう。人の気分なんて、いつだって変わるものです。180°主張を翻す政治家だって当たり前、生活環境の変化で考え方が変わるのも当たり前、何かのきっかけで認識が改まるのも当たり前です。しかるに一定時期の意思表示だけを「正気」と扱い変更を認めないとなると、いよいよ以て医師への警戒が必要になりそうです。

 総じて延命色の強い医療行為には否定的な風潮が支配的ではあります。終末期医療にかかる費用には諸々のデマも飛び交うところですし、健康な人の「延命治療は不要」という声を大きく取り上げて、実際に延命治療が行われている現場へ不要論を吹き込もうとする政治家やメディアも少なくないわけです。

 とはいえ、健康なときと危機的状況に見舞われたとき、そこで下される判断は同じなのでしょうか。健康なときほど「延命治療なんていらない」と、そう思う人が多いのはなんとなく頷けます。しかしいざ、死にそうになったときにも同じ感覚を持ち続けているのかどうか、そこは私には分かりません。

 ここで取り上げられている死亡した患者の場合も然り、まだ状態が良い頃と、実際に透析治療を中止して状態が悪化したときでは、考え方が変わっているわけです。ところが医師側は「状態が良い頃」に下された判断を「正気」によるものとして扱い、患者の延命を行いませんでした。これに医師は胸を張っているようですが……

 延命治療の否定は、概ね幅広い層から支持を得ていると言えます。現時点で健康な人の総意は、そうなのでしょう。しかしこれが個々人の見解から同調圧力へと変貌し、「健康でなくなったとき」に遍く適用されるようになる、そんな可能性の最先端をこの公立福生病院の事例は示しているように思います。


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