企業誘致で快進撃を続ける宮城県が、懐具合の心配をし始めた。誘致の呼び水に本年度から大幅拡充した企業立地奨励金の支払枠が、企業の進出ラッシュで早くもいっぱいになりつつある。「もし足りなくなれば、涙を流して喜ばないといけない」と、願望を込めて話していた村井嘉浩知事。まさかの杞憂(きゆう)が現実味を帯び、財政当局も奨励金の捻出(ねんしゅつ)策をあれこれ描き始めた。
(中略)
奨励金の原資を確保するため県は、独自課税「みやぎ発展税」を創設した。5年間で見込まれる税収150億円のうち100億円を奨励金に割り当てる計画だった。
村井知事は「奨励金は数年に分けて支払う仕組み。発展税を使いながらずっと支払っていけると思う」と説明する。だが、分割払いにしても財源が増えるわけではない。将来的に資金ショートの不安はぬぐいきれない。「一度決めた以上、必ず支払う」と強気の県産業立地推進課。「今は支払い余力を考えている場合じゃない。追い風を逃さず、呼べるだけ企業を呼ぶ」と攻めの姿勢を崩さない。財政当局の幹部職員は「奨励金枠を100億円と固定せず、弾力的に運用する。県財政が好転すれば、一般財源を奨励金の原資に繰り入れる可能性もある」と楽観的な青写真を描く。
相次ぐ企業立地で地域経済が上向けば、発展税収も増える。発展税収が当初見込みを上回れば、その分を奨励金の原資に回すこともできる。
しかし、現実の県財政は、12年度まで5年間の累積財源不足額が最大で1344億円に達する見通しだ。一般財源から繰り入れる余裕は無いと考えるのが常識。ある県幹部は「発展税の課税期間延長をお願いすることもあり得る」と非常手段に言及する。
引用が長くなりましたが、要するに県民負担を増やしてでも企業への納税を続ける自治体の話です。まぁ珍しい話ではありません。ともすると企業が自治体に納税するのが当たり前のように見えますが、その実は国庫や自治体から企業に対して支払われる税金(呼称は様々ですが)の存在もまた、馬鹿に出来ないのです。例えば消費税など、およそ2兆円が国から企業に納められており、トヨタやキャノンなど消費税の納税額を消費税の「受給額」が大幅に上回る企業もざらにあります。国民の中には社会保障などを受給する人もいるわけですが、同様に企業もまた「社会保障」を受給するわけです。
最近では後期高齢者医療制度など、諸々の小細工によって次々と社会保障が切り下げられている昨今ですが、宮城県の担当者は「一度決めた以上、必ず支払う」「今は支払い余力を考えている場合じゃない」と非常に強気です。いやはや、実に頼もしい。中央政府の厚労部門にも見習って欲しいところです。しかし、この宮城県の社会保障を受給できるのは富める企業であって(企業であっても貧乏なところは対象外)、県民ではありません。
もちろん宮城県でも社会保障財源の不足が予測されているわけです。国民を対象とした福祉であれば福祉の切り下げで対応するのが常道と化していますが、宮城県は違いました。納税者の負担を増やすことで財源を確保してでも、福祉の維持を確約したのです。企 業 へ の 福 祉 を。そしてこの企業への福祉を維持するためには将来的な破綻も辞さない、と。政府与党は国民の暮らしよりも財政を大切にしますが、宮城県にしてみれば財政よりも大切なものがあるのでしょう。
曰く「相次ぐ企業立地で地域経済が上向けば、発展税収も増える」そうです。理論上は、そうも考えられるのでしょう。この点は政府与党の主張と同じです。しかし、いくら企業が利益を上げて国全体としては経済成長が続いたとしても、それと国民の暮らし向きには関係がないどころか反比例しているのが、この10年間の現実です。宮城県だけは例外的に、企業が儲かることで県民の暮らし向きが良くなると考えるとしたら、それは楽観的に過ぎます。
まぁそれでも尚、県は企業を選んだわけです。増税してまで企業に社会保障をばらまいたのです。投資すれば見返りが得られると思ったのでしょうか? 逆に言えば、投資の対象から外された層――すなわち県民は、投資しても見返りの得られないジャンク債のようなものでしょうか? いや、ジャンク債であればまぁ、投機筋には魅力がありますが……
地場産業が地域経済を支えられないのであれば、外から企業を誘致してくるほかありませんが、この辺の企業誘致が過当競争に陥った結果、見込まれる納税額や生み出されるはずの雇用に見合わない巨額の奨励金に繋がることもあります。そして誘致の後も同様、流出を避けるために様々な点での優遇措置が求められます。企業にとっては至れり尽くせりの社会保障を提供してやった結果、とるべきものが取れない、投資を回収できない、逆に搾り取られるだけ搾り取られ、肝心の企業は他所の県に移転(他所の県が支払う奨励金で!)、そんな未来の方が予測しやすいのですが、いかがなものでしょうね?








こんな単純なことが見えない人がいます。私もそのことを常に考えていきたいと思います。
少し話は違いますが公共施設を民営化するというのもよく似ていると思います。住民の資産である施設を格安で企業へ売却する。その施設が黒字にならないので企業は撤退するけれど、そんな施設は個人で買い取れるわけがないので最終的には税金で再び買い取るしか方法がなく、住民の負担だけが残る・・・という図式。
自治体幹部にしても、そういうことは全て分かってやっているのでしょう。例えそれを推進した自治体のトップが辞任しても、その後継者が選挙で選ばれるのが世の常なので。結局は住民がもっと賢くなるしかないというわけです。
いわゆる上げ潮理論のごときものが、いまだに幅を利かせていますからね。経済を見るだけでもその矛盾は明らかですが、それでも国家あっての国民、会社あっての従業員、そういう考えが根強いことと言ったら……
>siegmundさん
今は(大企業に限っては)好景気ですから良いようなものの、いずれ次の波が来て大企業の懐事情も悪化するとなると、最悪の事態は起こりえますよね。良いところだけを抽出してその効果をアピールするのも結構ですが、招致に大金を投じる側が決して口に出さないリスクを考慮しないようでは、その時々の人気取りと変わりません。住民がその辺を判断できればそれが最良ですが、物事の一面にしか目を向けないようですと……