非国民通信

ノーモア・コイズミ

若者に人気らしいが

2008-01-09 23:13:41 | ニュース

【話題の本】『シュガー社員が会社を溶かす』田北百樹子著(産経新聞)

 「シュガー社員」とは、過保護に育てられ、自立心に乏しく自分本位に振る舞う社員のこと。その多くはシュガー=砂糖のように世間を甘く見ている20代が中心の若手社員である。

 昨年3月、産経新聞生活面に「シュガー社員」に関する記事が掲載されるや否や、ネットを中心に「ウチの会社にもいて逆ギレされる」「社員教育以前に親の問題」などと大きな反響を呼んだ。実例をタイプ別に分け、対処法をまとめた“分析本”が本書『シュガー社員が会社を溶かす』。

 著者の田北百樹子(ゆきこ)さんは、札幌市の社会保険労務士。田北さんのもとには数年前から、「嫌なことがあるとすぐに会社を辞めてしまう」「残業させれば親が怒鳴り込んでくる」といった若手社員の傍若無人ぶりに手を焼く経営者からの相談が相次ぐようになった。

 問題の解決のため田北さんはまず、「シュガー社員」が生まれた理由を、好景気を享受した親のもとで育ち、個性重視の教育を受けた弊害などと分析。過剰な自意識の持ち主の社員を「俺リスペクト型」など5つに分け、本人のプライドを傷つけない、直接言わず社員からの評判を本人に聞かせるといった対処法を提案している。

 出版元のブックマン社の担当編集者、小宮亜里さんによると、発売1カ月半で5版を重ね、2万5000部の売れ行き。「ビジネス書を敬遠していた若い世代や、OLさんたちにも関心が高く、おもしろいと読まれています」

 田北さんは「単に社内だけの問題ではありません。モラルに欠け、税金も年金も支払わない若者が増えれば、国家の根本を揺るがす事態にもなりかねません」と危機感を募らせている。

 何ともまぁ産経新聞らしいと言いますか、ツッコミどころが多すぎてどこから手を付けていいのか迷うニュースです。とりあえず今日のポイントはここでしょうか。

若い世代や、OLさんたちにも関心が高く、おもしろいと読まれています

 例によってブログ検索をしてみるわけですが、そうだそうだと頷くものが多く、比較的年齢層が若いであろうネット住人からも画一的な支持を集めていることが分かります。

 いずれにせよ、この手の記事から読み取れるのは実際にどうあるか、ではなく、どうあって欲しいと願っているか、その人の欲望であり願望です。産経新聞を読めば人々がどのような被害妄想を抱いているかを一望できるというわけですね。

 今時の若い人たちの多くが思うに、(会社本位ではなく)自分本位に振る舞う人が多い、(上の人が言うことには何でも笑顔でハイという代りに)反抗する、(会社ではなく)親の育て方が悪い、(嫌なことがあっても会社のために自分が犠牲になる代りに)会社を辞めてしまう、(タダ働きでも命じられるままに残業するはずが)抗議してくる、(者地区として会社に奉仕する代りに)経営者に手を焼かせる、そういう人が多くて、それを傍若無人だと腹立たしく思っているようです。

 なるほど、確かに我々の世代はそう、個人よりも国家や「公」の方が大切で、上に対しては従順であることを、悪いのは個々の親であって社会ではないことを、会社に属するのが唯一の生き方であることを、そして何か不当なことがあってもそれに抗議するのは分際をわきまえない非常識な行為だと、そう教え込まれてきました。そういう教育が浸透したからこそ、逆にその教育が浸透していない人が際だつようになったのかも知れません。

 犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる、この使い古された言い回しを私は良く引き合いに出します。要はよくあることよりも滅多にないことの方が耳目を集めるものとお考え下さい。頻繁にあることよりも、稀少なケースの方が逆に目立つわけです、例えばそう、犯罪報道などを考えてみましょうか、凶悪犯罪の減少と見事に反比例する形で犯罪報道が熱を帯びていく現状はどうでしょう? 凶悪犯罪が今よりもずっと多かった頃よりも、激減した現代の方が犯罪報道は熱心で、治安維持の大義名分があれば何でもアリ、凶悪犯罪は多いよりも少ない方が注目されるわけです。

 そしてこの「シュガー社員」なるものも同様で、多いことに拠ってではなく、少ないことに拠ってこそ話題性を保ちうるのではないでしょうか。この「シュガー社員」に該当するタイプが、多数派ではないにせよ当たり前に存在した時代であったなら、それは犬が人を噛んでもニュースにならないのと同様で、決して床屋政談のお題に上ることはなかったはずです。逆に「シュガー社員」に該当する人が少数派になったからこそ、それが異端者として際だつわけであり、特筆できる対象となるわけです。ついでに言えば相手が少数派ならば、そして仮想敵に近いほど、安心してバッシングにも走れるでしょうし。(ありきたりの反論としては、「そんなことはない、自分の周りにはこんなに酷い『シュガー社員』ばかりだ」と、自称実体験を持ち出す辺りでしょうか)

 しかしまぁ、当然の権利を主張することを「甘え」と呼ぶ社会において「世間を甘く見ている」という言葉は正しく権利意識を身につけているという意味のような気もしますね。逆にこの「シュガー社員」に当て嵌まらないタイプはと言えば、「世間は厳しいのだ」というお題目の下に、御上に対して常に従順に追随する自分に酔いしれているタイプでしょうか。

 かのマルコムXが子供の頃「弁護士になりたい」と言ったそうですが、その教師は「大工になりなさい」と勧めたそうです。その当時、黒人が弁護士になるというのは可能性が皆無な夢であったわけですが、そういう状況でも自分には可能性があると考え続けることを産経新聞的には「世間を甘く見ている」と言うのではないでしょうか。そして職安ならぬ教師が勧めるままに、大工になることを受け容れることを良しとするのでしょう。ネルソン・マンデラとアンクル・トムだったら前者の方が尊敬されそうなものですが、この国では後者に涙を流して共感する人の方が多そうです。

 

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8 コメント

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Unknown (Bill McCreary)
2008-01-10 00:24:39
なんか産経新聞がこの手の本を肯定的に取り上げるのって、すごい象徴的な気がします。日本からは、決してマルコムXやネルソン・マンデラのような人物は出てほしくない、そんな願望を感じます。

全くどうでもいい話ですが、当方の職場には「シュガー社員」みたいな人はいないみたいです。あんまり興味を引く本ではありませんが、一種の勉強の意味で 読んでみようかと思います。が、金を出す気にはならないので、図書館で借ります(笑)。
少数派だからこそ・・ (una)
2008-01-10 11:05:24
確かに、シュガー社員も凶悪犯も、
珍しいからこそ、目立ってしまうのでしょうね。
(沢山出てきても、ナンなんですが^^;)

犯罪が、膨大化(高齢者犯罪も騒がれていますが)
と、取締り関係者は煽りますが・・
データでも現れているように、むしろ減っているようですね。

庶民は、流された報道を鵜呑みにする傾向があるので、正確な報道が望まれるのですが・・
Unknown (非国民通信管理人)
2008-01-10 23:46:00
>Bill McCrearyさん

 産経としてはノンシュガー社員、嫌なことでも黙って受け容れてくれる人が望ましいわけですよね。嫌なことを嫌という人々が社会を変えてしまうことをなによりも恐れているのでしょうか。さて私の場合ですと、どこの職場に移っても筋金入りのノンシュガーと言いますか、会社本位を当然視して押しつけてくる、会社への不平不満は「社会人としての常識がない」と断じる人に出会っている気がします。う~ん。

>unaさん

 もしかしたら会社本位ではなく自分本位の人が急増することで、社会が変わっていくような気もするのですが、現状では会社本位が当然視されて自分本位が異端視される、この傾向は強まるでしょうか。実際の数値を伴わない印象論で過大な印象を与えるメディアと、それを鵜呑みにする視聴者も問題ですし、同時に「シュガー社員」という表現に代表されるカリカチュア化、自分とは違う価値観を醜く描き出そうとする欲望もまた深刻、ほとんどプロパガンダでしかない代物が報道を自称している訳で、なんとも頭の痛いものですね。
昔も言われていました (青の雑記帳)
2008-01-11 00:17:56
安心してください。この手の話はもう20年近く変わっていません。(古代エジプトから何千年という話もあるが。w)というか、十~二十年周期くらいで、時々出る話みたいです。

> 今時の若い人たちの多くが思うに、(会社本位ではなく)自分本位に振る舞う人が多い・・・・・

このへんのことはもう、私たちが若い頃にも言われました。当時は「新人類」と言いました。(その前には「しらけ世代」というのもありました。)それにしても労働を巡る問題がシビアになってきたこの時に「シュガー社員」なんてベタな本がどうして売れるんでしょう?そもそも市場原理から言えば、シュガー社員くらいで溶かされてしまうようなひ弱な会社なら、さっさと溶けてしまえばいいだけのことなので、何も同情することもないわけなのですが、この著者の人は企業に甘いのでしょう。

ただ、それを喜んで見ているのが、年配者ではなく、シュガー社員世代とされている若い人たちだという、その心情がどうも良くわからないのですが。細木数子さんが若者に人気というのと同じようなものなのだろうか?何にしても著者の人は良いツボを押さえたものですね。
TBありがとうございます (修一狼)
2008-01-11 02:26:24
この度はTBありがとうございます。
昔から「人を動かす」のは困難な事でございます。
昭和の時代は民が貧しく、兎に角「豊になりたい」がキーワードでしたから金銭と言うニンジンで人を動かす事が出来ました。が、価値観の多様化した現代では金銭は絶対的なモノでは無い。と言う証明だと思うのです。
人は幸せを願うモノ。
人はその幸せの実現に働く訳ですが、現代に置いて「幸せ」とは人それぞれです。
昭和の名残を引きずった経営者の手法では現代で「人を動かす」事には限界がある。と言う事を認識すれば、シュガー、ノンシュガーみたいに区別する事は無いんでしょうけどね・・・
Unknown (非国民通信管理人)
2008-01-11 23:30:51
>青の雑記帳さん

 大筋では「昔は良かった」論と変わりありませんよね。とは言え、今回の「シュガー社員」は若者にも売れているのが一つのポイントで、企業本位の御用評論家もさることながら、若年層にも企業本位の考え方が今まで以上に根付いているのかも知れません。あるいは細木数子もそうですが、他人を悪くいうのが人気の秘訣なんでしょうかねぇ。

>修一狼さん

 今は精神論が優位な時代ですから、金銭によるニンジンは通用しにくくもなるでしょうか。他人が自分の思い通りに動かないのは当たり前、そんな他人をいかに使いこなすかが腕の見せ所のはずなのですが、その人使いの拙劣さを若手社員への非難で誤魔化しているのが「シュガー社員」論になるのかも知れませんね。
初めまして。遅くなりまして申し訳ないですが (ノエルザブレイヴ)
2008-02-27 17:51:13
初めまして。

今回こちらの非国民通信さんに始めてお邪魔致しまして、バックナンバーなどを読ませて頂きましたがうなづける部分も多く楽しませて頂きました。

昔の記事にコメントをつけさせていただくのは心苦しくはありますが、コメントをさせていただきます。

私が思うのは「どうしてこの引用元である若者連はこんなにマゾヒスティックなのかな」ということです。ちょうどそれは「今の若者のマナーは悪くなっているから世直ししてやろう」というテーゼを打ち出しているようにしか見えない「斉藤さん」なるドラマが若者に受けている(しかもそれを報じたのは産経でした)のと同じような構図に私には見えます。

それでは、失礼します。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-02-27 23:15:35
>ノエルザブレイヴさん

 こちらこそ、はじめまして。よろしくお願いいたします。

 それはさておき、国の誇りだのを主張する人々や体制側の人間にこそ、マゾヒスティックな面は目立ちますよね。別の日に書いたのですが、2007年は殺人件数が戦後最低を記録したのに、この凶悪犯罪の減少を誇るどころか、さも治安が悪化しているように語りたがるのも同様でしょうか。被害妄想に酔いしれているのか、それとも「悪い奴」と戦うヒーローごっこに興じているのか……

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