非国民通信

ノーモア・コイズミ

アメリカにとっては良くない結果だが、世界にとっては別

2024-11-10 21:26:55 | 政治・国際

 先日は、ことによると日本の衆院選よりも我が国への影響が大きいかも知れないアメリカ大統領選が行われました。国内報道は総じてハリスに好意的であった一方、蓋を開けてみれば激戦州と呼ばれた選挙区を軒並み制する形でトランプが勝利、次期大統領の座を確実なものとしたわけです。アメリカ人にとっては残念な結果と言えるかも知れませんが、他の国の人間からすればこれでいいのかな、と思います。

 一言で言えば、バイデン・ハリスはネオコン、トランプは混沌でしょうか。共和党の往年の主流派からも広範な支持を得たハリスの外交姿勢が「一貫して悪い」ものであるのに対し、トランプに一貫性はありません。日本でも橋本龍太郎から小泉純一郎、民主党政権へと引き継がれた経済政策は「一貫して悪い」ものでしたが、その後の安倍晋三の経済政策は支離滅裂でした。この場合にマシなのはどちらでしょうか? 一貫して悪いものに比べれば、一貫性がなくどっちを向くのか分からない方が相対的には良い、というのが私の評価です。

 東京都知事に当選するのは、必ずしも有能な人間でない方が良いかも知れない、と私は以前に書きました。ただでさえ東京一極集中が大きな歪みを生んでいるのに、もし東京に有能な首長が誕生してしまったらどうなるでしょう。今以上に東京の繁栄が突出してしまえば、それは日本全体にとって良いことではありません。問題のある人間がトップに居座ることで東京一極集中を抑制できるなら、結果としてはポジティヴに評価されるべきです。そして世界とアメリカの関係もまた同様で、伝統的なネオコン政治家よりも混乱を招く政治家が上に立ってくれた方が、他の国にとっては好ましいと考えられます。

 トランプはアメリカ国内を信者と反対派に分断したのかも知れませんが、バイデンとハリスは世界をアメリカの敵と味方に分断してきました。そして日本は後者の路線に全面的に乗る形でアメリカの傘下にある国を同志と呼び、アメリカに臣従しない国へは絶えざる敵意を向けてきたわけです。我が国は率先してアメリカの尖兵であろうとしてきましたが、この忠義にトランプが報いることはないでしょう。むしろ梯子を外される格好になる、「アメリカの敵」との戦いは全て日本の負担で行うことが求められる、加えて米軍展開の費用負担増を求められる可能性も濃厚です。それでもなおアメリカに尽くすことが平和のためであると信じて今の路線を突き進むのかどうか、日本もまた岐路に立たされると言えます。

 一口に「アメリカ第一主義」と言っても、それは状況により意味合いが異なります。まずアメリカ国外においては一般に「中道」とも呼ばれアメリカ陣営の勝利を何よりも優先し、そのためには自国の負担を厭わない政治姿勢が一つです。反対にアメリカ「陣営」のために自国が何かを負担することを厭う、自国第一を唱え一般に「極右」と呼ばれる勢力がヨーロッパでは勢力を広めています。

 では舞台がアメリカ国内である場合はどうでしょうか? アメリカ「陣営」の勝利のために衛星国を糾合し膨大な軍事支援を続けてきたバイデン・ハリス政権は明確な前者です。一方で衛星国への支援を渋るトランプの外交路線は典型的な自国第一主義、後者と言えます。口にアメリカ第一を掲げるのはトランプの方ですが、アメリカ「陣営」を第一にしてきたのはバイデン・ハリスであり、近視眼的に自国の損得でしか判断できないトランプのアメリカ「一国」の第一主義は、長期的にはアメリカの世界への影響力を弱めることに繋がるでしょう。ただ、それは世界にとっては良いことです。

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