非国民通信

ノーモア・コイズミ

東京電力とちょっとだけ仕事で関わった時の話

2011-11-29 23:16:23 | 社会

 以前にも何度か触れたことですが私の勤務先ではKDDIとの取引があり、KDDI発注の工事案件を請け負うこともあります。そしてKDDIは割と東京電力との関係も深いため、KDDIの設備が東京電力の局舎内に置かれていることもあるわけです。なので東京電力館内での工事も希に発生するのですが、これがまた大変なのです。世間的にはどう思われているのか知りませんけれど、東京電力が色々とうるさいので。

 多かれ少なかれ、工事発注元の会社は色々と口を出してくるものです。元請けである我々だって、下請け会社の現場作業員には色々と口を出しますから、何事もそういうものなのでしょう。現場作業員は口やかましい元請け会社の営業を疎ましく思い、元請け会社の営業はアレコレ注文をつけてくる発注元の担当者を陰で毒づくみたいなことは、どこでも見られる光景だと思います。とはいえ、別に嫌がらせで現場に口出ししているわけではありません。何よりもまず、トラブルを起こさず工事を終えてくれとの意図があってのことです。

 現場作業で何か事故が起これば、世間的には工事発注元が責任を問われがちで、それは当然ながら発注元は大いに嫌がります。同様に事故が起きれば、元請け会社は次回から仕事を発注してもらえなくなる恐れがあるわけです。過失であろうともトラブルを起こして発注元に損害を与えるような会社に仕事を頼みたがる企業はいません。そんなわけで、仕事を失わないために元請け会社は現場作業員の一挙手一投足に注文をつけ始めることになります。場慣れした作業員からすれば、営業や管理の人間に現場での行動を細かく指図されることを好まない様子ですが、そうはいっても発注元も元請け会社も必死なのです。

 しかるに、いくら細かく作業規定を設けて杓子定規にルールを守らせたところで、いつかは事故が発生してしまいます。どう頑張ってもなかなか無事故で乗り切るのは難しく、事故0を目指して結構な頻度で会合が開かれたりもしていますが、現場で守るべき制約事項が際限なく増えていくばかりで事故件数はというと「微減」がいいところで空回りしている感も否めません。工事発注元や元請け会社の営業が考え出した「事故防止のためのルール」は概ね作業員から面倒くさいばかりの茶番としか思われていないフシがあり(現に私から見ても冗談みたいな代物もあります)、ちょっと目を離すと無視されたりもしがちです。まぁ、事故を減らすための努力はしなければならないものであるにせよ、そう都合のいい方法は見つかっていないのでしょう。

 ……で、圧倒的にうるさいのが東京電力なのです。KDDIだってアレコレと指図してくるわけですが、東京電力は別次元です。たかが半日の工事(それも東京電力の設備ではなく、東京電力の館内にあるKDDIの設備の工事)であっても、東京電力による監視は大変に厳しく、何度となく事前協議や計画書の提出を要求され、もれなく東京電力もしくは関電工による立ち会いが付いてきます。工事が始まるまでに繰り返された事前協議などに費やされた営業の人件費とかを考えたら、実は赤字なんじゃないかという気がしてなりません。元々セキュリティ関係には異常に厳しく立ち入り制限してきた会社ではありますが、例の原発事故後はその辺の管理がいっそうエスカレートしてきた印象です。

 何せ猛烈な逆風の吹く時代ですから、KDDI所有の設備といえど東京電力の施設内部で事故でも起こされたら、これを足がかりに東京電力への非難を強めようと手ぐすね引いて待ち構えている人も少なくないのでしょう。東京電力としては決して隙を見せられない状況にあるわけです(そうは言っても事故0が不可能であるように、東京電力も落ち度0ではいられないようですが)。ゆえに、自社の館内で作業をする工事会社の人間に対しても、傍目には馬鹿馬鹿しく思えてくるほどの細かい口出しをしてくるのかも知れません。東京電力側としても絶対にこれ以上の事故を起こして欲しくはない、その結果として現場作業員はおろか元請け会社の営業その他が辟易するような状況ができあがるのです。

 全ての会社や現場作業員がそうであるかは私の断言できるところではありませんが、往々にして元請けの営業なり、そして工事発注元の人間なりが現場に居座ることは、作業員にとってはあまり歓迎されていないように思います。もちろん発注元や元請け会社にしてみれば、手順書通りに施工されているかどうか目を光らせる必要があるにせよ、作業員からすれば別に手助けしてくれるわけでもないのにアレコレと文句ばかりつけてくる人でしかなく、率直に言えば邪魔な存在なのかも知れません。だからといって現場作業員に丸投げというわけにも行かないのでしょうけれど……

 そこで頭に浮かぶのは、福島第一原発でのことです。世間では、やれ東京電力社員を現場で作業させろと喚く人が目立ちました。嬉々として東京電力を非難する人たちの言葉とは裏腹に、実際のところ東京電力側では少なからぬ社員を現場に派遣しており被曝量が基準値を超える人も出たわけですが、これは適切だったのでしょうか。もちろん、施設所有者が現場の状況を把握するのは必要ですし、猫の手も借りたい状態であったろうことは想像に難くありません。しかし、工事発注元の人間とはしばしば、現場作業員からすれば口うるさいだけの役立たずです。とりわけ非常時であるほど現場のことは作業員に一任した方が適切、そういう局面もあったのではないでしょうか。

 現場の作業員(下請け会社の人間も多い)に任せてしまえば、当然のように囂々たる非難は輪をかけて強まったであろうと容易に想像が付くところではあります。だからといって、その世間の非難を低減するために、必要以上に自社(東京電力)の社員を、とりわけ現場作業員としての訓練を受けていない人間を事故現場に送り込んではいなかったか(私の勤務先の場合ですと、東京電力の研修を受講した人間でないと施設に立ち入りさせてくれなかったりするのですが)、その辺は批判的に検証されるべきだと思います。それは世論に応える行為ではあったかも知れませんが、決して正しいことではありませんから。

 

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8 コメント

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Unknown (amanojaku20)
2011-11-30 19:02:43
私の父親は建設会社勤めで、官公庁の仕事が結構多いらしいんですが、管理人さんと同じようなこと言ってましたね。○○市の役人は物凄く口を出してくると。

公務員も東電社員同様、何かミスがあって事故が起きたら物凄いバッシングを受けますから

>>決して隙を見せられない状況

にあるのかもしれませんね。

官公庁からの仕事が多い会社に勤めてる人は、
公務員に対して敵意を持っている人達が好むような首長候補には票を入れない方が賢明かもしれませんね。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-11-30 23:26:00
>amanojaku20さん

 「官」の世界は昔から、不当な非難にもさらされてきましたからね。内情を経験した人に言わせれば「自分たちが不正を働いていない証拠を作る仕事」が異様に多いそうです。本当はもっと融通を利かせることができる、効率的にも動けるけれど、それができない状況が作られている。でもその状況を何が作り出しているかを市民は考えることがなく、ただただ役所を批判する、それが昨今の選挙結果にもつながっているのでしょう。

参考1、お役所でバイトして分かったこと
http://anond.hatelabo.jp/20090916185052

参考2、だから役所は難しい
http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/6250f9227b740d9213b628e37d4cab53
いろいろな立場上…。 (アゼン)
2011-12-01 12:53:49
実は主人が現在も某鉄鋼業界でお給料をいただき、私はかつて某便器製造(今は「水まわり品多種も製造)業界に居ました。
夫婦とも事務屋ですが、現場のご苦労はいかばかりか、と、容易に想像が出来ます。
特に主人の会社は、現場で事故が起こると、とてつもなく大変なことになるので。(主人は事務屋とはいえ法律関係職種なので、様々なことを知っています)
だから、「事故ゼロ」のために、現場では昔から、それはもう様々な創意工夫がありとあらゆる方面・方向であるようです。
確かに「は?何の意味があるのでしょうか?」のようなこともあり(笑)、記事を拝見して、「どこも同じだな」と思いました。

さて、東電さん。
事故以来、陣頭指揮をお取りになってきた所長さんが病気加療の為お止めになりましたね。
会見の際に「これは死ぬ」と思ったことが数回あった、と正直におっしゃっていましたよね。
あれを聞いて、「原発反対」と叫び、タラタラと行進して自己満足している連中こそ、周辺の除洗や現場のボランティアにさっさと行けよ…と、毎日そういう系統が出店しているところを歩かねばならないので思っていましたが、ますますそう思いました。

そして、今、現場にいらっしゃる方々がほとんど東電さん職員だということ。
確かに、それまで現場を任されていらした下請け等々の方々にしてみれば、ウザい存在でしょうね。
それこそ「机上の空論」しかして来なかった人々が「こんなはずじゃなかった」的展開を目の当たりにして、右往左往してるわけですから。
しかし、次のお仕事のことも大切ですが、それも「命があって」こそのお仕事なわけで(笑)、とりあえずは、厄介・危険なことは東電さんがして下さるのですから、今度は下請け等々の方々が東電さん職員を上手に使って(笑)、ご自身の身を守るのも、一つの考え方では?と、思いましたが、いかがでしょうか。(笑)。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-12-01 23:22:41
>アゼンさん

 ただ問題は、発注元(東京電力)の人間がどこまで現場で戦力になれるか、なんですよね。ただ責任をとるためにいるのか、本当に必要だからいるのか、そこがちょっと疑問を感じるところです。まぁ上手く協力してやってくれればいいのですが、世間の囂々たる非難に追われて作業に余計なものが付け加えられてはいまいかと、その辺を心配するばかりです。
ボーナスは払ってやれ。 (eastseavillage)
2011-12-02 12:32:29
タイトルのとおりです。ボーナスなんて表現がややこしいんでしょうね。またまた騒ぎになってますが、所詮生活給なのだという現実を反東電、反原発派の皆さんは受け止めた方がよろしいかと思います…脱線しました。

仰るとおりで、各電力さんの中でズバ抜けて東電は細かいし、ウルサイ印象があります。官僚の中の官僚。東電子分の他のBWR電力も総じてやかましいイメージです。それは福島の前からです。

しかし、結局それも平時の時にしか有効ではなく(どこまで有効だったのは微妙ですが…)、今回のような想像を絶する事故には無意味なのだとつくづく思いました。
日頃は相手にもされていないのですが、福島絡みの緊急発注を弊社も頂きました。が、律儀にあれこれ書類の体裁に注文がついたそうで(こちらも慣れていないので...)。
「今そんなこと言ってる場合じゃないだろが…」とも思いましたが、良くも悪くもそういう会社なんでしょうね。
そんな一方でサイト内に溜まった水溜りで作業員が被爆してみたりと、ことごとく想定外に脆い訳で。。

いろいろ考えさせられます。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-12-03 01:21:23
>eastseavillageさん

 この辺もまた大きく誇張されて語られがちですが、ボーナスと言っても結局は給与の一環ですからね。しかし、労働者の権利を公然と否定する人が左派の中にも広まっているのが何とも言えません。

 そして、あたかも東京電力の管理が杜撰であるかのように報道されがちな昨今でもありますけれど、それは状況的に急を要するからであって、むしろ東京電力の管理は他社よりもずっと厳正で、むしろ厳正であるが故に付き合いにくい相手ですらあったのですが、色々と理解されていないようです。
Unknown (元現場作業員)
2011-12-06 23:16:49
私は通信系の工事を3次もくしはその下で請けていた作業員でしたが東電や国に限らずどこもひどいもんだとしかいえません。

作業する前と後にやらなければいけないことがありすぎます。そしてそれはただ書類にチェックを機械のようにいれるだけだったり、昨日書いた(原則pcは現場に持込自体不可)ことをまた書くだけのようなどう考えても意味の無い、いや効率化できることだらけです。そしてそれに瑕疵があろうもんなら翌日は仕事がないか、さらに書くことが増えていく、、というような、とにかく禁止事項におびえながらの作業です。それなりに対価をもらえればがんばれるのですが実際に作業する人たちに届くお金ほぼとんとんで、食事をとる時間や金、休憩すら惜しまずには仕事が完了できないほどです。

前線で作業する人間が一番収入が低く、専門性が要求され、危険で、そして意見がいえない→それなりの人間しか集まらない→制約を増やさざるを得ない。というところに根本の問題があるような気がします。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-12-07 23:38:03
>元現場作業員さん

 私の職場でお願いしている現場作業員の方も、書類の記入は面倒がって、作業の都度ではなく作業の前後にまとめて全項目にチェックするだけのことが多いですね。一応は事故防止のためなのでしょうけれど、チェック項目ばかりが際限なく増えていくものですし。

 もうちょっと現場作業員に制限をかけるだけではなく、他にとるべき策はあるのではないかと思いますが、圧倒的支持で当選を果たした大阪の新市長など露骨に現業蔑視の政策をとる構えです。こういう人が人気を博する限り、現場作業員の待遇改善は難しそうです。

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