非国民通信

ノーモア・コイズミ

made in Japan神話は過去の話

2018-02-11 22:44:37 | 社会

 半年ばかり前、会社でHuaweiのWi-Fiルータが導入されました。その際に判明したことなのですが、私の勤務先の部長と課長は「Huawei」が読めません。まぁ別に海外メーカーの読み方が分からないぐらい、大したことではないのかも知れません。ただ、私の勤務先は通信業界です。グループ会社の中にはMVNO事業を運営しているところもあれば、SIMフリーの端末を販売しているところもあります。そしてHuaweiは通信機器では世界2位のシェア、スマートフォン販売でも世界第3位、日本国内のSIMフリー端末では売り上げ首位を独占し続けているわけです。まさしく業界の巨人なのですが、それを通信業に分類される会社の部長と課長が知らないってのは、どういうことなのでしょうね。

 なお上述のファーウェイ社は日本で新卒採用するにあたり、40万円を超える初任給を提示して話題を攫った会社でもあります。「初任給(20万円ちょっと)を引き上げたのに人材が集まらない!」などと寝ぼけたことを繰り返している日本企業では、もはや逆立ちしたって敵わない会社です。しかし、通信業界の部長と課長は、その読み方すら知りませんでした。確かに、社内ルールや社内用語、経営トップの趣味嗜好を把握することの方が、日本で働く上で重要なのは確かだと思います。でももう少し、世界の動きに目を向けてもいいんじゃないのかな、とも感じました。まぁ、日本人の中には90年代以前で時計の針が止まっている人も少なくない、今でも技術面では日本企業が優れていると信じている、中国や韓国ほか諸外国の企業を侮っている人も多いのかも知れません。

 

「遅い、安全でない、検査不合格」ジャマイカ側の言い分(朝日新聞)

 東京都大田区の町工場が開発した「下町ボブスレー」が平昌(ピョンチャン)五輪直前に、ジャマイカチームから「使用拒否」を通告された。不採用の事情について、ジャマイカ・ボブスレー連盟のクリスチャン・ストークス会長が朝日新聞の取材に答えた。

(中略)

 行き違いの始まりは昨年12月のワールドカップだという。輸送トラブルで下町のそりが届かず、ジャマイカチームは急きょラトビア製のそりに乗った。「すると驚異的に成績が伸びた。五輪出場権獲得へ大事な時期だった」とストークス会長は話す。このそりに乗り続け、出場権を獲得した。

 一方、下町のそりについて、ストークス会長は「遅い」「安全でない」「機体検査に不合格」の3点を強調。「1月に行われた2度の機体検査に不合格だった。五輪でも失格の恐れがあった」と語る。

 下町側は不合格を認めたうえで、「すぐに修正できる細かい違反だけ。一時は合格も出た。五輪には間に合う」と反論した。だが、ジャマイカ連盟は実績のある海外メーカーを選んだ。

 

 ……で、こちらの報道です。そりの性能に関しては単純に測定できるものではないにせよ、日本製は「2度の機体検査に不合格」であり、ラトビア製のそりへ変更したことが出場権を獲得する好成績に繋がったという揺るがぬ実績があるわけです。元より「下町ボブスレー」は日本代表チームからも採用を断られてきた代物ですから、これを擁護するのはかなり難しいように思います。契約面でトラブルに発展するリスクを背負ってもなお使用は避けたい、それが「下町ボブスレー」の評価なのですね。

 日本の町工場には世界レベルの技術がある、という伝説があります。そうした伝説を信じて動き出したプロジェクトの一つがこの「下町ボブスレー」だと言えます。結果はご覧の通り、競技者からは「付き合ってられない」と通告されるレベルです。確かに90年代以前なら、日本は世界に冠たる技術大国だったのかも知れません。しかし日本が成熟という名で成長を拒否してきた四半世紀の間に、よその国では子供が大人になるくらいの進歩がありました。中国も韓国も技術力では日本の先を行くようになった、その現実は直視しなければいけないでしょう。

 日本企業が中韓メーカーの後塵を拝するようになっても、「日本製の部品」は一定のシェアを残しているところはあります。「○○には日本の部品が使われているのだ」と、誇りを抱く人も一定の割合でいるようです。しかし本質的な問題として、部品を供給する日本企業と、供給を受けて製品を販売する外国企業のどちらが利益を上げているかは問われるべきでしょう。国内で言われるほど「日本製の部品」に唯一無二の価値があるのなら当然、高値が付くはず、相応の経済的利益もあってしかるべきですから。

 私自身、前職では「日本では一社しか製造していない」部材を取り扱うことがありました。他に代替となるメーカーは存在しなかったのですが――その取引先が儲かっているかと言えば、全くそんなことはありませんでした。結局ブルーオーシャンには理由があると言いますか、魚のいない不毛な海に漁に出る人はいないわけです。競合がいなければ同業他社との争いは発生しませんが、だからといって販売相手に対して強気に出られるかと言えば、決してそんなことはないようです。寡占市場でもニッチすぎる商材には、それ相応の値段しか付かない、と。

 そして「日本製の部品」を諸外国の企業に供給する下町の町工場ですが、日本国内の技術力幻想を満たしこそすれ、供給先企業に対して強気に出られるだけの能力などないのが実態なのではないでしょうか。ともすると市場を独占しているように見えるのは、「儲からないから」競合他社が発生しにくいだけ、大手企業からすれば「儲からないから」ヨソに外注したいだけ、その結果とも言えます。日本製部品の採用例が多いからと言って、それが優れているとは限らない、実態は安上がりな下請けとして利用されているだけ……なんて可能性もあるはずです。

 日本の、とりわけ小さな町工場の「技術力が高い」という幻想にしがみついていれば、精神的な満足感は得られるのかも知れません。しかし、経済的な利益は得られたのでしょうか。経済的な利益を酸っぱいブドウのように考えて自分を慰めているのなら、その先はありません。「下町ボブスレー」も、日本人に夢を見せる読者参加型の物語としては一定の成功はあったのでしょう。しかし、結果はご覧の有様です。夢から覚めるべき時間は、既に来ていると思います。

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